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AIによるサポートで住宅の物件探しはどう変わるのか?

2022.12.26

賃貸物件を賃貸物件サイトで探すとき、自分が求める物件を絞り込むのに時間を要した挙句、結局、良い物件が見つからなかったという経験はないだろうか。不動産会社に出向いて相談することも可能だが、時間も取られる上に、担当者によって汲み取ってくれる情報も異なる。

そんな課題を受け、AIを活用した物件提案やサポートがぞくぞく登場している。また、昨今は、購入したい物件のバーチャル内覧も進んでいるが、そうした内覧の場でもAIがサポートしてくれるようになっている。今回は、住まい探し領域でAIを活用して利便性を上げているサービスを3つ紹介する。果たして、従来からユーザー体験はどう変わったのか見ていこう。

1.AIとの対話で最適な賃貸物件がわかる!LIFULL HOME’S「AIホームズくんBETA」

https://www.homes.co.jp/ai-homeskun/

不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」では、2022年2月からAIとの対話を通して、自分の好みを理解、学習し、より条件に合う賃貸物件を提案してくれる「AIホームズくん」を提供している。

AIホームズくんからの住まいに関する質問に答えると、AIが「重要項目やその重要度合い」といった好みを理解、学習し、住まい探しでこだわる項目など条件整理をしながら専用の「住まいのカルテ」を作成する。

そして、AIが回答からユーザーの住まいへの好みやこだわりをもとに、LIFULL HOME’Sに掲載されている居住用賃貸物件の中から理想の条件に近い物件を「ぴったり度」順に提案してくれる仕組みだ。

本サービスの開発に携わったAI戦略室 データサイエンスグループ AIコンサルタント横山貴央氏に、AI活用で実現可能になったこと、ユーザー体験の変化、利用したユーザーの声を聞いた。

●AI活用で実現可能になったこと

「当社はAIのほかVR(バーチャルリアリティ)の活用にも力を入れていますが、それらを活用することで、従来はできなかった『住まい探しのアドバイス』や『住まい探しをしている人にとって思いがけない物件の紹介』をいつどこでも、24時間365日行うことが可能になります。

住まい探しの分野では一般的な消費財と異なり、全く同じ立地条件が存在しないため、物件は唯一無二のものです。それに加えて、一生の内で何十回と住まい探しを行う消費者はほとんどいません。そのため、住まい探しのノウハウが一般の消費者一人ひとりには蓄積しにくいことから、『経験豊富な誰かに住まい探しについて相談したい』というニーズはなくならないと考えられます。

もちろん、不動産会社に行けば住まい探しの相談はできますが、不動産会社としてスタッフを教育するにも一定のコストがかかりますし、24時間365日相談を受け付けることはできません。自然と、費用対効果の高いマーケットを除き、相談サービスはビジネスとして成立しづらい状況がありました」

●ユーザー体験の変化

「AIやVRによってもたらされるユーザー体験の大きな変化は、『地理的・時間的な制約が限りなくゼロになる』『従来は人手がかけにくかった部分で新たなサービスが生まれる』という2点によるものが大きいでしょう。

例えば希望する条件が定まっていなかったり、思いがけない物件提案を求めている消費者は、24時間いつでも物件紹介・物件提案をしてくれるAIがあることで、不動産会社に足を運ぶ前に求める物件像を絞り込みやすくなります。

足を運んでから『やっぱり思った物件が見つからなかった』という経験をしたことがある方も少なくないと思いますが、事前にAI相談をしておくことで、より自分にぴったりの物件に出会える確率を高めることができます。また遠方への引越しなどの際は気軽に内見に行くことも難しいなか、『いつでもどこでも内見に近い体験ができる』というメリットは大きいと思われます」

●ユーザーの声

「自分で考えずAIとのやりとりによって自分の条件を整理できるのが楽」

「自分のイメージになかったエリアの提案があり選択肢が広がる」

筆者も実際にやってみたが、従来の物件探しと比べて「ぴったり度」が数字で示され、その数字が高い順に並べてくれるので、探しやすい印象を受けた。またチャットで手軽に対話を通して絞り込めるのも情報整理の点で便利に感じた。

2.AI分析で潜在ニーズを反映した物件紹介!ウィル「AIウィルくん」

https://www.wills.co.jp/ai/

不動産・リフォーム事業等を手がける株式会社ウィルは、2021年4月上旬より、新サービス「AIウィルくんの『住まい提案サービス』」を開始している。京都大学との共同研究によって誕生した独自のAIが、ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズを反映したおすすめ物件を提案する。

AIは、これまで同社で住まいを購入した顧客の希望条件や、求めるライフスタイルに関するデータ約37万件の物件データ、約12,000組の成約データ、約10,000件の地理データ等を事前学習しており、これらをもとに提案してくれる。従来の定量データ以外にも定性的な情報であるライフスタイルや好みなども学習・分析の対象とするのが特徴だ。

ホームページで無料会員登録をした後に、約70問のアンケートに答える。するとAIウィルくんが分析し、自分でも気付かなかった潜在ニーズをとらえ、おすすめ物件をメールで送ってくれる。自分とのマッチング率が提示されるのも特長だ。

「AIウィルくん」ホームページより

開発に携わったデジタルマーケティンググループ 部長 ウェブディレクター室薫氏は、AI活用で実現可能になったこと、ユーザー体験の変化、利用したユーザーの声について次のように回答する。

●AI活用で実現可能になったこと

「営業マンからの積極的な物件提案を嫌う方にも、物件提案が可能になりました。お客様の住まい探しの期間は、個々の背景やこだわりなどにより、短くて1ヶ月、長ければ5年以上と様々です。その中で、住まい探しの期間が長い人は、初期の情報収集期間や停滞期間に、営業マンからの直接のアプローチを敬遠する人が多いです(停滞期間とは、例えば理想の物件がなくて嫌になって家探しを中断したり、条件整理が進まなかったり、忙しくて家探しに時間が割けなかったりする期間のこと)。しかしAIの導入により、その期間においてもあまり敬遠されることなく、物件提案を行うことができるようになりました」

●ユーザー体験の変化

「営業マンの経験値に依らず、お客様はより幅広い選択肢の中から住まいを選べるようになりました。弊社は、創業時から住まいの購入相談(コンサルタント)にこだわりを持って営業活動を行ってきました。お客様の背景、ライフスタイルをしっかりお伺いした上で物件提案することで、当初はA市で物件をお探しだったお客様が、B市やC市などまったく違う町の物件で成約することも多々あります。

しかし、こうした従来の営業は、営業担当者の経験値や提案スキルに依(よ)るところが大きく、誰が担当するかによって住まい探しの内容が変わることがあります。しかし、AIが数多くの営業担当者の提案スキルを学習することで、弊社全体の提案スキルが向上し、ユーザーはより幅広い選択肢の中から希望に沿った物件を選ぶことができるようになりました。実際に住んでから、自分に合った町や物件だったかどうかは、今後、お客様アンケートを実施していく中で確かめていきたいと考えています」

●ユーザーの声

「まったく検討していなかった街で、自分のライフスタイルに合う家が見つかった」

「物件のスペックだけでなく、どんな町が自分に合っているのかという視点も持って、住まい探しをするようになった」

「駅前のマンションを購入するつもりでしたが、最終的に郊外の戸建を購入しました。想像以上に豊かな日々を送ることができており、満足しています」

AI特有の賢さは、時に人間が気付けない視点を与えてくれる。AIウィルくんはその可能性を感じさせてくれるサービスと言える。さらなるAIの精度の向上と進化が期待される。

3.AIがVR内覧中に音声案内 スウェーデンハウス「VR モデルハウスウォークスルー」の「音声案内機能」

https://vr.swedenhouse.co.jp/

スウェーデンの現地工場で生産した住宅を販売するスウェーデンハウスが、2021年4月から3Dキャラクターによる接客機能を搭載した室内360度バーチャル内覧サービス「VRモデルハウスウォークスルー」をスタート。野原ホールディングス株式会社と共同開発したものだ。

住宅購入を検討している人が、全国のモデルハウスをWebサイト上にてバーチャルで内見できるほか、オリジナルの3Dキャラクターが内見をサポートしてくれる。

2022年5月には「音声案内機能」が追加搭載された。これにはAIが活用されているという。モデルハウスに所属するベテランスタッフが、設計のポイントや建物、性能などについて、現地で提供しているリアルなトークを、AIによる音声で案内するもの。

Web上で漠然と部屋を内覧するだけではなく、ベテランのスタッフに説明を受けている状態に近い感覚で、好みの3Dキャラクターと対話をしながら、モデルハウスを内見できるのが特徴だ。

音声案内機能では、部屋の広さ(畳数)や天井高さのほか、フローリングやキッチンなどの仕様・設備など、基本的な情報を提供する。そのほか、同社オリジナルの「木製サッシ3層ガラス窓」にカーソルを合わせると、開閉方法や性能に関する情報を動画で提供する機能もある。

さらに、海を望むリビングでは、「ここから○○湾が眺められます」といったその土地ならではの具体的な情報を提供したり、「キッチンは海をイメージしたブルーを採用しました」といったデザインコンセプトなど、そのモデルハウス特有の情報も案内する。

随時導入を進めている「コンシェルジュ機能」では、内見中に生じた疑問や質問をフォーム入力することで、数分以内に実在のコンシェルジュが電話で対応する。実際にモデルハウスに訪れたかのような手厚いサービスを実現している。

株式会社スウェーデンハウス 営業推進部 部長 大川保彦氏に、AI活用で実現可能になったこと、ユーザー体験の変化、利用したユーザーの声を聞いた。

●AI活用で実現可能になったこと

「当社のVRモデルハウス上でAIが提供する情報は、ベテランスタッフが通常お客様に提供している情報が元になっています。このため、コロナ禍にありながら、お客様はもちろんスタッフの安全も守りつつ、質の高い情報を提供できるようになりました。商談に入る前に、興味や関心のある点をご家族、皆様でじっくり絞り込んでいただけるため、結果として実際の商談に至る段階でスムーズに進められるという点においては、当社にとっても大きなメリットと考えています」

●ユーザー体験の変化

「VRモデルハウス最大の特徴は、時間や場所を気にせず、家づくりという大切な段階での体験をご家族で深めていただくことができるという点で、お客様にとって大きなメリットだと考えています。VRモデルハウスの取り組みを始める前と比較すると、お客様が居住エリアに縛られずに気になるモデルハウスを見学され、お住まいをご検討いただくようになったと感じます。

VRやAIによる事前体験によって、本来ハードルが高いといわれるモデルハウス見学への興味が高まり、遠隔地のモデルハウスにご来場いただくなど、リアルな体験を促すきっかけにもなっているようです」

●ユーザーの声

「紙ベースで見るより断然イメージが直接わかるので良いと思う」(女性30代)

「時間を気にせず、自分の好きなタイミングで好きなように見ることができるので、この仕組みで大まかにチェックしてから、気になるようなら実際に赴くという形をとれるので、非常に便利だと思った」(男性30代)

「非対面で物件を内覧できるのはすごいと思うが、やはり細かい箇所(収納の詳細や細かい設備等)を見られないのが歯がゆい」(男性30代)

「映像と説明、質問に答えてくれることで住宅のイメージがわきやすい」(男性40代)

ただのバーチャルなモデルハウス見学は退屈なものだが、リアルさながら質問できたり、AIで案内してくれたりするのはありがたいものだ。

これらの3つのサービスでは、AIが人間の考えや意識を超えた提案をしてくれることで、ただ「スタッフの代わり」になるだけでなく、新たな住まい探しのアプローチ方法に可能性を与えてくれるようだ。

取材・文/石原亜香利

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