■連載/綿谷さちこのクレカの強化書
Zホールディングス傘下のLINE、ヤフー、PayPayが2022年12月13日、マイレージ型の販促プラットフォーム『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ』を2023年春より開始することを発表した。
(左から)LINE 代表取締役社長・Zホールディングス 代表取締役 Co-CEO Marketing & Sales CPO 出澤 剛氏、ヤフー 代表取締役社長 社長執行役員 CEO 小澤隆生氏、PayPay 代表取締役 社長執行役員 CEO 中山一郎氏。
オフラインとオンラインを横断する販促が可能に
『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ』とは、オフラインの『PayPay』加盟店とオンラインの『Yahoo!ショッピング』の両方を対象とし、『LINE』でのコミュニケーションを含めた3社での販促DXの総称。航空会社のマイルプログラムのように、ある商品の購入金額を積み立てていき、一定額を超えるとPayPayポイントが付与されるというサービスだ。
仮にあるメーカーA社のビールが対象商品の場合、『PayPay』加盟店での購入分と、『Yahoo!ショッピング』での購入分が合算され、その合計がA社の設定金額を超えると、A社が設定した割合のPayPayポイントがもらえるといった仕組み。その際、「あと1000円の購入でポイントがもらえます」といったお知らせやオファーが『LINE』などで届く。
『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ』のサービス概要。
ただ、このような特定商品に特化したサービスは現在も行なわれている。『PayPay』では、花王商品を購入すると最大30%戻ってくるキャンペーン(~2022年12月31日)の第6弾を実施中。『Yahoo!ショッピング』でも、コカ・コーラの対象商品購入でPayPayポイントを+10%もらえるキャンペーン(~2022年12月19日01:59、要エントリー)を実施中だ。
本サービスがこれらのキャンペーンと異なる点は、オフラインとオンラインを横断してのサービスであること。一時的なキャンペーンではなく継続的な取り組みであること。また、リアルタイムでPOS連携することで、ユーザーの購入実績に応じて商品の価格を変動するなど、様々なアプローチができることだ。
これまでメーカーでは、オフラインの店舗で現金購入の場合、誰が買ってくれたのかわからないという課題があった。そのため商品に付いているシールやバーコードを貼って応募してもらうキャンペーンなどを実施するも、それを手間に感じるユーザーも多く、応募数に限界があった。
本サービスはこのようなメーカーの課題を解決できる。オフラインとオンラインの両方をカバーでき、継続的にユーザーの購入状況をリサーチすることで、各ユーザーに合った個別のアプローチが可能になる。
ファンになって商品を買うほどにユーザーメリットが得られる
ユーザーにおいても、従来の『PayPay』や『Yahoo!ショッピング』のポイントプログラムに加え、本サービスの対象商品を購入することでもポイントがもらえ、得できる。その際、キャンペーンへのエントリーなど、面倒な手間はない。また、小売店も対象商品を取り扱うことで売上げアップが期待できることから本サービスは、「メーカー、ユーザー、小売店の三方良しの販促DXである」と出澤氏。
想定されるユーザーメリット。
このようなサービスが成立するのは、『LINE』『Yahoo! JAPAN』『PayPay』それぞれが圧倒的なユーザー数を獲得しているから。しかもYahoo! JAPAN IDとPayPay IDの連携はかなり進んでいるので、オフラインとオンライン両方の購入額の蓄積もスムーズ。LINE IDとの連携はこれからだが、『Yahoo!ショッピング』や『PayPay』からユーザーにアプローチすることもできる。
各サービスそれぞれが圧倒的なユーザー数を誇る。
2023年3月のサービス開始時点の参加企業は、アサヒ飲料、ウエルシア、オーケー、サンドラッグ、スギ薬局、ツルハドラッグなど。本サービスでLINE、ヤフー、PayPayの3社が一体となってメーカーの効果的な販促を実行することで、1000億円規模の売上げを目指す。
アサヒ飲料ほか、大手ドラッグストアが参加予定。
メーカー向け販促サービスPayPay『商品クーポン』も登場
本サービスの開始に伴って、販促サービスの核となる『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay 販促コンソーシアム』を設立。メーカーや小売などの企業が参画し、CRM(Customer Relationship Management)機能の提供とリアルタイムPOS連携の実現について協議する。『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay マイレージ』の提供開始時には、現時点で10社以上が参加予定となっている。
『LINE・Yahoo! JAPAN・PayPay 販促コンソーシアム』の位置付け。
メーカー向けの販促サービスとして、『PayPay』では2023年5月に『商品クーポン(仮)』の開始を予定。現在、加盟店と連携してユーザーに提供している『PayPayクーポン』を、メーカー向けにも開放し、メーカーの対象商品ごとのクーポンを発行できるようにする。
『商品クーポン(仮)』のアプリイメージ。
『PayPayクーポン』は事前にクーポンを獲得しておくことで、決済時に自動的に割引やポイント付与が適用されるもので、これまでに83社がクーポンを発行。約5300万人の『PayPay』ユーザーの4人に1人の約1200万人が『PayPayクーポン』を利用する。
3社が展開する様々な販促サービス。
国民的コミュニケーションアプリの『LINE』、多彩なECサービスを展開する『Yahoo! JAPAN』、コード決済サービスで首位を確立した『PayPay』の3社がそれぞれの強みを活かしてメーカー向け販促サービスを強化する今回の取り組み。サービス開始の来春以降、メーカーの販促がどのように変わっていくのか楽しみだ。
プレスリリース
https://about.yahoo.co.jp/pr/release/2022/12/13a/
取材・文/綿谷禎子