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スプラウト、豆苗のパイオニアが最先端の植物工場で生産する高成分野菜「ブロッコリー スーパースプラウト」の開発秘話

2022.12.19

■連載/阿部純子のトレンド探検隊

「O-157」食中毒事件の風評被害で倒産寸前からV字回復した理由

かいわれ大根やブロッコリースプラウト、豆苗など、野菜や豆類を発芽させたスプラウトは、栄養面や求めやすい価格からこの20年で日本でもかなり浸透してきた。スプラウトの全国シェア6割を誇る「村上農園」は、スプラウト=発芽野菜を日本に根付かせたパイオニアでもある。

豆苗専用としては国内最大規模の植物工場である「山梨北杜生産センター」(下記画像)、専用栽培装置を使って高成分野菜のブロッコリースーパースプラウトを生産する「スーパースプラウトファクトリー」など全国10か所に生産施設があり、科学的知見、データに基づいた栽培、管理を行う植物工場で、品質を維持した安全な野菜を生産している。

スプラウトのおいしさや手軽な活用法などの情報を日々発信している、村上農園 広報マーケティング室次長の松井真実子氏に、村上農園の歴史やブロッコリー スーパースプラウトの効能、スプラウトや豆苗のおいしい食べ方など詳しく話を伺った。

村上農園は1939年に「紅たで」を作る農園として創業し、1966年に先代社長の村上秋人氏が有限会社村上農園を設立。1978年に株式会社となり「かいわれ大根」の生産を開始、かいわれ大根で全国シェア№1となった。

しかし、1996年に大阪府堺市で発生した病原性大腸菌「O-157」による集団食中毒でかいわれ大根が疑われ、風評被害により村上農園の売上は70%減に。退職者も相次ぎ同社は大きな打撃を被った。

「騒動の半年ほど前から、今では看板商品となった『豆苗』のテスト栽培を開始していました。中華料理の食材として使われていたものの当時の日本ではなじみのなかった豆苗を、水耕栽培で安定的に供給することで、安価で提供したいという思いがあり、豆苗の栽培を始めていたんです。

かいわれ大根の風評被害で倒産寸前の状況にある中、社員が自ら店頭に立ち試食など宣伝販売を重ねた結果、豆苗の売れ行きが急速に伸びていきました。豆苗を全国販売することで会社を立て直すきっかけとなったのです。

現社長の村上清貴は『ピンチはチャンスだ』とよく口にしますが、生産現場や研究開発部のスタッフも含め全社員が店頭に立ち豆苗の宣伝販売を行い、全社員が一丸となって逆境をばねにした結果、約1年半で経営を立て直すことができたのです」(松井氏)

予防医学から生まれた高成分野菜「ブロッコリー スーパースプラウト」

看板商品の豆苗以外にも取り組むべく、1999年に「ブロッコリースプラウト」など4種のスプラウトシリーズを生産開始。2001年から高成分野菜「ブロッコリー スーパースプラウト」(以下、スーパースプラウト)の生産を開始する。

スーパースプラウトは発芽3日目のブロッコリーの新芽で、有用成分「スルフォラファン」が一般的なブロッコリーの20倍以上と高濃度に含まれるのが大きな特長。

米国ジョンズ・ホプキンス大学で予防医学を専門するポール・タラレー博士が、1997年にブロッコリーのスプラウト(新芽)に高濃度に含まれるスルフォラファンという物質にがんを予防する効果があると学会で発表。米国では大々的に報じられ、スプラウトブームが起こった。

スルフォラファンはファイトケミカルの一種で、ブロッコリーなどアブラナ科の野菜に含まれる成分。その作用として、抗酸化、解毒、抗炎症、抗糖化、抗ピロリ菌など多くの研究結果が報告されている。

「村上農園の関連会社がアメリカにあったことから、野菜で体の防御機能を高める研究をしているタラレー博士のニュースを知り、先代と現社長がタラレー博士を訪ね、スルフォラファンを高濃度に含む種子や栽培ライセンスの交渉を行いました。当初は門前払いだったそうですが、何度も通い村上農園の事業実績、経営理念を熱心に説明したところ、1999年に日本で唯一となるライセンス契約を結ぶことに成功、2001年から生産を開始しました」(松井氏)

タラレー博士はスルフォラファンの濃度だけでなく、原料の種子や栽培方法、検査方法に至るまで厳しい基準を設定している。基準をクリアした商品にのみ黄色の「ブラシカマーク」認定証を付けており、日本で唯一、村上農園の商品だけが認定を受けている。

広島本社内にスルフォラファン研究所があり、スルフォラファン濃度のさらなる向上や安定を図るため、20年以上前から品種改良を行っている。現在は第4世代で、1999年当初より1.7倍スルフォラファンの含有量が増加し、これは他社製品の10倍以上になる。スルフォラファン含有量は自社の研究所とアメリカの検査機関で、定期的にダブルチェックをしている。

健康志向の高まりからスーパースプラウトは徐々に注目を集め、出荷量は2010年から10年間で約7倍になり、2021年には専用の生産施設として2か所目となる「スーパースプラウトファクトリー」を山梨県北杜市に開設した。

スーパースプラウトのスルフォラファンを効率よく摂取するためには、加熱せず生のまま、よく噛んで食べるのが効果的。野菜なので食べる量に決まりはないが目安としては、レギュラーパック(50g)を1週間で1パック以上がおすすめ。スルフォラファンの効果は3日間持続するので、2~3日に一度食べると効果が維持できる。

村上農園のサイト内にある「村上農園でつくる」では、スプラウト類や豆苗を使ったレシピが数多く掲載されている。

「生でいただくスーパースプラウトは、レシピというような難しいものでなく、サラダやサンドイッチ、スムージー、納豆などいつもの食事にそのまま加えるだけでOKです。市販のサンドイッチやサラダ、パスタに足してもおいしくいただけます。

納豆と組み合わせるととてもおいしく、おすすめは納豆にスーパースプラウトと小さく切ったプロセスチーズを混ぜ、塩コショウで味付け、仕上げにオリーブオイルをかけるというもの。ごはんやトーストに、パスタにもよく合います。

手軽に日々の食生活に取り入れることができるスーパースプラウトが、ヨーグルトや納豆のように毎日の定番として食べていただける食材になって欲しいと思っています」(松井氏)

【AJの読み】栄養価の高い野菜を安定価格で提供する家計の味方

村上農園の主力商品である「豆苗」は、えんどう豆(グリーンピース)の若芽。今ではすっかりスーパーの定番商品となっており、安定した価格ということもあり食品の値上げラッシュが続く中、家計の強い味方になっている。また、豆苗は根元部分を残して水に浸せば再び新しい芽が成長して、1週間~10日で料理に使えるので、1株で2~3回楽しめる点でもお得感大。

豆苗が一般的な野菜となったのは村上農園の功績ともいえるが、豆苗があの「O-157」事件(当時の菅直人厚生大臣がかいわれ大根を頬張り、安全性をアピールしていた姿を思い出す人も多いのではないだろうか)の風評被害から会社を立て直すきっかけになったとは初めて知った。

今回紹介したスーパースプラウトは、世界の新型コロナウイルス感染者状況を発表している研究機関として、日本でもよくその名を聞かれるようになったジョンズ・ホプキンス大学のタラレー博士が開発した予防医学から生まれた野菜。

村上農園ではブロッコリーの新芽を2商品発売しており、発芽から3日で収穫するのがもしゃもしゃとした形のスーパースプラウト、7日で収穫するのがかいわれ大根のように軸が伸びたブロッコリー スプラウトだ(下記画像)。

いずれのスプラウトも一般的なブロッコリーよりスルフォラファンの含有率が高く、スーパースプラウトは20倍以上、ブロッコリー スプラウトは10倍以上。スーパースプラウトの場合、通常のブロッコリー1㎏とパック50gが同じ含有量になる。

広島大学と村上農園の共同開発によって生まれた、国内で唯一ビタミンB12を含有する野菜「マルチビタミンB12かいわれ」は栄養機能食品。1/3パックで成人が1日に必要な量のビタミンB12を摂取できる。肉を避けがちな高齢者やダイエット中の人、肉類を摂取しないためビタミンB12 が不足がちになるヴィーガンにも好評を博している。

松井さんおすすめのスーパースプラウト+納豆+チーズのレシピを全粒粉パスタにのせて試食してみた。最初は微妙な組み合わせかも……と恐る恐る口にしたが、納豆独特の風味が、スプラウトのしゃきしゃき感とほんのりとした辛味、チーズのコクで相殺され、まろやかな味わいでパスタに絡む。これはそばやうどんにのせてもおいしいかも!

刺身や豆腐、そば・うどんなどに薬味として使ってもいいし、サラダやサンドイッチに加えるとボリューム感も出る。スライスした玉ねぎにツナやサバ缶と和えておつまみ風にしてもおいしい。和洋食問わずとにかく使える!と実感。スーパースプラウトは毎日の食生活に積極的に取り入れていきたい食材だ。

未来型植物工場「スーパースプラウトファクトリー」についての記事はこちら

文/阿部純子

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