いま、デジタルマーケティングの世界では、Cookie(クッキー)規制が問題視されている。従来のように、Cookieは広告配信のトラッキングなどに利用できなくなるためだ。
今後、Cookieレスなデジタルマーケティングはどうなっていくのか。今回は、アクセス解析サービスで知られるSimilarWeb(シミラーウェブ)の担当者に、Cookie規制による課題や解決策、今後のデジタルマーケティングのトレンドを聞いた。
Cookie規制とは?
まずはCookie規制から理解しておこう。
Cookieとは、WebブラウザでWebサイトを訪問したときに付与される、その訪問先のWebサイトや入力したデータ、利用環境などの情報が記録されたファイルのことだ。CookieはWebサイト運営元のサーバから送信され、自分のパソコンやスマートフォンなどの端末に保存される。
次に同じWebサイトへ訪問する際には、訪問先のWebサイトへ、端末に保存されているCookieを送信することで、ログインが必要なサイトではログインされたまま状態でアクセスできるなど、利便性が高まる。
Cookieには「1st party Cookie(ファーストパーティークッキー)」と「3rd party Cookie(サードパーティークッキー)」の2種類が存在する。1st party Cookieは、Webサイトの運営元が発行するCookieで、3rd party Cookieは、そのWebサイトに掲載されている広告の広告主などの第三者が発行するCookieだ。
近年、規制の対象となっているのは3rd party Cookieのほうだ。
3rd party Cookieは、ユーザーが複数のサイトをまたいで閲覧した履歴を追跡できることから、広告出稿や効果測定等に活用されてきた。しかし、個人情報やプライバシーの観点から問題視されるようになった。
例えば、Webサイトを離れた後のユーザーの行動を追跡することで、パーソナライズドされた広告が表示されたり、メールが配信されたりすると、誰かに監視されているような気分になるといった声も出てきたのだ。
すでに多くのブラウザでは3rd party Cookieの規制を行っており、Googleは2024年には、Chromeブラウザにおいて3rd party Cookieを廃止すると公表している。
Cookie規制により生じているデジタルマーケティングの課題
2022年11月に、SimilarWebがイベント「Digital Edge Tokyo 2022」を開催し、新しい独自技術を発表した。同時にCookieレス時代のデジタルマーケティングの課題、変化予測について語られた。
SimilarWebは、デジタルマーケティングの最前線にいる企業と言える。Cookie規制により生じているデジタルマーケティングの課題について、SimilarWebの担当者に話を聞いた。
「3rd party Cookie規制による影響は、様々なデジタルマーケティングの領域に散見されますが、特にデジタル広告周辺への影響が大きく、多くのデジタルマーケティング担当者が頭を悩ませています。
デジタル広告の中でもいわゆるリターゲティング広告や類似オーディエンスなど、広告効率を高めるためのターゲティングに使われている技術の多くは3rd party Cookieに依存しており、今後の企業のマーケティング戦略に大きな影響を及ぼしています」
リターゲティング広告とは、1回以上、自社のWebサイトを訪れたことがあるユーザーに対象をしぼって配信できる広告だ。
類似オーディエンスとは、類似配信とも呼ばれるデジタル広告の機能で、既存顧客と似た特性を持ち、自社のビジネスに関心を示す可能性が高いと思われるユーザーに広告のリーチを広げられる機能のことだ。
Cookie規制により、これらが活用できなくなるというわけだ。
「また一定の期間、一人のユーザーに対してデジタル広告を表示する回数のことをフリークエンシーと呼びますが、広告主がそのフリークエンシーを調整するための『フリークエンシー・キャップ』も、3rd party Cookieに依存した技術で、すでに大きな影響を受けている領域です。特にフリークエンシーの計測ができない点については、広告効率が低下するだけでなく、一人のユーザーに過剰に広告を配信することで、ブランド毀損(きそん)にもつながってしまいます」