『亀田の柿の種』をはじめ、誰もが知る米菓を作る亀田製菓が〝グローバル・フード・カンパニー〟を標榜し、劇的な変貌を遂げている。今年トップに就任したインド出身のジュネジャ・レカ・ラジュ会長兼CEOは「亀田製菓にはすばらしい〝種〟がある」と言う。その真意とは?
亀田製菓株式会社
代表取締役会長兼CEO
ジュネジャ・レカ・ラジュ氏
1984年、微生物・発酵分野で最先端であることが決め手となり、大阪大学工学部へ研究員として来日。89年名古屋大学大学院生命農学研究科博士課程修了(酵素反応、酵素工学)、同年太陽化学入社。2014年よりロート製薬で副社長として海外事業などを担当、20年亀田製菓代表取締役副社長に就任。22年より現職。農学博士。
人間はおいしいものが食べたいんです
──入社から2年、今年6月に会長兼CEOに就任されました。
「亀田製菓は国民的なお菓子の会社で、知らない人はいないと思います。名刺交換をすると、みんな笑顔になる。すごい会社に入社したなと改めて思いますし、世の中を変えるようなブランドを出してきた65年の歴史がある会社の経営に携わることに喜びと責任を感じています」
──亀田製菓へは田中通泰前会長(現取締役シニアチェアマン)から誘われたそうですね。
「亀田製菓のことは前から知っていましたし、私は『亀田の柿の種』が大好きなんですよ(笑)。入社前、田中前会長からある会議に呼ばれて、『亀田製菓をどう思いますか?』と聞かれたので、『食の会社は絶対になくならない』と答えました。人間には絶対に食が必要で、災害があっても、戦争があっても、最後は水、空気、食がないと生きていけません。だから食の会社は大丈夫です、安心してくださいと言ったんです。その時はまさか自分が入社するとは思ってませんでしたけどね。私がこの会社に入ったのは食が好きだから、そしてもうひとつは亀田製菓にポテンシャルを感じたからなんです」
──ポテンシャルですか?
「私のキャリアは食の研究から始まって、食の素材メーカーでは研究者としてお茶や卵など身近な食品から付加価値のある製品を作りました。なので、亀田製菓がどんなことをやっているか調べてみたのです。そうしたら、みんな『亀田の柿の種』は知ってるけど、ほかにもこんなすばらしい〝種〟を持っているじゃないか、と。まだ世界中どこにもない技術と素材がいろいろとあることに気づいたんです」
──その種が、プラントベースドフードの『JOY GREEN』、米粉パンの『Happy Bakery』などの新ブランドとなったわけですね。
「現在、亀田製菓は米菓の会社からグローバル・フード・カンパニーになろうとしています。入社して最初に研究所へ行って、ただ研究するだけじゃなくて出口につながる研究をやりましょう、何かのためではなく、世の中の誰かのための役に立つという〝ニーズ〟と〝パーパス〟をはっきりさせましょうと言いました。
例えば米粉パンは、欧米で増えているセリアック病(※1)患者にニーズがあります。日本でもアレルギーの子供が増えていて、また年齢を重ねるほど不耐性が出てきます。でも米はグルテンフリーの食材です。しかも28品目アレルゲンフリー(※2)のパンなら、一家全員でおいしく食べられる。
人間ってね、いくら健康、環境と言っていても、おいしいものを食べたいんです。それには困っている人だけじゃなく、みんなに食べてもらえるようおいしくするんです。健康にいい、環境にもいい、さらにおいしかったら、言うことないじゃないですか! それで米粉パンに『Happy Bakery』と名づけました。他にも亀田製菓には海外事業拡大のためアジアやアメリカに拠点や工場があります。これから米菓だけではなく、いろんなことに力を入れていこうと思っているんです」
我々が持っている〝種〟は柿の種だけじゃない