11月20日に開幕した2022サッカーワールドカップカタール大会。12月2日に日本代表は強豪であるスペインに勝利し、グループステージ2勝1敗で決勝トーナメントへ1位通過した。
サッカーをする上で欠かせないのがサッカーボール。特に近年のワールドカップの公式ボールは、独特なデザインが採用されており、どんなサッカーボールが公式で使われるのか注目している人もいるだろう。
いまや最新テクノロジーを駆使した高性能のボールが多く製造されているが、昔はどういうボールだったのか、そして、多くの人に馴染みのある五角形と六角形の物はいったいいつ頃から使われているのだろうか。
牛や豚の膀胱でできたボールは、水を吸うから重くなる
初期のサッカーボールは1930年代のもの。牛や豚の膀胱を膨らませ、その外側を牛の皮や布などで覆っていたという。ボールのサイズはまばらで、耐久性も低い。撥水性も悪く、雨の日などではボールの重さが倍増したそうだ。
その後、1950年代に入ると、バレーボールに近いような形のものが普及していく。12枚か18枚の細長い革を繋いで作られており、カラーリングは真っ白や茶色などが採用されていた。しかし、実際プレイしている選手や観客にとって見えづらいという難点があり、それを解決するために生まれたのが白黒のボールなのだ。
1970年開催のメキシコ大会で使われた「テルスター」。これが、W杯で使われた初めての白黒のサッカーボールだ。12の正五角形と20の正六角形の合計32面からなる多面体で、今日ポピュラーになっているボールの原型と言えるデザインとなっている。この形は厳密には球体ではなく、切頂二十面体といい、正二十面体の各頂点を切り落とした立体。空気を入れることで球体に近づけている。
更に大きな変化がおとずれたのが1986年のメキシコW杯。それまでサッカーボールには牛革が使われていたが、合成皮革が登場し、加工しやすくなった。ボールを平面から作る必要もなくなり、縫い合わせる代わりに接着剤を用いることもできるため、スポーツ用品メーカーは次々と新しいボール開発に着手した。
いつからあの「白と黒」じゃなくなったのか?
より真ん丸なボールを目指していく中、正五角形と正六角形を使わないボールも増えてきた。2006年のドイツ大会で使用した「チームガイスト」が、これまでとは大きく異なり、プロペラ上のパネル6枚とローター状のパネル8枚の計14枚で構成。縫い目をなくすために、継ぎ目を縫うのではなく、「熱圧着技術」を採用。より真ん丸を目指し、そして完全なウォータープルーフを実現させ、当時の最先端技術を駆使した新世代のボールとなった。
2006年以降、公式で採用されているのは斬新な見た目のボールだ。2022年カタール大会の公式ボールは「アル・リフラ プロ」。大小2種類の、形状が異なるパネルを合わせて20枚使用。空気抵抗を減らすことで、スピードが出るという。また、表面に細かい模様で凸凹を施し、それがスパイクとの摩擦を生み、カーブもかかりやすくなり、ボールが飛ぶ際の安定性も高めているという。
動物の膀胱からスタートしたサッカーボールは、究極に真ん丸に近づき、年々進化している。ベスト16が出そろったW杯。ボールの特徴に合わせて、選手もプレイスタイルを工夫する。サッカーボールの特徴を知ったうえで応援するとシュート時のボールの動きをよりじっくり見たくなるのではないだろうか。
文/田村菜津季
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