今年9月、旅行会社のHISから宇宙旅行プランが販売されるとのニュースが報じられた。早くければ年内にも販売するとのことで、「ついに宇宙旅行の時代が来たか!」と喜んだ方も多いのではないだろうか。人類初の宇宙飛行からすでに半世紀以上。子どものころから夢見ていた“誰でも、気軽に宇宙に遊びに行ける時代”がついに現実のものとなろうとしている。HISが発表した宇宙旅行プランについて見ていきたい。
米・宇宙ベンチャー企業との提携した宇宙飛行体験プラン
今回のニュースは、HISがアメリカ・フロリダ州に本社を置く宇宙ベンチャー企業Space Perspective社と、同社の提供する気球型宇宙船「Spaceship Neptune(スペースシップ・ネプチューン)」の販売契約権を締結したことによって報じられた。
2019年に設立されたSpace Perspective社は宇宙観光ビジネスのスタートアップ企業である。設立当初から宇宙旅行に向けたビジネスを展開しており、2020年の6月には原型となる宇宙旅行計画の動画をすでに公開している(※)。過去のニュースを見ると、どうやら当時から宇宙服不要、食事の提供やスマホ撮影可能などカジュアルな宇宙旅行のコンセプトが決まっていることが窺える。
(※)The Space Perspective – Spaceship Neptune
https://www.youtube.com/@SpacePerspective/videos
今年4月には、同社がスペースラウンジと呼ぶ「Spaceship Neptune」の内部イメージが公開された。このイメージを見るに搭乗者は船内を自由に歩き回り、飲食を楽しみながら窓から景色を楽しむことができるようだ。彼らのコンセプト通り、ホテルのバーラウンジから夜景を眺めるのと同じようなラグジュアリーな時間を過ごすことができるのだろう。Wi-Fi環境までも整備されているというのは驚きである。
こうして、長い年月をかけて進めてきた宇宙旅行サービスが、このたび一般に向けてついに販売されるというのだ。HISによれば、
「フロリダのケネディ宇宙センターか同地域の他の宇宙港から離陸し、約6時間の飛行、費用はお1人様あたり12万5000ドルとなります。
スペースシップ・ネプチューンは再生可能な水素により推進され、時速12マイルで2時間かけて宇宙の入り口まで上昇します。高度30kmを2時間飛行し、その後、再び2時間かけて降下し海に着水します。着水地点には船が待機しており、お客様と船体を乗せて岸に上陸した時点で旅行体験終了となります」
とのことである。高度30kmという高さは成層圏の中腹に当たり無重力空間ではない。そのため、昨年、日本人として初めて宇宙旅行をした前澤友作氏がしたような事前訓練などの必要はないそうだ。また年齢や体重制限もなく、本当に誰でも宇宙(正確には宇宙に限りなく近い場所)に行けるということになる。
年内には販売開始予定とのことだが、残念ながら11月末時点ではまだ販売開始はされていない。今後の続報に期待したい。
また、Space Perspectiveは同宇宙船による商用飛行を2024年後半に開始予定との報道もあり、おそらく今後HISから販売されるプランも2024年以降のものと思われる。
いま宇宙産業は盛り上がりを見せている。しかも、これまでのようにNASAやJAXAといった国策としての取り組みではなく、民間から多くのプロジェクトが立ち上がっている。今度こそ、本当にそう遠くない未来に宇宙へ行けるようになりそうだ。
取材・文/峯亮佑