■連載/阿部純子のトレンド探検隊
2022年の越境ECは「追い風消費」
「Buyee」「FASBEE」などグローバルコマースを運営するBEENOSグループが、越境ECの支援実績3000件以上の購買データを基に、2022年の消費傾向を振り返る「BEENOS 越境EC ヒットランキング 2022」が発表された。
越境ECとは国境を越えて取引されるECサイトのこと。2022年は円安が急速に進み、一時151円台を付けるなど32年ぶりの円安水準を更新。コロナ禍で進んだ企業のDXの動きや、SNS、動画配信サービスなどデジタル環境のサービスが普及して消費者がデジタルシフトしたこともあり、2022年の越境ECは「追い風消費」となった。
こうした背景を受けて、国内企業への越境ECの浸透も進み、海外から購入できる日本の商品が増え、その結果客も増えるという越境EC業界に良い循環が生まれ、流通も一段階伸長した。
BEENOSの海外向け購入サポートサービス「Buyee」の2022年第4 四半期の流通総額は前年同期比31.3%増で過去最高を継続更新。海外ユーザーによる日本商品の需要の高まりを受けて、国内企業からの問い合わせも増え、BEENOSグループが提供する越境ECサポートサービス「Buyee Connect」の2022 年7月~9月の受注件数は、同年1月~3月の期間と比較して約8倍に拡大した。
円安の影響で高額商品、趣味性の高い商品が好調
2022年の商品別ランキングは、1位ブランド腕時計、2位トレーディングカード、3位アニメのフィギュア。また、伸長率のランキングでは、1位カメラのレンズ、2位オートバイのセキュリティグッズ(主にヘルメット)、3位ブランド時計。
昨年まではエンタメ系グッズの人気が高かったが、ブランド時計が追い抜いて1位になり、カメラ、ゴルフグッズ、フィッシングリール、陶芸など趣味性が高いものが挙がっているのも今年の特徴。ブランド腕時計、フィルムカメラ、ゴルフグッズのいずれも55%以上の伸長を示しており、円安の影響で高額商品がさらに売れた結果となった。
カメラレンズは主な購買先である中国、アメリカで引き続き人気を維持したが、購入層に変化があり50代以上が多かった従来に比べ、今年は20~60代まで幅広い層が大量に購入しているという動きがあった。
オートバイのセキュリティグッズはヘルメットが良く動いている。ヘルメットの日本の有名ブランドは東南アジアで人気があり、今年はマレーシアで例年以上に購入されていた。
「ブランド時計は昨年の売り上げ規模も大きかったですが、今年は+約75%と驚異的な成長を遂げています。消費者視点から見れば、円安は一種のセール状態ともいえ、よりお得感のあるものを購入するという、シンプルな動きが現れた結果なのではと考えています。
円安要因だけでなく、各国の経済成長、日本のコンテンツの浸透度も影響していますが、やはり今年は円安の恩恵を受けた商材がランキングの上位に挙がっているといえます。
伸長した地域では、クウェート、アラブ首長国連邦、メキシコが挙げられます。為替の推移と比較すると、上位に来ている地域は20%以上円安が進行しているエリア。中東に関しては円安の進行もありブランド腕時計の購入が多くみられました。メキシコはもともとエンタメグッズが成長している地域でしたが、円/ドル以上に円安が進行している、円/メキシコ・ペソの影響で、売り上げ上位にランクインしました」(BEENOSグループ BeeCruise 執行役員 本間哲平氏)