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年俸制の管理職による残業代の請求を裁判所が認めた理由

2022.12.05

こんにちは。

弁護士の林 孝匡です。

今回は、裁判例のザックリ解説です。

会社が

けっこう高めの年俸を払ってるんだから、残業代なんかナイよ

はぁ?なんでよ!と社員がブチギレ。

残業代の支払いを請求した事件です
(HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件:東京地裁 H23.12.27)

結果。

社員さんの勝訴!約320万円の残業代が認められました。

年俸制の方でも残業代を請求できる可能性があります。

以下、解説します。

バトルの当事者

会社は、HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッドという会社です。

業務内容は、香港上海銀行東京支店から委託を受け、労務管理業務、総務業務、経理業務、IT業務など。

平成19年秋ころ、社員の募集をスタートさせました。

どんな人材を募集したかというと、個人金融サービス本部のマルチチャネル部門でインターネットバンキングサービスなどの開発に関わるプロジェクトマネージャーです。

平成19年12月17日、Xさんは、その職に応募し入社しました(試用期間3ヶ月) 

契約内容は、年俸1250万円。

本採用を拒否される  

しかし、採用から約3ヶ月後。

平成20年3月7日、Xさんは本採用を拒否されました。

理由は、業務遂行上の問題がある、上司からの注意指導に反発するなど就業規則の解雇事由が存在したというものです。

Xさんは、別の訴訟で解雇を争ったんですが、解雇は有効になってしまいました。

しかし、残業代は請求できるはずだ!と今回の裁判に挑みました。

会社の主張

会社は「キミは管理職なんだから残業代なんかナイよ」という取り扱いをしていました。

以下の労働基準法に基づく取り扱いです。

労働基準法 第41条
この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
2 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

でも、この会社の主張は、裁判で撃沈しました。

裁判所は

「この社員は管理監督者じゃないよ!」
「なので残業代320万円、支払いなさい」

と命じました。

★重要ポイント

管理職 = 法律上の管理監督者、ってことにはなりません。

世の中の管理職の皆さんも残業代を請求できる可能性があります。

以下、裁判所がどのように判断したのかを解説します。

裁判所の判断

■管理監督者って、何?

まず、裁判所は、管理監督者とは、以下の3つの要素をミックスして判断すると判示しました(ザックリと要約します)

① 経営者との一体性があるか
職務の内容が、少なくともある部門の統括的なものであって、部下に対する労務管理上の決定等について一定の裁量権を有しているか

②労働時間を自分で決められるか 
自己の出退勤を始めとする労働時間について裁量権を有しているか
 
③賃金等の待遇が良いか 
一般の従業員に比してその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇を与えられているか

この3要素のミックス判断は、現在の裁判でもほぼ共通しています。

■この社員さんは、管理監督者なのか?

この社員さんのお仕事は、個人金融サービス本部のマルチチャネル部門でインターネットバンキングサービスなどの開発に関わるプロジェクトマネージャーです。

さて、この社員さんは、上記3つの要素をミックス判断すると、どうなのかです。

結論として裁判所は「たしかに②③は管理監督者になりそうな要素だけど、①ダメじゃん!」と判断しました

具体的には、

② 労働時間を自分で決められるか
 たしかにフリーダム! 
 ・タイムカードによる管理を受けていたなかった
 ・遅刻、早退、欠勤などについても賃金減額はナシ

③ 賃金等の待遇が良いか 
 めっさ良いじゃん。
 ・年俸1250万円(ボーナスを含めると約1450万円)
  参考:上場企業の部長クラスの平均年収は1044万円 

しかし!

① 経営者との一体性があるか
 なし!
〈理由〉
 ・社員は個人金融サービス本部にあった6つの部門の1つであるマルチチャンネル部門
 ・さらに、その中でもインターネットバンキングサービスという限定されて業務に関する裁量権を持っていたにすぎない
 ・社員はマルチチャンネル部門において最下層に位置していた
 ・部下にあたる社員はいなかったので、労務管理上の決定についての裁量権は皆無

というわけで、

自分が担当する業務を自由に処理できるだけじゃ、①の要件を満たさない可能性ですね。

裁量労働制として認められる余地があっても、管理監督者のハードルは高いです。

結果、管理監督者じゃないよ = 残業代約320万円の請求が認められました。

補足

この裁判では「どれくらい残業したのか?」についても争われています。

裁判官は、

・Suica(出入場記録)
・Emailの最終送信時刻
・社員が書いたメモ

を証拠として、社員さんが主張する残業時間をほぼ認定しています。

会社は

「Suicaは偽造したものだ!」
「メモもあとから書いたものだ!」

と主張したんですが、裁判所は社員さんの方を信用しました。

ここは、出たとこ勝負ですね。

裁判官の心の天秤を1ミリでも下に傾けた方が勝ちます。

★証拠は合わせ技です。

天秤に乗せられる色んな証拠を集めるようにしましょう。

まとめ

今回は、年俸制の方でも残業代を請求できた事件について解説しました。

「チミは管理職だから残業代ナシだよ」は理屈が通っていない可能性が高いです。

上層部の方は残業代の支払いを検討してみましょう。

裁判されると、サイアク倍返しという制裁を課されるおそれがあります。

労働基準法 第114条
裁判所は、第二十条、第二十六条若しくは第三十七条の規定に違反した使用者又は第三十九条第九項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払を命ずることができる

管理職で残業代をもらっていない方は、上で示した3要素に照らして検討して見てください/・・・といっても判断はカナリ難しいので、社外の労働組合や弁護士さんに相談してみましょう。

今回は以上です。

では、また次の記事でお会いしましょう!

取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。コンテンツ作成が専門の弁護士です。
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