全国各地の自治体で、健康促進を目的とした「ご当地体操」を考案するのがブームになっている。コロナ禍になってから外出の機会が減り、運動不足になる人が増えた。それにより、自宅でも簡単にできる運動に注目が集まったことがブームの背景にあるようだ。
厚生労働省のサイトである「地域がいきいき 集まろう!通いの場」(https://kayoinoba.mhlw.go.jp/taisomap.html)には、全国のご当地体操が紹介されている。合わせて433自治体、876本の動画が掲載されているとのことだ。(2022年11月22日現在)
ダンサーが選んだおすすめの「ご当地体操」
筆者はライターの傍ら、ダンスやヨガなどの仕事もしている。ダンス歴は30年以上、ヨガインストラクター歴は約7年になり、身体に関する知識は多い方と言えるだろう。今回は、そんな筆者が見た「ご当地体操」の中から、気になったものをダンサー目線でご紹介したい。
■バランスの取れたエクササイズ!「エコロコ!やまべェ誰でも体操」(北海道札幌市)
最初にご紹介するのは北海道札幌市のご当地体操だ。札幌西区ご当地介護予防体操「エコロコ!やまべェ誰でも体操 “レッスン編”」である。この動画は2022年10月1日~31日の月間再生回数ランキングが1位になっていたものだ。(「地域がいきいき 集まろう!通いの場」HP参照)しかし、1位だったから紹介しているわけではなく、エクササイズの内容のバランスがとても良かったのだ。
動画は7分54秒と長すぎないため、根気強くない方でも大丈夫。とてもシンプルなエクササイズから始まり、徐々に少しずつバリエーションされてくるので脳トレにも良い。
特に注目したいのが“踵の上げ下げ”がくり返し登場するということだ。踵を上げ下げするのはふくらはぎの筋肉にとても良い。動きがキレキレのダンサーのふくらはぎは、ししゃものように盛り上がっているものだ。
また、後ろに足を蹴り上げるエクササイズが入っているのもいい。これはハムストリングという、太ももの裏側の筋肉を使うことができる。ハムストリングは鍛えにくい。なぜなら、日常で足を後ろに蹴り上げることはほとんどしないからだ。
ちなみに、気になる「やまベェ」とは西区環境キャラクター「さんかくやまべェ」のことで、三角山と琴似発寒川に古くから住む妖怪がモチーフだそう。
■仕事の合間にもできる!「いいあんべぇ体操」(秋田県秋田市)
お次は秋田県秋田市の「いいあんべぇ体操(Chapter6 椅子に座ってストレッチ)」だ。「いいあんべぇ」というのは秋田の方言で「いい塩梅」という意味である。
動画は12分46秒で、椅子に座って行うストレッチを9種類紹介してくれる。椅子に座ったまま仕事の合間にリフレッシュしたい時などに良さそうだ。エクササイズはかなりゆっくり説明しながら丁寧に進行するので、どんな運動レベルの人にもやりやすいだろう。
9種類の中でも注目は、椅子を活用して胴体をねじるストレッチだ。これは椅子ヨガでも取り入れられるポーズであり、胴まわりやお腹の中などが刺激されてスッキリする。ねじるというのは日常生活ではあまりしない行為であるが、内臓が刺激されて活性化したり、背骨が整えられたりする効果が期待できる。ヨガのレッスンでも積極的に“ねじり”を取り入れることが多い。
■誤嚥予防やマスク生活による顔のたるみに!「ねりま お口すっきり体操」(東京都練馬区)
続いては、東京都練馬区の「ねりま お口すっきり体操」だ。口にフォーカスしたストレッチで、「いつまでもおいしく食事をし、会話を楽しむための体操」とのこと。
動画は10分55秒だが、実際のエクササイズは5分程度で、残りの5分は動作の解説だ。舌を出したり頬を膨らましたり、簡単な発声をするというシンプルな内容だが、何度もくり返すことでしっかりと口まわりを動かせる。
長いマスク生活により表情筋が衰えている人が増加気味、という話も聞く。お年寄りの誤嚥予防はもちろんのこと、在宅ワークなどが多く「人と話さない日がある」なんて人にもいいかも知れない。
■ご当地品を効率的に使ってエクササイズ「今治タオル体操」(愛媛県今治市)
続いては、愛媛県今治市のご当地品を使った体操「今治タオル体操」を紹介したい。タオルを使うことで、良い具合に運動効果が高められている。
6分32秒の動画の前半3分は立位編、後半は座位編のエクササイズになっている。タオルで膝を抱えて持ち上げるエクササイズは、自力で行うよりもより高く、より安定したバランスで上げられる。また、タオルを後ろ手で掴んで腕のストレッチをするのは、ヨガのメニューでも行う効率的なやり方だ。短いエクササイズなので時間がない方にもオススメできる。
■伊賀の忍者になりきってエクササイズ「忍にん体操」(三重県伊賀市)
続いては三重県伊賀市による「忍にん体操」だ。「忍者の動きと精神を取り入れた独自の体操」とのこと。
3分58秒と短く、忍者風の振付でテンポは早めだ。しかし、何度も同じフレーズが登場するので、エクササイズを覚えるのが苦手な方でもついていきやすいだろう。軽い有酸素運動になり、体が温まることが期待できる。
■スマホやパソコンの眼精疲労に!「目の健康体操」(福井県鯖江市)
最後にご紹介するのは、福井県鯖江市の「目の健康体操」だ。スマホやパソコンによる、慢性的な眼精疲労を感じている人は少なくないだろう。筆者もその中のひとり。目の疲れを感じると、目のまわりを指で押すなどして緩和しようと試みていたが、目のエクササイズをしようとは思いつかなかった。
現在、福井県は「福井市」や「鯖江市」を中心に、日本製めがねフレームの約95%を生産しているという(「福井県眼鏡協会」参照)。“めがねのまちさばえ”としてオリジナルの目の運動を考案したとのこと。
内容は主に眼球を動かすというものだ。腕を肩幅で前に伸ばし親指を立て、頭を動かさずに左右の親指を代わりばんこに見るところからスタートする。徐々に上下や斜め、円を描くように動かしたり、遠くを見たり寄り目にしたりもする。よく考えたらこんな風に目を動かすことは、ほとんどない。エクササイズの後は、なんだか目がスッキリした。定期的に行うといいかもしれない。
動画は現時点で876本もあり、拝見したどの自治体の動画も個性的で面白いエクササイズだった。コロナ禍で在宅勤務が増え、運動不足の方は多いと思う。この機会に「ご当地体操」で気軽に体を動かしてはいかがだろうか。
文/まなたろう
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