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伝統食材の逆襲!?なぜ「うにのようなビヨンドとうふ」のようなヒット商品が生まれたのか?

2022.11.23

「機動戦士ガンダム」のキャラクターをかたどった「ザクとうふ」で一躍話題となった相模屋食料株式会社。2022年3月、同社から新たに発売された。その名も「うにのようなビヨンドとうふ」。発売後SNSを中心に話題を呼び、発売8ヶ月(11月初め)で300万パック超を販売したヒット商品だ。

今回、「うにのようなビヨンドとうふ」を開発した相模屋食料株式会社 代表取締役社長 鳥越淳司さんに、開発の経緯やとうふへの想い、今後の展望についてお話を伺った。

*本稿はインタビューから一部の内容を要約、抜粋したものです。全内容はVoicyから聴くことができます。

相模屋食料株式会社 代表取締役社長 鳥越淳司さん

世界最強のプラントベースフードはとうふ!

相模屋は、1951年に町の小さなとうふ店から始まったメーカーだ。2005年には当時、日本最大のとうふ工場を建設し、安心安全なおとうふの安定供給を可能にし、18年で売上11倍と成長を続けている。鳥越さんは、「とうふの可能性」について、次のように話す。

「おとうふを71年やってきまして、今おとうふの可能性をどんどん広げていくための取り組みをしています。近年では、プラントベースフード、いわゆる植物性食の観点から、大豆に対する注目が集まっていますよね。そんな中でも、大豆を使っているおとうふは、プラントベースフードのど真ん中で、『世界最強のプラントベースフードはおとうふなんだ!』と思っています。『植物性肉』『プラントベースミート』と言われると関係なさそうに聞こえるんですが、『これ、がんもじゃん』みたいな感覚ですね(笑)」(鳥越さん)。

日本の伝統食であるとうふは、古くから日本人の貴重なタンパク源。SDGsやプラントベースフードといったものは欧米からのトレンドではあるものの、「日本も負けていない」と鳥越さんは語る。

「たしかに、欧米から来る最新のトレンドは素晴らしいものだと思うんですが、その陰で日本伝統のものはなんかダサくって古めかしくって、こんなのまだやってんの?みたいに見られるのはどうなのかなと思っています。プラントベースフードと言うから日本のものじゃないと思われがちですが、日本人はずっとタンパク源として大豆と魚で育ってきています。元々あったこの文化と、それをずっと伝統的に培ってきた部分では『まだまだ負けてないぞ!』と証明したいと思って、いろんな新商品を出しているところです」(鳥越さん)

「うに風味のおとうふ」ではなく「おとうふで作ったうに」

「うにのようなビヨンドとうふ」は、味も食感もうにのイメージそのままを再現した商品。その特徴について、鳥越さんはこう続ける。

「『うにのようなビヨンドとうふ』は、『おとうふで作ったうに』でして、『うに風味のおとうふ』ではないんですね。食感も何もかも、うにのイメージそのままに『うによりうにらしく』と言っているんですが(笑)、そんなおとうふです。『一般の方が思っているうにのイメージ』をそのままおとうふで作り上げました」(鳥越さん)。

「とうふの可能性」に挑み続ける相模屋。ではなぜ、今回「うに」が選ばれたのだろうか。きっかけは、知人からの一言にあった。

「きっかけは、不二製油さんという会社の社長 清水さんから『とうふって味がシンプルで何にでも合うけど、クセになる味がないから、また食べたいと思うことは少ないよね』というお話をいただいて『たしかに』と思ったんです。人でもそうだと思うんですけど、『また会いたいな』と思う人って、大体クセのある人じゃないですか(笑)。優等生できちんとした方もとても素晴らしいんですが、会っても多分忘れてしまう。一方、クセのある人は絶対忘れないですからね。そんなおとうふを作りたいなと思いまして。じゃあ『クセになる味』は何かと考えたら、やっぱり『海鮮系の味』だろうと。臭みが美味しいというのは海鮮系の特徴で、それの極みが『うに』じゃないかと思ったんです」(鳥越さん)。

そうして開発された「うにのようなビヨンドとうふ」は、うにが苦手な人からも評価を得ている。

「葉書などでお声をいただいていて、うにが嫌いな方も食べていただけていることは嬉しく思います。あと、北海道羅臼の漁師のお孫さんからお手紙いただいたんです。小さい頃は羅臼で育ち、祖父うにを採っているんですと。そのうにが美味しくて、北海道を離れてから美味しいうにがなくて食べなかったそうなんですが、これを食べたらものすごく美味しかったと言っていただいて。本物の方に認められたというのは、とても嬉しかったですね」(鳥越さん)。

「おとうふであれば、私たちにできないことはない」

相模屋では、社長自らが開発に取り組んでいる。その理由について、鳥越さんは次のように話す。

「おとうふであれば、私たちにできないことはないと思っています。『目指すところをどこに持ってくか』は、すごく大事なことです。行けそうなところを目指すのではなく、『もうこれ無理でしょ』というところを目指していかないと駄目だなと。開発は独善的と言われようが、私が考えて進めていきます。合議だと、いろいろな話し合いしているうちに、尖っているものが丸くなってしまうんです」(鳥越さん)。

相模屋では、開発において100%を目指すのではなく5割に集中する「5割の法則」を取り入れているという。

「『5割の法則』と呼んでいるんですが、私達は100%を目指さないで5割でやろうと。感覚的にですが100%を目指しても、8割はすごいもので、あとの2割はそんな大した成果じゃないと思っています。8割を目指そうとすると、もう5割でよーいドンでやってしまわないと、そこには追いつきません。だからこそ、5割を徹底的に集中してやるんだという姿勢で開発をしています」(鳥越さん)

ガンダム好きな鳥越さんは、「ジオング」を例に挙げて5割の法則を説明する。

「ガンダムが好きなんでガンダムネタで話しますと、『ジオングを足なしで出せるかどうか』が勝負の分かれ目なんだといつも話しています。ジオングは足をつけて、パーフェクトジオングにするとかっこいいんです。だから大手企業だと、パーフェクトジオングでなければ企画が通らないと思うんですね。私たちはもう割り切って『宇宙空間なんだから足いらないでしょ』と、スピード感を持って取り組んでいます。出してからどんどんブラッシュアップしていけば良いので、完璧を目指さないっていうのは一つ大きなポイントですね」(鳥越さん)

敢えてクセを出す難しさ

「うにのようなビヨンドとうふ」の開発では、「敢えてクセを出す」ことに難しさを感じると鳥越さんは話す。

「このうに風味はだしを使って表現しているんですが、それととうふを合わせるところ、安定させる部分が一番難しいんです。クセのないものならクセをなくせばいいんですが、それよりもこの暴れん坊な波を、ちゃんと暴れさせるのが結構難しいんです(笑)。いかに『ずっと暴れさせるか』が特に難しいですね。今も毎週月曜日に、今週の味がどうだったか、暴れ具合が私の許容範囲かどうかをチェック、調整しています」(鳥越さん)。

相模屋は海なし県である群馬に本社と工場を構えている。そのため、当初は「海沿いの街では売れないのではないか」という懸念があったと鳥越さんは振り返る。

「例えば、福島のいわきのスーパーさんでは、食べていただいた時に、反応がいまいち良くなかったんです。ただ長野や甲府のスーパーさんに行くと『うわー何これー!』という感じで喜んで食べていただけました。海岸沿い、特に三陸では『本物のうにがあるから駄目なのかな』と思っていたんですが、青森のスーパーさんで恐ろしく売れまして(笑)。うには8月が最盛期で、『3月は閑散期だから売ってみよう』と販売していただいたんです。そこから青森、秋田、岩手、宮城、福島と沿岸部でも売れるようになって、やってみれば認めていただけるものだなと」(鳥越さん)。

「うにのようなビヨンドとうふ」は、発売から5か月で180万個を突破。一時は生産が追いつかないほどだったという。中でも、リピーターの購入が多いのが特徴だ。

「ものすごく反響をいただいていることに加えて、リピーターの方が圧倒的に多いんですね。食べていただいて『次も買おう』『次も食べたい』と言っていただけるお客様が多いことも嬉しいことの一つです」(鳥越さん)。

本物のうにのようにわさび醤油で味わうのが王道だが、調味料として「うにのようなビヨンドとうふ」を使うアレンジレシピも広がってきているという。

「『うにのようなビヨンドとうふ』を、調味料として使っていただくこともあります。例えば、うにパスタに入れて、ソースとして食べていただいたり、ムースにしたりと、いろいろなものに使えるんです。今までおとうふを調味料にすることってなかったと思うので、そこの世界が広がり、一気に市場も広がっていると感じます」(鳥越さん)。

居酒屋話を実行に移すことの大切さ

鳥越さんは、今までにない商品を生み出すポイントとして、「話すだけではなく、実際に行動に移すこと」が重要だと語る。

「開発で、誰もが呆れるようなことでも、一生懸命やれば実現できるんだということを学びましたね。今までのノウハウ、本を読んで得た知識もあるかもしれませんが、それではなくて『自分でやって実現してきたノウハウ』はとても大きいなと思います。『思いついたんだからやろうぜ』と、どこまで真剣にできるかは大きなポイントですね。よく言うんですけど、居酒屋話を本気で次の日にやるかどうかかなと思っています。居酒屋ではみんな『こういうのやったらいいよね』『あー、それいいじゃん!』とか言うんですが、翌日になったらポンっと忘れちゃって『昨日、結構飲んじゃったよね』みたいな感じで終わってしまう。本気で次の日に『昨日言っていたあれやってみない?』とできるかどうかが重要だと思っています」(鳥越さん)。

日本の伝統食材の逆襲!

最後に、今後の展望について鳥越さんは次のような想いを語った。

「おとうふの世界をどんどん広げていきたいです。日本伝統の技術で成り立っているおとうは、ものすごいポテンシャルを持っているんだということを証明していきたいと思っています。ウニの次はイクラ、イクラの次はホタテを考えていまして、あと実はもうカニ味噌やあん肝も準備しています。出すかどうかわかりませんが(笑)。あとは『カルビのようなビヨンド油揚げ』ですね。今後も『いや〜、おとうふって結構面白いよね』と言っていただけるような商品作りをやっていきたいですし、それでおとうふの世界がどんどん広がっていけば、『日本の伝統工芸の逆襲』ができます。『メイドインジャパンをもう一度』というテーマで突き進んでやっていきたいですね」(鳥越さん)。

相模屋公式サイト:https://sagamiya-kk.co.jp/

取材・文/久我裕紀


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