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新規事業か?自社の強みを活かしたビジネスか?繰り返される大企業のジレンマ

2022.12.19

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
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商品開発のツボ(15)「餅は餅屋」

 私がバンダイの新規事業室を担当していた4年間は、バンダイにとっての新規事業を日夜考えておりました。その中で、こんな事業もありました。ナムコと統合したことにより、バンダイ内でも、ロケ先の事業、いわゆるお店を構える事業に興味を持つ者が増えていました。そんな中カフェ事業をやろうという企画が持ち上がりました。親子で楽しめるカフェをバンダイが運営しようというのです。お子様が伸び伸びと遊べる室内空間を用意し、隣にはファミレスよろしく、ママ友たちがおしゃべりしてお茶を飲んだり、軽く食事したりできる空間があれば、流行るに違いないと思ったのです。当時、同じところに目をつけて先行している企業も少しありました。バンダイが参入すれば成功するかもしれないと思い、江戸川区に「Roasis」という親子カフェの1号店を構えたのです。バンダイにとって飲食店の経験はほとんどありませんので、グループ企業の一員のイタリアントマトの協力を得ながら、何とかスタートできました。バンダイのカラーは敢えて出さず、ゆったりとした心地よい空間創りにこだわり、地元ではそれなりに評価されてはいましたが、なかなか運営が軌道に乗るには難しく苦労しました。

 時々実施するキャラクターのイベント時は盛況でしたが、通常時は損益分岐点を割る毎日……。そして3年目くらいでしょうか? その後の大きな発展が見込めないという判断から、とうとう店をたたむ決意をしました。大勢のスタッフや関係者にも支えてもらっていただけに、くやしさと情けなさでいっぱいでした。「こんなに地元に愛されている店をやめないで!」と涙する店舗スタッフの顔が今でも忘れられません。

 その頃、並行して進めていたのが「ガンダムカフェ・プロジェクト」でした。こちらも同じカフェではありましたが、バンダイの最有力コンテンツであるガンダムをテーマにした、「聖地」を創ろうというものです。場所はやはりアキバ(秋葉原)がいいね、ということで、場所を探していたところ、JRの高架下という、もってこいの場所が見つかったのです。

 いよいよ次のカフェのプロジェクトの本格スタートです。メンバーには、親子カフェ「Roasis」で苦汁を舐めたメンバーたちが奮って参加しました。皆今度こそは失敗しないぞという熱い気持ちで必死の準備が始まりました。

 当時ガンダムをモチーフにした店舗として、バーや喫茶店等、いくつか無許可で営業している店がありましたので、バンダイとして、ホンモノの純正店舗を創ることは、大変意義がありました。この店舗だけの特別なメニューやお土産商品が次々と開発されました。そして、オープン前に、様々なメディアにも取り上げられた結果、オープン当日には、長蛇の列。ガンダムのファンが、この店に期待して並んでくれました。この時は、正直震えました。1年前のくやしさが報われた瞬間でもありました。しかし私としては、正直まだまだどのくらいの売り上げになるかわからず、ドキドキ見守っていましたが、初月の売り上げは、期待を大きく上回るもので、結果は大成功となったのでした。その後も連日、熱いファンのみならず、会社帰りのカップルや外国の方も来店してくださり、一躍秋葉原の名所となった訳です。

 苦労した数年間は決して無駄ではありませんでした。何よりもオープン当時、元部下のスタッフが「忙しくてかなわん」と言っている目がとってもキラキラとしているのを見て、私もぐっときました。

 やはりバンダイはキャラクター屋だったのです。もっと親子カフェでもキャラクターという強みを活かすべきだったかもしれません。

 餅は餅屋なのです。自社の強みをしっかり活かして、成功確率の高いビジネスに取り組みましょう。
 

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo


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