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商品開発担当者なら心得ておきたい「オリジナルは価値であり、勝ちにつながる」鉄則

2022.12.02

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
ご購入はこちら

商品開発のツボ(9)「オリジナルは価値(勝ち)」

 次は「商品企画」のステップに進みます。分野探索をし、数多くのアイデアを創出した後、商品の企画としてまとめ上げていく、最も重要なパートです。

 初めの着眼、思いつきのアイデアを上手にブラッシュアップし、売れるコンセプトに仕上げることさえできれば、その後の開発業務の迷いの半分はなくなるともいえます。

 よく商品開発では、「売れるか、作れるか、儲かるかの確認をせよ」と言われますが、初めの「売れるか?」の部分はコンセプトが如何に優れているかということに他なりません。ここがしっかりしていれば、後は作れるかどうか、さらにビジネス的に見れば、効率的に利益が出せるように作れるかだけです。

 しかし、逆に最初のコンセプトが弱かったり、狙いが間違っていたりすると、途中で迷いが生じ、プロジェクトの進行に支障をきたしたりします。時にはふりだしに戻ってしまうような苦労をしてしまうことも多々あります。

 そういった意味においても、この「商品企画」のパートをしっかり自分のものにして、その後のプロジェクト進行に弾み、勢いが付くようにしたいものです。

 商品コンセプトを練り上げ、企画を固めていきますと、この商品はお客様にとってどれほどの価値があるのだろうと考えますよね。コンセプトが、強いニーズに根ざしたものであればあるほど、その価値は大きく、ヒットする確率も高まります。どこにでもある商品やサービスでは、お客様は見向きもしません。またちょっとしか差がない場合も同様です。数多た溢れる新商品の中でやはり、他にない魅力を持つ商品を創り出せるかが、とても重要なポイントになります。

 いわゆる「オリジナル」といわれる商品があります。「元祖」なんて言い方もします。

 例えば、アップルのiPhoneやiPadはその独自性において、その後の世界を変えたといってもいいと思いますし、トヨタのプリウスのデビュー時の驚異的な販売台数は、プリウスが他の商品に取って代わることのできない魅力・価値を持っていたという証です。行列のできるラーメン屋さんも同じです。お客様は、その価値に敬意を払ってお金を出してくれるのです。

 つまり、オリジナルの商品開発が如何に大切かということに尽きます。我々、商品開発を生業とする人間は常にこの「オリジナル」「差別化」を意識していく必要があります。

 一般的なマーケティング理論では、「市場を最初に切り開いた商品には、先行者としてメリットがあり、売り上げと利益を独占できる」とされています。その通りです。とにかく「オリジナルは価値であり、勝ちにつながる」と覚えておきましょう。

 では、ここで、「究極の価値」を具現化した1つの商品の事例を紹介したいと思います。

 私の勤めていたバンダイは2005年にゲームセンターの運営をしていたナムコと統合し、現在はバンダイナムコグループとして、おもちゃ開発からゲーム開発、アミューズメントセンターの企画運営まで、幅広くエンターテインメントの価値創造を日々続けています。そのグループ企業のナムコの施設で、キャラクターのなりきり写真、ムービーの撮影サービスがありました。このなりきり写真、なりきりムービーというコンセプトの商品は、元々私が新規事業室を担当している時に、テスト的に運営していた「バンダイ写真スタジオ」で生まれたサービスなのです。

 この写真館を始めた2006年当時、子ども写真スタジオという事業は、業界トップのスタジオアリスを筆頭に、各社七五三の写真を撮ることをメインのサービスとし、店舗(スタジオ)を構えていました。

 私たちバンダイの新規事業室のメンバーは、新規事業開発として、憧れのキャラクターになりきって写真が撮れるスタジオがあれば、きっとヒットするに違いないと思い、横浜の港北ニュータウンに、まず1号店を構えたのです。

 男の子は○○レンジャーといった戦隊シリーズやウルトラマンといったヒーローに、女の子はプリキュアやたまごっちと、可愛いキャラクターの衣装を着て変身、ヒロインになりきって写真が撮れるといった企画でした。

 この狙いは、キャラクター好きの親子にヒットし、なりきり写真を撮る子どもが徐々に増えてきました。その中で特に人気だったのが、お子様が主役のヒーローのキャラクターになりきって、テレビの主人公よろしく敵をやっつけるオリジナルのDVDを創るというサービスでした。

 スタジオでお子様にいくつかのポーズのムービーをブルーバックの背景で撮り、その後、実際のテレビのシーンと重ね合わせて合成し、あたかもそのお子様がヒーローになって戦っているかのように編集しました。これがとにかく喜ばれたのです。

 スタジオでポーズをとっているときは、恥ずかしそうにしていた子どもたちも、でき上がったDVDを見ると、目を丸くして大喜び! 帰ってからは、毎日毎日そのDVDを自分で見て、また家族や友達にも見せて喜んでいるという声をたくさんいただきました。

 この「世界に一枚しかないDVD」がどれほどの価値があるかは、そのお子様の笑顔が物語っています。つまり、「その人だけのために作られたもの」が、一番の価値がある究極の商品やサービスなのです。大量に作られ、誰でも同じ価値を享受できる商品ではなく、いわゆるONE to ONEのマーケティングです。

 なりきりムービーは、スタジオのスタッフがお子様のご機嫌を見ながら、笑顔といい表情をうまく引き出し、「世界に1つだけの価値を創造する」という、本当に素晴らしいサービスでした。

 その後、スタジオ事業そのものからバンダイは撤退したものの、この「なりきり写真」「なりきりムービー」だけは、その後もグループ会社のナムコのキャラクター施設のコンテンツの1つとして活かされていました。

 さて、商品の差別化に話を戻しますと、一般的にメーカーは、新しい技術で新商品を作り、特許や意匠登録、商標登録で、参入の障壁を作り、他社の追随を排除しようとします。

 また、バンダイのように、キャラクターを使って商売をしている会社は、そのキャラクターの版権使用許諾を、権利を持っているプロダクションやテレビ局から受けて、一定の範囲で独占的に使用します。これも同じ理屈で、「差別化」「オリジナル」の一形態といえます。

 但し、どんなに優れた技術でもお客様の「ニーズ」につながっていなければ、全く意味のない独りよがりの技術や特許になってしまいますので、注意が必要です。技術主導型の日本のメーカーによくありがちな失敗商品になってしまう訳です。

 私がある大手メーカーのDVDプレーヤーを購入した時の話ですが、その操作リモコンの、ボタンやダイヤルがとっても多くて、大変使いづらいのです。あまりにわかりにくいので、取扱説明書を読んだものの、その説明書がまたわかりにくい(笑)!

 よく読んでいると、理路整然と細かいところまで説明があり、作った人の「完璧を期した」感じはよ〜く伝わってきますが、如何せん素人にはわかりづらく、そこにはお客様の気持ちや知識レベル、ニーズは一切考えられていないように感じ、私は正直「この商品は売れないな」と思いました。お客様不在のマーケティングとはこのことです。

 iPhoneなどは、いちいち説明書を読まなくても、何となく自然に使いこなせるようになります。ここがヒットする商品とダメな商品の違いです。お客様の使用する立場や消費場面をしっかり想定し、モノ作りをしているのです。

 キャラクター商品でも同様のことが言えます。キャラクターがヒットすると、何でもかんでもそのキャラクターをデザインに付けて売ろうとするのも、どうかと思います。キャラクターや人気タレントの起用は、その商品を「より売ろうとするためのもの」と理解した方がいいでしょう。そのキャラクターの性格や世界観が、商品が持つ価値にしっかりつながっていて、意味や必然性があることが重要です。そこがしっかり考えられている商品とそうでない商品は、お客様の支持に大きな差が出てしまうでしょう。

 この項では、オリジナルは価値(勝ち)という話をしましたが、最後にオリジナル商品のメリットを以下にまとめてみます。

〈オリジナル商品のメリット〉
・独自の価値がある
・簡単にマネできない
・価格主導権を握れる
・リピート(継続)購入される
・ブランド化につながる

 勝ち!

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo

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