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立命館アジア太平洋大学と武蔵野大学に新設されたサステナブル分野の学部・学科はどんな人材を育成し輩出できるのか?

2022.11.27

SDGsの目標達成に世界中が取り組み、サステナブルな社会が目指されている。人々の意識が高まるいま、サステナビリティに関する学びの場も広がってきている。例えば、2023年4月からサステナビリティ分野の大学の学部・学科も開設される。今回は、立命館アジア太平洋大学と武蔵野大学の新学部と学科を紹介する。

立命館アジア太平洋大学「サステイナビリティ観光学部」新設

大分県別府市にある私立大学の「立命館アジア太平洋大学(APU)」は、立命館大学を運営する学校法人立命館により2000年に創設された男女共学の4年制大学だ。

留学生と日本人が半数ずつ在籍する国際色豊かな環境が特徴で、アジア太平洋学部とアジア太平洋マネジメント学部の2学部に加え、2023年4月には新たに「サステイナビリティ観光学部」を開設する。

サステナビリティとツーリズムを学べる日本唯一の学部であり、持続可能な社会に必要な4つの要素「環境・社会・経済・文化」を複合的に学ぶことができるという。4月入学と9月入学があり、募集人数は年間350名。

開設背景や学べる内容、学生の卒業後の進路について副学長でありサステイナビリティ観光学部長就任予定の李 燕(リ・エン)氏に話を聞いた。

サステイナビリティ観光学部長(予定)李 燕(リ・エン)氏

――「サステイナビリティ観光学部」開設において、観光学とサステナビリティを結びつけた背景を教えてください。

李氏 グローバル化が進み、国境を越えたつながりがより一層強くなっていく国際社会において、資源の枯渇、環境汚染、気候変動といった環境問題に加えて、グローバリゼーションによる地域文化の消滅、格差社会などといった地球規模で抱える課題に取り組んでいくことが、今後ますます重要だと考えています。

APUは、持続可能な社会、経済、環境、文化に密接に関わる「観光」に注目して、サステイナビリティ学と観光学の両面を学び、持続可能な社会の実現、現代の地球規模の課題を解決できる人材を育成していくことが不可欠であり、APUの使命だと考えました。

サステイナビリティ観光学部は、全世界的な課題である持続可能な社会を実現するため、サステイナビリティ学と観光学の融合で、文系アプローチにより、地域の自然・歴史・人文資源の開発・保護を手段にして持続可能な社会を達成していくという学問です。

観光(Tourism)や資源マネージメントによってサステイナブルな地域をつくって、その地域が増えていくことで、持続可能な社会を実現していくという考え方です。

これからの観光は、光るものを見に行くというsightseeingでなく、人やモノ、情報が動くモビリティ社会を支える成長産業です。「サステイナビリティ」と密接に関係しています。また、観光というのは地域経済や地域社会との結びつきが非常に強く、つまり、観光を持続させていくことは、地域全体をサステイナブルにする、つまり、持続可能な地域社会を作っていくことにつながります。

また、アメリカのスタンフォード大学がこの9月に70年ぶりにサステイナビリティ学を学ぶ学部を開設しました。気候変動などに理系アプローチする学部と聞いていますが、今後もこの動きは世界で加速していくでしょう。しかし、日本にはこの分野をしっかりと学べる大学はほとんどありません。

――本学部を卒業した学生は、どのような分野での活躍が期待できますか?

李氏 サステイナビリティ観光学部では、理論と実践の両アプローチで学びます。学生が卒業後に身につけている知識と行動する力は、観光業のみならず、あらゆる業界で、特にサステイナビリティにチャレンジしている企業への就職や、国際機関などにおいて強みになると考えています。ほとんどの大企業はSDGsのゴール達成に取り組んでおり、この分野への投資を促すESG部門も新設されていますので、企業の中でそういった分野を推進していける役割を果たしながら活躍していくと思います。

学生が将来目指すキャリアパスによってカスタマイズしながら自分自身で学びを選ぶことができる9つある専門科目群の中に、「地域づくり」という分野があります。そこでの学びは官公庁、自治体などの行政でも活かされます。専門的な地域づくりを、13カ国・地域からきた多国籍な教授陣のもとで学びますので、卒業後は世界でも活躍してくれることを期待しています。

最後に、これはAPU全体の特徴でもありますが、現在日本人を含む103カ国・地域の学生がともにキャンパスで学んでいます。一緒に寮で生活することから始まり、授業の中では多様な文化背景を持つ仲間と議論し、混ざり合います。課外活動も多国籍なグループで行うことを促進しています。

こうした仕組みの中で学ぶ学生たちは、異なる考えや習慣に対して寛容になることを覚え、その様な人たちと一緒に協力し、何かを成し遂げる力を養います。つまり、4年間で国際通用性ある人へと成長していくのです。国内学生は、海外で、国際学生は日本国内で就職・起業・進学したりします。多種多様なキャリアを支援しているのもAPUの強みでしょう。

――現在のツーリズムにおけるサステナビリティの課題において、最も大きいと思われるものを教えてください。

李氏 コロナ前の最も大きい課題は、オーバーツーリズムによる環境資源の破壊や、その消費行動により引き起こされる地域格差や社会問題だったと思います。そしてコロナ禍では、世界中の観光産業が打撃を受け、パンデミックに対してレジリエンスが低いことが分かりました。

これからの観光は、世界の普遍的かつ成長産業であると同時に「サステイナビリティ」と切っても切れない関係です。観光地の魅力を持続させるためには、その地域にある文化や自然を保護して持続させていかなければいけません。乱開発や観光公害によって自然や文化が破壊されてしまったら、その観光地は衰退してしまいます、観光を持続させていくことは、地域全体をサステイナブルにしていくということでもあるのです。

――「サステイナビリティ観光学部」がその課題解決の一助となるとするならば、卒業生はどのような行動が求められますか?

李氏 私たちは、自分の頭で考えて行動し、環境資源の有効利用と持続可能な観光産業で活躍できる卒業生を輩出していきたいと思っています。研究・教育・人材育成を通じて、持続可能な社会づくりに取り組める人材へと成長した卒業生、つまりは「APUで学んだ人が世界を変える」というビジョンを卒業生が体現してくれることで、APUが国際社会の課題解決の一助になっていくと信じています。

武蔵野大学 工学部「サステナビリティ学科」新設

東京都にある私立「武蔵野大学」の工学部は、環境システム学科、数理工学科、建築デザイン学科の3学科で構成されていたが、2023年4月より環境システム学科を発展させて、国内初という工学部「サステナビリティ学科」を有明キャンパス(江東区)に新設する。

「ソーシャルデザインコース」と「環境エンジニアリングコース」の2つのコースを通して人間社会と地球環境のサステナビリティを実現する力や、企業や行政、NPO等で推進する力を身に付けた人材を養成する。学科全体の収容定員は280人、入学定員70人となる。

■「ソーシャルデザインコース」

多様な人との協働によってサステナビリティを推進する仕組みや事業をデザインし実行する力を学ぶ。

■「環境エンジニアリングコース」

環境調査や分析・設計など工学的な方法により環境問題の解決策を検討し提案する力を修得する。

現工学部環境システム学科教授で、2023年4月から工学部サステナビリティ学科長就任予定の白井信雄氏に話を聞いた。

工学部 サステナビリティ学科長(就任予定)白井 信雄氏

――「ソーシャルデザインコース」の開設背景と学べる内容について教えてください。

白井氏 「サステナビリティを推進する」ためには、環境・経済・社会の各々の問題が複雑に絡み合っていることを解きほぐし、あるべき持続可能な社会の将来像を構想・共有し、その実現に向けたアクションを計画・実践することが必要となります。

例えば、気候変動危機が顕在化している今日、2050年に脱炭素を実現しようと急ピッチで対策が進められています。この脱炭素に向けた技術革新と投資を経済成長につなげる「グリーン成長」は国際的な合言葉になってきています。その一方で、中小企業や地域住民、地方の農山漁村等が置いてけぼりになったり、メガソーラー等の開発による自然破壊やコミュニティの分断等の問題の発生が懸念されます。環境への取組が経済・社会の課題解決にもつながるように、あるべき目標や方針を明確にして、それを実現していかなければなりません。

また、第三者である専門家が解決策を立案するのではなく、現場の関係者が主体的に共創(コデザイン)と協働(コプロダクション)に取り組んでいくように、場や仕組みをつくることが重要です。関係主体に持続可能な発展の実践を伝えるコミュニケーション、主体的な学びを促す教育を進めることも必要となります。

しかし今日の日本では、あるべき持続可能な社会の将来像の構想・共有、アクションの共創・協働をマネジメント、あるいはコーディネイトする人材が不足しています。

そのため「ソーシャルデザインコース」では、持続可能な社会を考える際の規範やシステム思考等の問題の捉え方、農的暮らしやコミュニティを再生する手法、地域行政施策や企業経営のマネジメント、人の教育・育成、対話やファシリテーション等の実践論をしっかりと学びます。そして、環境という領域を超えた多様な要素に目を向けて、サステナビリティを推進するための「現場の解」を求められる人材を育成していきます。

――「環境エンジニアリングコース」の開設背景と学べる内容について教えてください。

白井氏 環境問題のうち発生源が特定され、問題の因果関係がわかりやすい問題の解決は進んできました。一方で、複雑な問題を解明するためには、環境の状態や環境負荷の観測、環境影響の評価、工学的な分析に基づいた提案が必要になります。

この際、環境やそれ以外のマルチプルリスク(多様なリスク)を評価対象としたり、原材料の採取から生産・消費・廃棄といったライフサイクル全体の影響評価とマネジメントなどが必要になっています。つまり、断片的な現象解明ではなく、より統合的な環境影響評価と環境マネジメントが求められていると言えます。したがって、今後この分野の人材のニーズはますます高まると考えられます。

また、自然の再生・活用や建築物・都市空間の整備等も、環境問題の根本解決のための重要なテーマです。人と自然がWin-Winの関係、自然の持つ力を活用して自然の再生と気候変動等の課題を解決するNbS(Nature based Solutions)という方法も重要になっています。森林保全や都市の緑地整備による多面的な生態系サービスの向上等において自然の調査・分析・設計が不可欠となります。

建築物や都市空間といった人工的ストックは、環境負荷の発生量を左右します。ZEH(net Zero Energy House)やZEB(Net Zero Energy Building)による気候変動の緩和(温室効果ガスの排出削減)の設計・推進が必要となります。また、緩和策だけでは避けられない気候変動の影響に対する適応策も必要になっており、気候変動等の災害の影響に備えるレジリエンスがある都市空間を整備していかないといけません。

「環境エンジニアリングコース」では、環境の保全と活用を基盤とする持続可能な社会を実現していくうえで、自然科学と課題解決の実践をつなぎ、より統合的な分析、評価、設計を行うことができる人材を育成していきます。

――本学科を卒業した学生は、どのような分野での活躍が期待できますか?

白井氏 本学科は、工学部に属していますが文理融合のカリキュラムとなっており、入学時も文系科目だけでも受験することができます。そのため、就職分野は多岐にわたり、またサステナビリティというテーマゆえに、時代とともに変化していく様々な職業・職種で活躍できると考えます。

具体的には、これまでの環境システム学科の環境分野を中心とした進路を拡張する形で、企業(企業のサステナビリティ推進担当・責任者、研究職)、公務員(サステナビリティ推進に携わる国や自治体の公務員)、エンジニア(脱炭素や資源循環などを推進するエンジニア)、大学院進学(本学大学院環境学研究科環境マネジメント専攻、他大学大学院環境系研究科[自然科学系・社会科学系・人文科学系])などが挙げられます。

また、働き方が多様化する時代において、半○半X(※)、一人多役、パラレルキャリア、ソーシャルベンチャー等といった多種多様なワークスタイルやキャリアパスも想定しています。社会を変えるとともに、自分を変える力を持ち、安定雇用の保障のない変化の時代に持続可能な社会の実現という理想を持ち続け、力強く仕事をしていける人材を輩出できる学科を目指して取り組んでいきます。

※ 「半○半X」とは、本業と他の仕事を組み合わせた働き方。例えば「半農半X」という、農業を営みながら自分のやりたいことに従事する働き方及びライフスタイルがすでに普及している。

どちらもグローバルを視野に入れ、サステナビリティを我が国で強力に推進する人材輩出が期待できる学部・学科であるようだ。時代が求める学部・学科であるのに加えて、新しい学びの場が生まれることに学生はもちろん、ビジネスパーソンにとっても注目に値すると言えそうだ。

取材・文/石原亜香利


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