セルフレジや無人レジは以前から開発されていたが、コロナ禍でテクノロジーを活用した無人コンビニを始めとした無人販売店が増加しており、現在ではいよいよ定着しつつある。無人販売店といえば餃子やラーメンなどが目立っているが、他にもホルモンを集めた無人販売店や無人販売店を検索できるアプリもある。無人販売店の“今”を探る。
無人レジ決済システムの無人コンビニが増加中
国内では、無人コンビニが全国にぞくぞくと増えている。その「無人」を成り立たせるための要となるのが無人レジの仕組みだ。
世界的に注目されたアマゾンの無人店舗「Amazon Go」を皮切りに、その自動決済技術「Just Walk Out」の認知が広がった。天井に設置されたカメラや商品棚に設置されたセンサーによって店内の利用者の行動が追跡され、自分のカバンなどに入れたまま店を出るとアプリを通して決済でき、レジを通ることなく退店できる。これにはAI技術を活用している。
Just Walk Outは2022年2月にワシントンD.C.にオープンしたホールフーズ・マーケットの店舗に導入されるなど、さらなる広がりを見せている。
■無人決済システム「TOUCH TO GO」
日本でも進められている。例えばファミリーマートの無人コンビニ店舗に導入されている株式会社TOUCH TO GOによる無人決済システム「TOUCH TO GO」は、天井に設置したセンサーカメラと、商品棚に設置したセンサーによる重量計のデータを組み合わせ、誰が何を持っているのかをAIが判断する仕組み。利用客は出口のディスプレイで購入商品を確認して決済する。
TOUCH TO GOには、大きく分けて3種類ある。小売店舗向けの「TTG-SENSE」と小売店の中でも極小スペースの店向けの「TTG-SENSE MICRO/MICRO W」、飲食店やサービス向けのセルフオーダー端末「TTG-MONSTAR」だ。
2022年11月現在、TTG-SENSEは9店舗、TTG-SENSE MICRO/MICRO Wは13店舗、TTG-MONSTARは35店舗の計47店舗にて稼働している。
無人店舗に分類されるTTG-SENSEとTTG-SENSE MICRO/MICRO Wの主な導入店舗は、TOUCH TO GO高輪ゲートウェイ駅、ファミマ!!サピアタワー/S店、ファミリーマート岩槻駅店、トモニー中井駅店、ANA FESTA GO(羽田B1店、中部ゲート店)、紀ノ国屋目白店、ファミリーマート川越西郵便局/S店、東急ストア たまプラーザテラス従業員売店などがある。
直近では、2022年11月28日に、兵庫県の伊丹市役所内にTTG-SENSEが導入された「ファミリーマート伊丹市役所/S店」オープンする。
ところで、棚設置のセンサーにより「どんな商品を取ったのか?」を判断しているというが、重量に誤差は出ないのだろうか。同社の営業担当者は次のように回答する。
「弁当など、人の手で作られる商品に関する重量誤差や、お客による商品の取り方による重量変化の誤差などを加味し、一定の許容値をもって点数を把握しています」
また無人と聞くと万引きの懸念があるが、どのような対策が施されているのだろうか?
「基本的には、商品をお持ちの場合はお会計が完了しないと出口のゲートが開かない仕組みとなっており、万引きをできない仕様にしています」
TOUCH TO GOは今後も、導入が進んでいくという。
「地方では人手不足がより深刻で、店舗の運営を継続することができず、閉店を余儀なくされてしまう場所が増えてくることが予想されます。そのような中で、弊社はこれまで首都圏を中心にサービスのご提供行ってきましたが、今年度より全国展開を開始しています。
弊社システムをご活用いただくことで人手を減らし、無理のない店舗運営が実現できるようにサービスを提供していきたいと考えています。それが結果的に、消費者のみなさまが“買いたいときにいつもの場所で買える”今の生活環境の維持につながると考えています」
新ジャンルの無人販売店 「ホルモンショップ naizoo」
無人販売の専門店も軒並み増えている。冷凍餃子の無人販売店はおなじみとなったが、新ジャンルも生まれている。2021年5月にオープンした東京都渋谷区恵比寿にある、黒毛和牛専門卸問屋がプロデュースする無人販売所「ホルモンショップ naizoo(ナイゾー)」は、黒毛和牛精肉、ホルモン料理、瞬間冷凍ホルモン、もつ鍋などを取り扱う店だ。
女性をターゲットとしているだけあって、店内はモダンでオシャレ。ホルモンといってもよくあるパック包装ではなく、スタイリッシュなデザインの紙箱入りで、楽しみながら買い物できる。
調理済みの商品もある。管理栄養士監修・元星付きシェフが手作りしているというこだわりぶり。例えば「トリッパと香味野菜の8時間トマト煮込み」や「ハートとマルチョウとソイミートの極上生ハンバーグ」、「マルチョウとメイクイーンのグラナパダーノチーズ生コロッケ」など、ホルモンがふんだんに使われている。
そもそもなぜ無人販売形態にしたのか? 運営元のニュートファンダス株式会社の代表、蒲池章一郎氏は次のように述べる。
「コロナ禍における非接触による販売形態であること、また一人で運営する前提で開業しておりますので、雇用の必要がない販売形態として無人販売となりました」
来店客は、購入したい商品を手に取ったら、店内設置のiPadにて該当商品を選び、セルフで会計する。支払い方法は、現金盗難防止の為、クレジットカード、交通系ICカード、QR決済のみとなっている。
ウェブカメラを複数設置し、スタッフは携帯などで確認できる仕組み。録画もできるので防犯にも利用できる。スタッフが不定期に出入りすることもあるという。
開店から1年半が経過しようとしているが、現在、どんな人にどんな商品が人気なのだろうか。
「若い主婦層に人気です。瞬間冷凍したホルモンや、今の時期はもつ鍋セットがよく売れます。また、和牛の焼肉セットなどの精肉もよく売れています」
今後の展望について尋ねたところ、「一部冷凍庫の間貸し(スペース貸し)なども行っており、お肉に限らず、スーパーには売っていないようなこだわり商品を置いていければと思っています」と蒲池氏。
スーパーではお目にかかれない肉類や料理が、無人でいつでも手軽に買えるというのは、珍しさと気軽さとが同居していることからも、魅力的といえるのかもしれない。
食品無人販売所・食品自販機を探せるアプリ
飲食店でテイクアウトを取り扱っている店を検索できるアプリ「モグモグテイクアウト」では、2022年1月より食品自動販売機・無人販売店の掲載を開始した。 今や無人販売店は、一つの店のジャンルとなっているようだ。
モグモグテイクアウト運営事務局の海老澤瑞希氏によると、現在、食品無人販売所・食品自販機は27件登録されているという。
なぜ食品無人販売所・食品自販機を掲載したのか。
「昨今、急増している食品自販機や無人販売店ですが、どこで何を販売しているのかなど、利用者にとっては情報が探しにくい環境にあるかと考え、利用者へそうした情報をお届けしたいという想いがありました。また、無人販売店の情報発信の手段も少ないのではないかと考え、広報の場を増やしたいとお考えの運営企業様を支援し、無人販売の普及に貢献したいと考えております」
実際に検索してみると、茨城に複数の生餃子無人販売店が見つかった。テイクアウト同様にお持ち帰りできる店舗としての利用が広がりそうだ。
今後の展望について、海老澤氏は次のように述べる。
「今後は無人販売所や自販機のオーナー様のサポートになる、現状の情報掲載だけではない機能の追加を考えています。そうすることでより多くのオーナー様にモグモグテイクアウトをご活用いただき、さらに一般のお客様には、より多くの情報が入手でき利用価値の高いサービスと感じていただけるよう尽力してまいります」
無人コンビニはレジでの会計が不要の利便性が追求され、各地の無人販売店はローカルなそこだけの魅力がある。アプリ掲載件数が今後増えていくと、より無人販売店の普及に拍車がかかりそうだ。
取材・文/石原亜香利