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注目の日系監督による話題作!夏目漱石に影響を与えた画家をカンバーバッチが演じる「ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ」

2022.11.22

■連載/Londonトレンド通信

(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

まず監督長編デビュー作『Black Pond』(2011)からプレーバック

デビュー作にはその人の萌芽がつまっている。12月1日公開のウィル・シャープ監督長編3作目『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』から、まず浮かんだのがシャープ監督長編デビュー作『Black Pond』(2011)だった。

『Black Pond』はイギリスで高評価だったが、残念ながら日本では未公開だ。可笑しくて哀しく、エキセントリックで詩的、ダークなコメディだがロマンチックでもある。今回の新作でも認められるシャープ監督の特徴が、新風と感じられた当時から始めたい。

『Black Pond』は、トム・キングズレーと共同監督・脚本の長編デビュー作だった。俳優でもあるシャープは、主要登場人物の1人として出演もしている。

『Black Pond』 右から2人目がウィル・シャープ

2011年10月2日、レインダンス映画祭での『Black Pond』ワールド・プレミアはほぼ満席の盛況だった。

それほど注目された新人監督だった、わけではなく、注目を集めたのは主演のクリス・ランガムだ。本人は役のリサーチのためという、児童のわいせつ映像ダウンロードで2007年に有罪となって以来の登場が、この新人監督作だった。

だが、上映を終え、キャスト、スタッフが登壇した際には、コメディ俳優として衰えていないことを証明したランガムに、負けずとも劣らない拍手、歓声が、新人監督たちに贈られた。そこからは名実ともに大注目の新人となった。

25歳の若き新人監督たちによるデビュー作、しかも約2万5千ポンド(当時のレートで約3百万円)という低予算映画だったこの作品は、その年度の英アカデミー賞新人賞にノミネートされたほどの秀作だった。

妻としっくりいかない初老男性(ランガム)が、犬と散歩するブラック・ポンドで出会う男性から、ストーリーは展開していく。パートナーを失ったショックから脱することのできない男性は、どこか風変わりだ。この男性を食事に招いたことから、一家はトラブルに見舞われる。親とは別に住んでいる2人の娘と、そのルームメイトまで巻き込んだ騒動になる。

姉妹両方に恋しているルームメイトのティム・タナカを演じているのがシャープだ。日本人の母と、イギリス人の父を持つシャープは、ロンドンで生まれ東京で8歳まで育ったという。日本語も堪能なうえ、日本的な顔立ちで、俳優としては日本人役もこなす。

シャープとキングズレーは、この後、共同でもう1本長編映画を撮り、それからは別々に活躍している。シャープは、テレビのコメディドラマでヒットを飛ばしてきた。

夏目漱石『吾輩は猫である』に登場する絵葉書の原画の作者だった

そして、長編デビュー作に回帰したような今回の『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』だ。

(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

こちらにも、ちょっと風変わりな、妻を亡くしたショックから脱することのできなくなる男性が登場する。主人公であるルイス・ウェインだ。

ウェインとその家族が主な登場人物なのもデビュー作と同じだが、こちらは実在の人物で、史実に基づいたストーリーになっている。父親が亡くなった後、母親と5人の姉妹が残された一家で唯1人の男性として働く。生涯誰も結婚することがなかった姉妹だ。それぞれに個性的な姉妹の中でも、アンドレア・ライズボローがいい味を出している。

(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

ルイス・ウェインは、1800年代後期から1900年代にかけて、新聞、雑誌、児童書などに描く人気挿絵画家だった。擬人化されたネコのイラストで知られる。夏目漱石の『吾輩は猫である』に登場する絵葉書の原画も、ウェインによるものだ。

もちろん単なる成功談ではない。人気画家だったが、それなのに、という部分が悲喜劇として描かれる。

(C)2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

売れっ子画家であったのに、お金のことには無頓着で不利な契約を結んでしまい、姉妹と母を養うのにも苦しんだ。

残された写真で見る限り、ウェインは口ひげの似合う紳士だ。だが、そのひげは口唇裂を隠すためでもあったようだ。映画中では、わざわざひげをそり落とした顔をエミリーに見せ、「ハンサムだわ」と返される場面がある。その後、2人は結婚するが、エミリーは妹の家庭教師で、ウェインより10歳年上だったことが、当時としてはスキャンダルだった。

ウェインを演じるベネディクト・カンバーバッチ、エミリー役クレア・フォイほか、トビー・ジョーンズなどイギリスの名優が悲喜劇を盛り上げる。

オーストラリアのミュージシャン、ニック・ケイブがH・G・ウェルズ役で登場したり、ニュージーランドの監督でコメディアンでもあるタイカ・ワイティティがちょっと顔を出すのも面白い。

シャープ監督は、作品中に日本に関するギャグをよく入れる。自身が俳優として出演もする時には、日本から来た人として、イギリスとのカルチャー・ギャップで笑わせる。

今回は、ウェインがネコと日本人を同列に語る場面がある。無茶苦茶だ。もとから変人めいたウェインだが、妻を亡くし、愛猫ピーターも亡くした後、度が増していき、後年には心の病で病院に送られる。

心の病も、シャープ監督作ではよく取り上げられる。続編が作られる人気だったTVコメディドラマ『flowers』でも、ロープを隠し持っている鬱気味のお父さんが主人公だった。

シャープ監督は双極Ⅱ型障害であることを公表している。自身が日系であること、また、心の病を持つことが、作品の個性ともつながっているようだ。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』
12月1日(木)TOHO シネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ

文/山口ゆかり ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。
http://eigauk.com


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