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商品開発担当が知っておくべきアイデアは「着眼」「調査」「体感」の3つの脚で自立するという鉄則

2022.11.30

自分の考えた商品や事業が世に出て、お金を出して買ってもらえる。商品開発の仕事には多くのやりがいがあると思いますが、せっかく一生懸命考えても、一向に売れない商品やサービスも数限りなくあります。そんな時の企画担当者は、ホントにつらいものです。

お菓子メーカーの「江崎グリコ株式会社」で21年、そして「株式会社バンダイ」で16年、新商品企画及び新規事業開発の仕事に携わってきた山崎進一氏は「商品開発、企画開発」には実はコツみたいなものがあって、そのポイントをうまく押さえられているかどうかが、成功するかしないかに大きく影響してくるのではと、だんだんとシンプルに考えられるようになってきたといいます。

たくさんの商品を世に送り出し、時にはヒットに恵まれ、時には鳴かず飛ばずの苦汁を舐め、またそれぞれの会社の先輩や仲間からとっても多くのことを学んだ山崎氏の著書開発マンの上司は消費者である!商品開発のツボ30+αから若いマーケッター、商品企画担当者に伝えたい、企画開発のコツを一部抜粋・再構成してお届けします。

開発マンの上司は消費者である!
商品開発のツボ30+α
山崎進一
ご購入はこちら

商品開発のツボ(8)「アイデアは三脚で自立する」

 ここでは、たくさん出したアイデアをどう選択してブラッシュアップし、売れる企画として成長させるかという話をします。

 アイデア会議の4原則で述べた通り、アイデアはまず数多く出すことが大切です。質より量なのですが、最終的にはそんなに多くの商品を発売することはできませんので、1つか2つに絞り込んで商品化していくことになります。

 ここで「アイデアは三脚で自立する」という考え方で、まだ原石であるアイデアを輝く宝石に仕上げていきたいと思います。

 三脚というのは写真撮影等で使う三脚のことですが、3本の脚があるので、非常に安定して自立します。例えば一脚では何かの支えがないと360度様々な方向に倒れてしまいます。二脚も前後に倒れてしまい不安定です。三脚揃えば、ほうっておいても自立するところから、この考え方で、私はそのアイデアが本物であるかどうか、またお客様にヒットするかどうか、見極めるようにしています。わかりやすく言い換えると、この三脚とは、「着眼」「調査」「体感」だと思っています。

 まず最初の一脚は「着眼」です。自分でアイデアを思いついて、「これは売れる」「これを商品にしたらヒットするに違いない」と思えるかどうかです。これがないと全てが始まらないので、「着眼」は言ってみれば「仮説」とも言えます。

「仮説」ができれば、その次は「検証」です。具体的には「調査」で「仮説」の裏付けをしなければなりません。これは会社の中では特に重要です。個人事業であればこの作業を無視しての商品化も可能かもしれませんが、自分一人で仕事をしている訳ではなく、会社で仕事をし、会社のお金で商品化する訳ですから、説得力のあるデータがないと人も会社もまず動きません。大規模なマスの調査をするとか、アンケートを集計することで、「消費者はこのように評価しています」という客観的な事実をデータで示す。それによって説得性が増す訳ですね。「調査は仮説の検証」なのです。これが二脚目です。ここまではしっかり行っている企業が多いと思います。しかし実は一番大切なのは、「体感・実感」することではないかな、と私自身は思っています。ここはどちらかというと右脳、感性に近い部分です。自分自身が感じとることが大切なのです。

 一般的な調査はあくまで限られたルールや枠の中で、お客様に意見を聞いているだけですので、本当に売れるかどうかとなると、またちょっと違うのではないかという感覚を皆さんも多少なりともお持ちなのではないでしょうか? 例えばその商品が、おもちゃとか家電製品であれば、実際に遊ばせてみるとか使ってもらうとかしてみる、また食品であれば実際に食べてもらうという行動の中で、お客様がどういう反応をしたのかという部分を必ず押さえておかないといけません。言ってみれば左脳と右脳でバランスよく検証していく、という工程になるのですが、自分の着眼を調査データで左脳検証して、そして最終的にはターゲットに実際に体感してもらい右脳確信を持つ、この3つが揃ってこそ、初めて三脚の自立をするのではないかな、と思っています。

 皆さんは、実際に開発した商品をこのように確認、チェックしていますでしょうか?

 着眼だけで突っ走ってしまったり、大量の調査データをとるだけですっかり安心して、お客様の実際の行動確認を怠ったりするケースも多いのではないでしょうか?

 私が開発した商品の事例を2つお話しします。

 アーモンドクラッシュポッキーは、開発研究段階で、まさしくこの「三脚で自立する」を実感した商品でした。もちろん、「この商品は売れそうだ」「いける!」という思いが自分にはあり、仮説を持っていました。また嗜好調査でも評価は高く、問題がなさそうでした。決め手になったのは、こんなエピソードでした。当時試作された商品は、その残りを研究所のテーブルに置き、休憩時に自由に食べることができたのですが、アーモンドクラッシュポッキーを置くと、またたく間になくなってしまうのです。まわりにいた人がもりもり食べてしまうんですね(笑)それが毎回毎回試作の度に続いていましたので、絶対に売れるという確信に変わっていきました。

 さらに、私の家では小学生の娘がその試作品を食べて、とても美味しかったらしく、ふとした時「パパ、またあのお菓子が食べたい!」と言ったのです。私は嬉しくてヤル気が出てきました。

「よし、絶対この商品を発売してやる!」と心に誓った瞬間でした。

 もう1つの例。バンダイのおもちゃ部門にいた時に「ZZ(ジージー)トレイン」という商品を開発しました。この商品のコンセプトは「世界最小の鉄道模型」です。

 鉄道模型というものは、線路の幅によって縮尺サイズが決められていて、電車の大きさが変わるのです。HOゲージというのは16.5ミリ幅の線路で、これが世界で最も普及しているフォーマットです。また日本では家が狭いとか土地がないということからか、日本人が細かいのが好きという理由からか、小さめのNゲージという、9ミリ幅のものが最も普及しています。更に当時はドイツの会社の6.5ミリ幅のZゲージが世界最小とされていました。Zの意味はA、B、C……の最後ですからこれ以上小さいのはないぜ! ということのようです。ドイツ人の性格でしょうか、小さくてとても精密で、たくさんのラインナップがあり、日本人でもZゲージが好きで専門に集めている人も大勢いました。

 そんな市場環境の中で、私はバンダイの技術でもっと小さい世界最小サイズを作ってみたいと思いました。ギネスに載るような小ささです。そして作ったのが、その名も「ZZ(ジージー)トレイン」。この線路幅は何と、4.8ミリ。究極の小ささの象徴として、Zゲージよりも小さいので、Zを2つ並べてZZとし、しかもジージー走るので、「ZZ(ジージー)トレイン」と名付けたのでした。

 鉄道評論家のお墨付きをもらい、しかも小学館の『ラピタ』という趣味雑誌のおまけにも採用してもらう、など様々な仕掛けをして売り出しました。

 ここで先ほどの三脚の話に戻りますが、この商品はコンセプト的にも優れていて、自分も担当者も惚れ込んでおり、これは絶対売れると一生懸命頑張って仕事をしました。簡単な調査もしました。「このような小さなサイズ(ゲージ)の鉄道模型があったら揃えますか? 買いたいですか?」と聞くと、答えは「絶対に買う」とか「集めちゃう」とかいう感じでそれなりに良好な結果でした。

 いざ、発売!

 デビューではそれなりに売れたのですが、私たちが考えるほど爆発的に売れるところまではいかなかったのです。残念ながら……。

 それはなぜだったのか? とよくよく考えたら、先ほどの「体感・実感」の部分がちょっと不足していたかな、と思います。私としては世界最小の鉄道模型を作りたいというコンセプトに対する思いの方が強く、こだわりすぎてしまったのです。本当に鉄道模型が好きな人にもっと見てもらったり、実際に遊んでもらったりする必要がありました。その中から、本音の言葉を聞いて、体感しておくべきでした。やっぱりNゲージの方がいいよね、みたいな言葉が自分の中のどこかに残っていれば、冷静になれたかなとも思う次第です。

 このような成功、失敗経験から、「着眼」「調査」「体感」の3つの柱の確認チェックを進めていくことが、商品開発で大切なのだなと思うようになりました。いくら調査データが良くても、ターゲットとの接点を確認する作業を忘れてはいけません。

 必ず、アイデアは三脚で自立すると認識してください。

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<著者プロフィール>
山崎進一
昭和57年、明治大学商学部卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。「アーモンドクラッシュポッキー」「お土産ジャイアントシリーズ」「タイムスリップグリコ」等のヒット商品を開発。平成
15年、株式会社バンダイに転職。「ガンダムカフェ」の立ち上げ、「ベルばらの本格化粧品」の発売やキャラクター菓子の売上に貢献。令和元年、定年退職し、経営コンサルティング会社【企
画のびっくり箱 Y-BOX】を設立。またプライベートでは趣味のアウトドアの知識を活かして「おもしろ理科クラブ」を主宰。
また「ビートルズ研究家」としても有名。持論は、「仕事は楽しく、遊びは真剣に!」
Y-BOXホームページ https://www.y-box.tokyo


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