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寿司、中華、新ジャンルの立ち食いグルメが増えている理由

2022.11.22

立ち食いといえば、従来はそばやうどんが定番だが、近年は立ち食いステーキをはじめ、寿司や焼肉、丼ものなどジャンルの幅が広がっている。“立ち食いグルメ”が増えている背景とは? 専門家のもと探ってみた。

多様化する立ち食いのジャンルの一つ「立ち食い寿司」

そば・うどんなどの麺類以外の立ち食い業態の店舗は、今やステーキ、うな丼や寿司、イタリアン、スイーツなど“なんでもアリ”になっている。そんな中、立ち食いスタイルで寿司を提供する店として、続々と店舗数を伸ばしているのが、北海道札幌市に本社を持つ株式会社はなまるの「立食い寿司 根室花まる」だ。東京に全7店舗あり、銀座や丸の内、八重洲、新橋などオフィス街が多い。

「立食い寿司 根室花まる グランデュオ蒲田店」

全店舗の客層は男女問わず30歳~40歳代が中心という。まさに働き盛りのビジネスパーソンの利用が多いようだ。

立食い寿司 根室花まる 提供メニューイメージ

同社は回転寿司店をメインに、カウンターのある“回らない”寿司店も運営してきた。そこへ来て2016年の銀座店を皮切りに立ち食いスタイルを選択。その背景とは? 同社の開発部長 藤谷一樹氏は次のように述べる。

「もともと回転寿司を中心に展開していましたが、ありがたいことに毎日のように行列ができるようになり、多くのお客様をお待たせしている状況は良い状態とは言えないため、立食いをスタートさせました」

「立食い寿司 根室花まる 東京ミッドタウン八重洲店」

「寿司の立ち食い」の魅力については、「提供時間が早いこと、握りスタッフとの会話、食事として寿司を楽しみたいときにも、小腹がすいたので少しつまみたいときにも最適」の3つだという。

お客からも「気楽で良い」「他社は2貫で提供することが多いが、立食い寿司 根室花まるは1貫の提供なので多くの種類を楽しめる」といった声があがっているそうだ。

今後の展望については、「当社は、根室海峡を中心に北海道の魚をそろえています。冬には日本一と言われる北海道の野付産生ほたても解禁になります。今後は、より一層、漁師さんや地元市場の方々と連携をとり、多くのお客様に楽しんでいただけるようにしていきたいです」と述べた。

専門家が分析!立ち食いグルメのトレンド

ところで、昨今、立ち食いグルメの幅が広がっていることには、どのような背景があるのだろうか。食のトレンドに詳しい、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員、有木真理氏に尋ねた。

【取材協力】

有木 真理氏
リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300回以上。ジャンルは立ち飲み~高級店まで多岐にわたる。地方の営業部長を兼任しているため全国の食に詳しい。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。食を通じて「人」と「事」を繋げるイベントオーガナイザーも務める。自らが「トレンドウォッチャー」として情報発信を行う。
https://www.hotpepper.jp/ggs/

「最近は物価高に加え、飲食業界における人件費増など、飲食店側のコストが経営を圧迫する状況が続いています。飲食店にとって立ち食いは、サービスを簡略化することで人件費を抑え、さらに回転率を上げるというメリットがあります。

これまで質の高い料理は、質の高いサービスを含んだ料金で提供されることが多かったところ、立ち食い業態にすることでサービスを簡略化する代わりに、リーズナブルな料金に設定し、さらに回転率を上げることで、結果的により大きな利益を生むことが期待できると考えられます。

そのため、ステーキやうなぎ、寿司など、もともと高価格帯の業態でサービスの簡略化・立ち食い化が進んでいることが多い傾向にあります」

立ち食いグルメの利用客のメリット

立ち食いグルメを利用する客については、どのようなメリットが見込めるのだろうか。

「利用客にとっては、質の高い料理を比較的手ごろに食べられるというメリットがあります。ホットペッパーグルメ外食総研が実施した2019年の調査では、外食で重視することの項目において、『設備・空間』『接客』といったサービスを重視する人は35.2%に対し、『調理技術』『食材』といった料理を重視する人は64.9%でした」

出典:ホットペッパーグルメ外食総研「2020年トレンド予測 飲食領域」

「また、『サービス(接客、設備・空間など)を簡略化する代わりに、通常よりも安い価格で質の良い食材や料理を提供するお店やメニュー』については、74.9%の人が『利用したい』と回答していました。このようにカスタマーの傾向としては『料理の質>サービス』であり、店舗側が“選択と集中”をした結果、立ち食い店舗が生まれていると考えられます」

これを踏まえたうえで、有木氏は、立ち食いの利用客メリットは、次の3つが挙げられるという。

1.利便性(提供が早い、好立地など)
2.リーズナブル
3.コミュニティが生まれる

コミュニティが生まれる立ち食いグルメ店

コミュニティが生まれるという視点では、立ち食いができる店として、次の2店舗に注目していると有木氏は言う。

■「琉球チャイニーズ TAMA」

「この沖縄料理と中華料理を楽しめるお店では、テーブル席もありますが、シェフの前でスタンディングで食事ができるカウンターがあります。中華料理ではありえないことです。オール電化にすることで、中華のフライパンを振る前でも熱くないのです。名物オーナーシェフに、自分の好みを伝えて会話を楽しんだり、お客さん同士のコミュニティが生まれたりする場になっています」

■「YAKINIKUMAFIA(ヤキニクマフィア)」

「WAGYUMAFIAによる話題の立ち食い高級焼肉店です。客単価は3万以上。まさに『コミュニティが生まれる』に特化した立ち食い店です」

立ち食い業態は、サービスの簡略化の傾向から、今後もさらに進化していくだろうか。すべての立ち食い店が成功しているわけではないことから、どのような形態やサービス、料理が支持されるのか見どころといえそうだ。

取材・文/石原亜香利

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