「英語学習に興味はあるものの、苦手意識が強く、なかなかその一歩が踏み出せない……」
筆者も、英語学習に対し、長年そんな思いを抱えている一人だ。
学生のころから英語学習に取り組み、英語関連の資格もいくつか取得してきたはずなのに、いざ話そうと思うと何も言葉が出てこない。
外国人とコミュニケーションをとるどころか、外国人と向き合うことに恐怖すら感じてしまう。
いつしか、英語をマスターするのは自分には無理だと決めつけ、「英語学習は来世で頑張ろう」とまで思う始末だ。
そんな、英語学習への苦手意識は、「英語ニガテ病」という「病(やまい)」といってもいいかもしれない、とイングリッシュ・ドクターの西澤ロイ氏は指摘する。
「英語病であるにも関わらず、やみくもに英語の学習を始めても、上達が見られなかったり、途中で挫折したりするだけです。まずはその病(やまい)を治療し、根底にある苦手意識を取り除くことで、より英語学習が効率的になり上達するのです」
病(やまい)ともいえる、英語に対する苦手意識の原因や、その改善方法はどこにあるのか。イングリッシュ・ドクター西澤ロイ氏の「英語学習のつまずき50の処方箋(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」より確認していこう。
英語学習を妨げる50の英語病
本書では、英語学習総合科、単語学習科、英会話表現科、リーディング科、リスニング科、発音科、資格試験科の7つの科、それぞれどこで英語学習につまずいているか、セルフ診断チャートを用いて診断することができる。
仮に、筆者の場合で、英語学習総合科のセルフ診断チャートを行なってみよう。
「英語は身に付けたいが、やる気が出ない/続かない」
間違いなく、YESである。
すると、診断は「01.エゴイヤ病」。これは「英語イヤ!」から命名されたもので、英語への苦手意識や嫌いという思いがあるために、「やる気不全」を起こしてしまう英語病だという。確かに筆者の場合は、英語学習に取り組む前の段階で挫折している。
この「エゴイヤ病」に対し西澤氏は、「エゴイヤ病を抱えたまま、本格的な英語学習を行なうことはお勧めできません。ラクラク学べる方法を探し求める英語難民になってしまう可能性や、逆に歯を食いしばって勉強を行なった結果、うまくいかずに英語習得をあきらめてしまう危険性もあります。まずは、英語とのふれあいを楽しむことを意識しましょう。」とアドバイスしている。
西澤氏のアドバイスに、思わず「なるほど」とうなずいてしまう。
では、一念発起してやる気を出し、英語学習を始めたと仮定して、次の質問に進んでみよう。
「日本文化に浸り、日本語オンリーで生活している」
こちらも、間違いなく、YESである。
すると、診断は「02.ジパング症候群」。英語を身につけたいのに、日本文化に浸り、勉強時間以外は日本語だけで生活を送る英語病だという。
この「ジパング症候群」に対して西澤氏は、「ツイッターやインスタグラムなどのSNSで英語アカウントをフォローする、英語のラジオを聞くようにする、英字新聞を購読するなど、普段から英語が日常に存在する環境を作りましょう」とアドバイスしている。
こちらも、筆者にとっては、まったくもって「なるほど」である。そもそも英語学習が始められていない筆者にとっては、「英語学習全般」に対し、病(やまい)ともいえる症状が出ており、そのために、そもそも英語学習を始めるという初歩的なことすらできていないのだということが分かる。
さらに、英会話表現科のセルフ診断チャートを行なってみよう。
「英語が全然できない/話せないと思う」
こちらも筆者の場合は、やや当てはまる。
すると、診断は「17.アイキャント症候群」。「英語は話せない」「全然できない」などと言い、自分が持っている英語力を否定してしまう英語病だという。
この「アイキャント症候群」に対して西澤氏は、「ベトナム語やスワヒリ語では挨拶すらできない日本人が大半でしょう。一方、小学校や中学校で英語教育を受けている日本人は、ほとんどの場合、挨拶程度の英語や名乗るなどの簡単な発言はできるはずです。にもかかわらず、『英語が全く話せない』と思ってしまう人は、自分がすでに英語でコミュニケーションを取るための基礎力がすでに身についているということを認めていないだけにすぎません。ぜひ、知っている英単語や言える英語表現を書き出してみてください。そして、それだけたくさんの知識がすでにあるという事実を味わいましょう」とアドバイスしている。英語を上達させたいなら、「I can’t speak English.」という否定ではなく「I can speak English a little.」という肯定の発想で臨もうというわけだ。
本書では、上記のように各科のセルフ診断チャートを活用することで、自分がどこで英語学習につまずいているかを50タイプから知ることができる。
今回は、英語学習の初歩でつまずいている筆者の場合で仮の診断を行なったが、本書では、英語学習初心者から、あと一歩で上級レベルに達する人まで幅広く網羅されているため、「これは自分のことかもしれない」と自らの英語学習に対する問題点を振り返るきっかけになるだろう。
英語病を克服し、英語学習を効率よく進めるために
筆者も含め、多くの日本人は、学生時代に英語を学んできたはずである。それにも関わらず、「ペラペラ」とは程遠い英語力に、いつの間にか「英語に対する苦手意識」を持ってしまった人もいるのではないだろうか。
「英語上達のためには、正しい方法をとることが大切です。正しいやり方で学べば、誰でも上達できます。」と西澤氏は指摘する。
誰でも上達できるはずの英語学習に、苦手意識だけが先行してなかなか取り組むことができないのは、実はもったいないことなのかもしれない。
筆者のように、英語学習に興味はあるが、なかなか一歩を踏み出すことができない人、一歩を踏み出すことには成功したが、なかなかマスターしたと言えるレベルまで英語が上達しないと行き詰っている人は参考にしてはどうか。
著者プロフィール:
西澤ロイ。イングリッシュ・ドクター(英語学習のやさしい“お医者さん”)。英語学習における「つまずき」である英語病を解消する専門家。TOEIC満点(990点)
著書累計は17万部を突破。英語学習者向け英字新聞「The Japan Times Alpha」に毎週連載を持つ他、雑誌やTV,ラジオなどメディア出演多数。
「英語学習のつまずき50の処方箋(ディスカヴァー・トゥエンティワン)」
文/平塚千晶