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諜報員も活用!元防衛省情報分析官に聞く仕事にも役立つ「ダークスキル」入門

2022.11.13

この世で最も頭の回転が速くなければならない職業が「諜報員」

ビジネスパーソンの仕事の巧拙は、頭脳のみで決まるわけではないが、少なくとも「頭の回転の速さ」が重要なことに異論はないだろう。

その能力を鍛えるに役立つのが、「この世で最も頭の回転が速くなければならない職業」、すなわち「諜報員」が持つスキルを学ぶことだ。

そう力説するのは、(株)ラック「ナショナルセキュリティ研究所」でシニアコンサルタントを務める上田篤盛さん。元防衛省の情報分析官であった上田さんは、諜報員が有する能力として、「仕事を効率的に行う」「物事の先を読める」「冷静で決断力がある」など挙げる。

スパイ映画に親しんできたわれわれには、彼らは筋力で任務を遂行していると思いがちだが、実際は高度に磨かれた頭脳が最大の武器なのである。

そんな諜報員のワザを、ビジネスパーソンが利用できるレベルに落とし込んだのが、上田さんの新著『超一流諜報員の頭の回転が速くなるダークスキル – 仕事で使える5つの極秘技術 -』(‎ワニブックス)だ。

本書で語られる「ダークスキル」とは一体どのようなものなのだろうか? その一端をこれから紹介しよう。

■「情報源は批判的に見る」のが大原則

どのような業種・職種にあっても、ビジネスパーソンにとって情報収集は欠かせない。

それは諜報員も同様だ。諜報員の情報収集といえば、敵国の秘密施設に潜入して……みたいなイメージが大きいが、実はその比率は低い。どこの国の諜報員も、まずは公開情報を元にインテリジェンス(加工・解釈された情報)を組み立てるという。

そうした公開情報は、諜報の世界では「オシント」と呼ばれるが、上田さんはビジネスパーソンでも「心がけ次第でいくらでもオシントは集められる」と説く。主な収集の場は、インターネットだ。

とはいえ、インターネットの大海原に満ちる情報は玉石混交。それどころか、フェイクニュースのように露骨な偽情報までは横行する世界だ。

フェイクニュースがいやらしいのは、偽情報の中に、巧みに事実を織り交ぜている点。だから、自分は騙されにくい性格だと思っている人でも、コロッと騙されることもある。

注意すべきは、フェイクニュースばかりではない。上田さんは、「政府やマスコミによる情報操作」にも注意すべきだと、本書の中で述べている。

“政府の発表やマスコミ報道では都合の悪い情報は伏せて、都合の良い情報のみを発信することが多々ある。あえて勘違いをさせるような仕込みもある。

マスコミによる記事、思想家の歴史書は、筆者が伝えたいことに沿って都合の良い証拠を集め、都合の悪いことは黙り、自分と同じ思想を世に広めたいとの思惑が働いている。

だから、「個々の情報は正しいが、全体としては正しくない」ということが起こる。”

あなたの見込み客や競合他社の情報にも、そうしたものが含まれているかもしれない。そこで重要になるのが、「情報源は批判的に見る」という大原則。

それには、「外的批判」と「内的批判」の2つの方法があるという。まず外的批判について、上田さんの説明を借りると、「情報が本物か偽物かを判断し、情報源、情報の成立時点、その情報が独立のものか、それともほかの情報から派生したものかを突き止めること」だという。

その際は、情報源の記載がないものは捨て、あったとしても不用意に信頼しないことが大事だとも。これ以外にも、複数の独立した情報の内容が一致しても、情報が正しいとは限らないなど、留意すべき点はいくつかある。

一方、内的批判は、自身の知識・経験に基づいて情報の真偽を判断するやり方。

“要するに「なんとなく変だ」「そんなことが本当にあるのか」「言っていることが矛盾している」「よくそんなことまで知り得たな」などの気づきがあれば、関連する情報や知識とつき合わせて矛盾点を探ったり、その道の専門家の意見を聞くなどの措置が必要ということである。”

内的批判で注意したいのは、「おもしろい」「悲しい」といった感情がわき上がったとき。その場合、「情報源はこの情報にどのような利益を見出しているか。

それは金銭、名誉、注目のいずれか?」という視点に切り替えて、内容を精査する。また、統計にある数字は疑ってかかるのが基本だ。

■相手の会話から情報を引き出すには

諜報員は、オシントだけではなく、人的な情報源(ヒューミント)からも情報を得る。特に一次情報を持っている人から直接得た情報は、何物にも代えがたい価値を持つ。

それはビジネスパーソンも同じだが、有益な情報を持つ人が気前よく話してくれるのなら苦労はない。そこで、上田さんは本書の中で、接触した相手から情報を引き出すためのテクニックをいくつか教えている。

その1つに「砂時計会話術」というものがある。会得するのは簡単で、営業や交渉の現場で活用できそう。

“ごく普通の世間話で会話を始め、それから少しずつ特定の話題へと絞り込んでいき、また世間話に戻すという会話術だ。

たとえば、会話の冒頭では相手の子供について尋ね、それから相手の仕事(あなたが望んでいる情報)へと話題を変える。それから、休暇のことや好きな食べ物などの、世間話に戻すのだ。

人は会話の最初と最後の話題を覚えている。しかし、どういうわけか、その間の会話はあまり覚えていない。優れた諜報員はこの原理を利用して会話している。”

そして、初対面の相手と会話を続けるにはコツがある。それは、なるべく早く共通点(経歴、出身地、仕事など)を見つけること。上田さんがすすめるのは、「1県50個」の訓練だ。

これは、ある県に関係の深いキーワードを把握しておくというもので、実際に上田さんが情報教官をしていた時に、学生に対して実践させたという。

キーワードというのは、例えば広島県なら「牡蛎」「山本浩二」「広島城」など。50単語を休まずに言えるくらいにする。結構大変なので、まずは「1県10個」を目標に。相手の出身地を話題にしながら、会話をもたせるのに役立つ。

ところで上田さんは、元CIA諜報員のJ・C・カールソン氏のアドバイスを引き合いにしている。それは、就職の面接で「話すのは主に面接官でこちらは何も話さない」のが成功の秘訣というもの。

もちろん、ずっと無言でいろという話ではない(それでは絶対に就職できない)。面接官の質問には簡潔に答え、その答えに対して面接官が次の質問をしたくなるように仕向けるというのが、このテクニックのエッセンスだ。では、そのために、面接官に何を聞けばいいのか?

“面接官が「何か質問がありますか?」聞いてくれば、「聞き上手」を発揮できる千載一遇のチャンスである。何か会社のことを聞くのではなく、面接官のことを聞くことだ。

面接官が、会社でどのようなキャリアを経てきたのかを聞くのである。誰しも、自分の自慢を第三者に話したいものなのである。

相手に気持ちよくしゃべってもらうために、面接官の質問は遮らないことだ。

突然、いいアイデアが浮かんでも、面接官がしゃべり終わるまで自ら話をしないことは基本中の基本である。”

転職活動で、長々と自己アピールをしてうまくいかない人は、この方法を試してみるといいかもしれない。

諜報員は、うさんくさいという一般的なイメージと違って、実は「約束は守り、規則正しく、時間にも厳しい」人たちだという。だから「ダークスキル」とは言っても、正々堂々とビジネスの現場で使えるものばかり。従来のビジネス本に飽き足らない人は、こちらを参考に実践することをお勧めしたい。

上田篤盛さん プロフィール
元防衛省情報分析官。株式会社ラック「ナショナルセキュリティ研究所」シニアコンサルタント。1960年広島県生まれ。防衛大学校(国際関係論)卒業後、陸上自衛隊に入隊。2015年定年退官。在職中は、防衛省情報分析官および陸上自衛隊教官などとして勤務。92年から95年まで在バングラデシュ大使館において警備官として勤務し、危機管理などを担当。情報分析官としての経験、独自の視点から執筆する著書は好評を博している。『未来予測入門』(講談社)、『情報戦と女性スパイ』『情報分析官が見た陸軍中野学校』『戦略的インテリジェンス入門』『中国が仕掛けるインテリジェンス戦争』『武器になる情報分析力』『インテリジェンス用語事典(共著)』『武器になる状況判断力』(いずれも並木書房)、『中国の軍事力―2020年の将来予測(共著)』(蒼蒼社)など著書多数。現在、官公庁および企業において、独自の視点から「情報分析」「未来予測」「各国の情報戦」などに関するテーマで講演を行なっている。

文/鈴木拓也(フリーライター)

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