こんにちは。弁護士の林 孝匡です。
今回は【かっぱ寿司の社長が逮捕された事件】をザックリ解説します。
逮捕容疑は、ライバル会社の情報をパクっちゃったというもの。
「はま寿司」の内部データを不正に取得。(不正競争防止違反容疑)
警察は、この内部データが不正競争防止法の「営業秘密」にあたると判断しました。
さて、転職を考えているそこのアナタ!「営業秘密」をパクっちゃうと逮捕される可能性があります。
転職先にお土産として持っていきたい気持ちは分かりますが、バレると、人生が吹き飛びます。
逆に、営業秘密を守りたい会社の方!「これは我が社の営業秘密なんだ!」と言うにはハードルをクリアする必要があります。
そこで、本記事では、
●営業秘密って、何?
●営業秘密と認められるための3要件
●営業秘密をパクると、どうなる?
などを、ザックリと解説します。
ちなみに、私はスシローが1番好きです!
#誰も聞いてない
さぁ、本題です!
どんな事件
かっぱ寿司の社長は、もともとはライバル「はま寿司」の取締役でした。
はま寿司で、売上に貢献していたようです。
その後、競合のかっぱ寿司に転職。
社長に就任しました。
逮捕容疑は、
●はま寿司の仕入れ先や仕入れ価格などを持ち出した
というものです。
警察は、上記の内部データが不正競争防止法の「営業秘密」にあたると判断して逮捕に踏み切りました。
営業秘密って、何?
そこで気になるのが「営業秘密」って何よ?ってことです。
ザックリいえば、社内でマル秘的な扱いがされている情報は、営業秘密です。
法律上は、以下の3要件を満たすものが「営業秘密」になります
(不正競争防止法2条6号)
1.秘密として管理されている
2.有用
3.公に知られていない
営業秘密を守りたい会社の方! この3要件を満たしていれば(特に、1の秘密管理性)、営業秘密をパクった人に色々と請求できます。
警察に駆け込むこともできます。
会社での情報管理体制を整えておくことをオススメします。
要件を順番に解説します。
1. 秘密として管理されている
1つ目の要件。秘密性。
ザックリいえば「この情報はヒミツだ!社外秘だ!」と示して下さい。
営業秘密管理指針(by 経済産業省)では、以下の措置が挙げられています。
一例を挙げます。
■ 紙媒体の場合
・施錠可能なキャビネットや金庫等に保管
・ファイルへのマル秘表示
■ 電子媒体の場合
・ 電子ファイル名・フォルダ名へのマル秘表示
・記録媒体へのマル秘表示
・電子ファイルを閲覧する際のパスワード設定
秘密管理性が1番大事なので、営業秘密管理指針を一読しておくことをオススメします。
2.情報が有用である
2つ目の要件。
ザックリ言えば「価値のある情報だ」ということです。
たとえば、各種マニュアル、販売データ、商品の設計図などがあたります。
ネガティブ・インフォーメーション(過去に失敗したデータ)なども価値があるので、有用性が認められます。
3.公に知られていない
3つ目の要件。
ザックリ言えば「誰も知らないし、簡単には知られない」ということです。
正確に言えば、「情報が合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物に記載されていない、公開情報や一般に入手可能な商品等から容易に推測・分析されない等、 保有者の管理下以外では一般的に入手できない状態」をさします。
====
上記の3要件を満たせば、晴れて「営業秘密」となります。
営業秘密と認定されれば、パクった奴を告訴できる根拠にもなるので、会社の担当者の方は、3要件を満たすよう情報管理体制を整えてみてください。
お次は、「営業秘密」をパクっちゃうと、どうなるか? です。
営業秘密をパクると、どうなる?
営業秘密をパクると、
・損害賠償請求
・逮捕
されるおそれがあります。
■ 損害賠償請求(不正競争防止法4条)
故意または過失により不正競争を行って他人の営業上の利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずる
■ 刑事罰(不正競争防止法21条)
十年以下の懲役若しくは二千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
バレた瞬間、人生が崩壊するおそれがあります。
転職先へのお土産は、やめときましょう…。
まとめ
今回は、かっぱ寿司社長逮捕事件を基にして、営業秘密について解説しました。
まとめると、
営業秘密として認められるためには、
1.秘密として管理されている
2.有用
3.公に知られていない
という3要件を満たす必要がある。
1の秘密管理性が重要。
営業秘密をパクると、
・損害賠償請求
・逮捕
されるおそれがあります。
会社の担当者の方は、情報管理体制を整え、転職を考えてる方は、甘い誘惑に乗らないようにしましょう。
では、また次の記事でお会いしましょう!
取材・文/林 孝匡(弁護士)
【ムズイ法律を、おもしろく】がモットー。
webメディアで皆様に知恵をお届け中。「
https://hayashi-jurist.jp(←
https://twitter.com/