「自分たちも狭い日本を飛び出して、世界の企業と取引できれば、チャンスが広がるのに!」皆さんは日頃の仕事の中で、そんなふうに考えたことがないだろうか。
特に中小企業にとって、貿易業務を担う商社と取引するのはハードルが高いし、自社で海外企業とやり取りするには、人材やノウハウの課題が大きい。デジタル貿易プラットフォームを開発するスタンデージ社は、オリジナリティあるビジネスモデルで、商社機能、貿易ビジネスの新しいスタイルを構築する。
ビジュアル解説
海外取引のチャンスをより広く
「デジトラッド」は、BtoBの貿易業務をワンストップで提供するプラットフォームだ。商社機能をデジタル化することでコストを圧縮、中小企業でも海外貿易へ挑戦できる仕組みを構築した。
商社機能とは、①販路開拓②交渉/契約③決済④物流の4段階に大きくわけられる。大手総合商社の伊藤忠商事でキャリアを積んだCOO大森健太氏によれば、ポイントは②交渉/契約と③決済だ。
海外での販路開拓が大変に思えるが、オンラインも含め展示会などの仕組みが整っている。いっぽう②交渉/契約は、商社マンがリソースの約60%を割くという業務。商社マンが売り手企業の商品知識を吸収し、数十、数百の買い手企業から来る問い合わせや交渉に対応する負荷は大きい。
煩雑な業務を解消するため、同社は貿易業務に特化したAIチャットを開発した。「食品」「機械」などのカテゴリごとに、問い合わせ内容を想定してアルゴリズムを設計。商品の仕様を入力すれば、あとはAIが製品を解釈して回答の精度を高める。
自動回答で答えられないときのみ、人が対応すればよいので、業務効率は大幅に改善する。
③決済は特に途上国との取引で課題になる。貿易ビジネスが成立しない理由の3割が、代金回収できない、商品が届かない、などの「不平等な決済条件」に起因するという。船による輸出入は、商品の出荷から到着にタイムラグがあるので、先払い/後払いによるリスクが避けられなかった。
これに対して、同社は「モノとカネを同時交換」するシステムを開発。買い手はブロックチェーン上のデジタル金庫にデポジットを入金、売り手は出荷を証明する船荷証券をデジタル化して送信する(データが唯一無二であることを証明するNFTを活用)。
商品が到着し、買い手と売り手が同意してはじめて、デポジットが出金できる。貿易ビジネスについてまわる代金回収リスク、商品入手リスクを解消した。
これらシステムの運用は、貿易の実務経験が豊富な同社のスタッフが行う。販路開拓、物流も含めて、貿易のすべての流れを「丸投げ」できるサービスは、同社によれば日本で唯一だ。
貿易ビジネスの民主化を実現する2つのポイント
日本に約360万社ある中小企業のうち、海外との取引を行っている企業は、わずか1%にとどまっている。貿易ビジネスを主として担ってきたのは商社だが、手間のかかる業務のために、取引額の小さな案件には対応しきれない。人材や拠点に限りがある中小企業にとって、BtoBの海外取引は現実的に不可能に近かった。
状況を打開するデジトラッドのチャレンジには、2つのポイントがある。ひとつは、前述のとおり商社業務のデジタル化とその先の効率化。もうひとつは、商品や原材料の仕入/販売といった商社ビジネスそのものではなく、商社業務のアウトソーシングに徹していることだ。
同社は、海外取引のリスクを抱えることなく、規模を問わず、さまざまな貿易ビジネスをサポートできる。さらに将来的には、貿易経験のある個人や事業者に、デジトラッドのプラットフォームを開放する見込みだ。貿易ビジネスに取り組みたい企業と、元商社マンや副業人材などアウトソーシングの担い手をマッチング。埋もれているスキルを掘り起こすことで、さらに幅広く中小企業の海外取引を支援する。
人口減少が進む日本では、内需の減少は避けられない。このままでは埋もれてしまうようかもしれないが、海外に活路を見い出すことで大きく飛躍する――そんな優れた商品や技術が、日本にはたくさんあるはずだ。
同社のつくるBoB貿易の新たな仕組みが、中小企業の力強いエンジンになることを期待したい。
スタンデージの貿易”丸投げ”プラットフォーム「デジトラッド」 サービス提供を正式に開始
取材・文/ソルバ!
人や企業の課題解決ストーリーを図解、インフォグラフィックで、わかりやすく伝えるプロジェクト。ビジネスの大小にかかわらず、仕事脳を刺激するビジネスアイデアをお届けします。
https://solver-story.com/
@DIME公式通販人気ランキング