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仮想通貨だけじゃない!DX、処方箋、デジタル証券、進化するブロックチェーンの3つの活用事例

2022.11.07

暗号化技術「ブロックチェーン」といえば、仮想通貨やNFT(※1)などがイメージされるが、すでに多様なビジネス用途で利用されており、今後の展開が期待されている。今回はブロックチェーン技術を用いたビジネス活用例としてPC、処方箋、決済分野の3つ紹介する。

※1 Non-Fungible Token/代替不可能なトークン。ブロックチェーン技術によって、デジタルデータに固有の価値を付けたデジタルデータ。

1.テレワーク管理をスムーズに!「Jasmy Secure PC」

ブロックチェーン技術は、仮想通貨「ビットコイン」の基盤になっている技術で、ネットワーク上にある端末同士を直接接続し、ブロックと呼ばれる単位のデータをチェーン(鎖)のように連結して保管する技術のこと。データの改ざんが不可能な特性からセキュリティ面で期待がかかっている。

ブロックチェーン技術はそのセキュリティを強化できる特性から、企業内における安全な業務コミュニケーションにも応用が効く。PCにその技術を施したのが「Jasmy Secure PC」だ。ソニー出身者たちが揃うベンチャー企業、Jasmy(ジャスミー)が手がける。テレワークやモバイルワークにおいて安全で、快適な作業環境を独自のブロックチェーン技術で実現するという。

「Jasmy Secure PC」

テレワークでは従業員に会社PCを貸与することが多いが、管理者側はPCの操作記録などログを取得して管理したいニーズがある。そのログデータをジャスミーのサーバーが収集し、ハッシュ化、匿名化し、コンソーシアム型ブロックチェーンに書き込むことで安全に保管する。従業員の承諾があることを前提に管理者のユーザーは管理画面上でデータを確認することができる。

同製品には、ブロックチェーン技術がどのように使われているのか。同社の取締役 兼 ソフトウェア開発統括 萩原 崇氏は次のように解説する。

「Jasmy Secure PCには、各端末PC上で稼働する Agent(エージェント)とそれらを管理するManager(マネージャー)の2種類のアプリケーションが存在します。Agentは、端末の稼働状況や使用状況に関する情報を定期的に送信しています。これをログと呼びます。また、Managerは、Agentから送られたログを元に端末を管理監視する機能と各端末に対してコマンドを送る機能を持っています。

Jasmy Secure PCでは、ログデータとコマンドの処理において、機器識別とデータの改ざん防止・データの正当性確認を主目的にブロックチェーン技術を利用しています」

「Jasmy Secure PC」ダッシュボードイメージ

●ブロックチェーン技術によるユーザーメリット

ブロックチェーン技術を用いることにより、ユーザーは従来と比べてどのようなメリットが得られるのだろうか。

「データ保護の基盤技術としてブロックチェーンを用いているので、ログを含む様々なデータに対して高い信頼性が得られます。また、必要な管理情報をブロックチェーン側に分散する(任せる)ことができるため、アプリケーション本体側での負荷が少なくなり、アプリケーションの使い勝手を向上させることができます。そして、これらの処理は、ブロックチェーン側で非同期に自律的に行われているため、ユーザーはアプリケーションの使用時にまったく意識することなく、これらのメリットを享受できます」

●ブロックチェーン技術の今後の可能性

ブロックチェーン技術というと、仮想通貨から始まったこともあり、まだ他の分野の利用の具体的イメージがつきづらい状況だ。今後、ブロックチェーン技術はどのような可能性があるだろうか。

同社の執行役員で商品サービス企画を担当する柿沼 英彦氏は次のように述べる。

「ブロックチェーンは、特定のサーバーに情報が依存しない自律分散管理の仕組みであり、耐改ざん性、透明性(情報の共有化)、および取引履歴をブロック上に保持することによるトレーサビリティが優れた技術です。ここに暗号資産としての使い方とは異なる、ブロックチェーン上でプログラムを実行できるスマートコントラクトおよび、唯一無二の証明を可能とするNFT等のトークンが付け加わりました。

これにより、自身の個人情報をその人自身が管理し、必要に応じて、必要な情報だけを企業へ提供してインセンティブを得る等の行為が可能になり、かつ個人の経歴の正当性も証明できることになります。これは当社の『パーソナル・データ・ロッカー』というサービスで実現し始めています。

また、トークンに様々な仕組みやサービスを付け加えた『ファントークン』などの顧客サービスの活用が考えられます。例えば当社の『サガン鳥栖ファントークン』は、ファンがサッカーチームサガン鳥栖を応援すればするほど、例えばスタジアムへの来場やテレビ等でのサッカー観戦、アンケートの回答などに応じて貢献度の数値が貯まり、各自のファントークンのステータスがアップしていきます」

2.オンライン診療において安心安全に処方箋を受け渡し「NFT 処方箋」

非対面のオンライン診療のニーズが高まる中、医療情報の施設間同士のデータのやりとりが課題だ。特に個人情報保護と処方箋の電子化が喫緊の課題となっている。

そんな中、自立分散型情報銀行の開発・運営を行うcanow株式会社の子会社で、医療健康領域でのブロックチェーン浸透を図るMINE株式会社が、医療機関、調剤薬局、配送会社間のシームレスな連携を目的とし、「オンライン診療の処方箋」に関する実証実験を行った。

●「NFT 処方箋」の実証実験の概要

canowはこれまで、ブロックチェーン技術を活用し、個人が主体となり個人情報を管理することで改正個人情報保護法などの個人情報規制を遵守し、情報利用をすることができるIDシステム「BRIDGE」の構築を行ってきた。MINEは医療健康業界におけるBRIDGEの活用検証を担いID管理型ライフログサービス「mine」の実証実験を行ってきた。

そして今回、2022年4月~2022年7月にBRIDGEとmineの実証実験の一環として、GENie株式会社、セントラル薬局グループ、東京白金台クリニックと共同でブロックチェーン技術のNFTを活用した処方箋の実証実験を行った。情報共有の円滑化と共に、情報の秘匿性も担保することができる医療・健康業界のDX化におけるブロックチェーンの有用性を実証した。

【各社の役割】
・GENie:処方薬の配送
・セントラル薬局グループ:処方薬の調剤
・東京白金台クリニック:対面診療、遠隔診療診療とNFT処方箋の発行
・MINE:ID管理型ライフロサービス「mine」の提供、NFT処方箋管理システムの提供と実証実験後の分析

その仕組みはこうだ。東京白金台クリニックでオンライン診療を受けた患者は、発行されたNFT処方箋を、ID管理型ライフログ「mine」で管理する。そして事前に登録した基礎疾患や常備薬などの情報と合わせ、調剤薬局へNFT処方箋を共有し、調剤薬局はそれらの情報をもとに調剤・服薬指導を実施したのち配送会社へ配達を依頼する。最短で当日中に患者は自宅、もしくは任意の場所で処方薬を受け取ることができる。

同社の事業開発担当、三浦日向氏は、ブロックチェーン技術の仕組みについて次のように述べる。

「NFT処方箋には、DID(分散型ID)、Verifiable Credentials(VCs)、NFTという3つのブロックチェーンを活用した技術が使用されています。デジタル上でユーザーが主体的に管理をするアイデンティであるDIDに対して、医師や薬剤師の資格証明書をVCsで付与します。これにより、これまで特定の事業者に依存をしなければならなかったデジタル上での資格証明が可能になります。資格が証明されたIDが、NFTを作成・譲渡することにより、デジタルで発行された書類の有効性を第三者が確認をすることが可能になります。

これらの技術を応用し、処方箋の発行者・保有者・利用者が誰であるかを明確にするとともに、トレーサビリティを確保することにより、従来の処方箋と同等以上の管理を行うことができるようになります」

●ブロックチェーン技術によるユーザーメリット

ブロックチェーン技術を用いることにより、医療機関や調剤薬局、患者は従来と比べてどのようなメリットが得られるだろうか。

「本実証実験ではブロックチェーンを活用した技術によって、医師や薬剤師が作成した医療健康情報を、患者が自身で保有・管理することができる環境を整備しました。これにより、NFT処方箋のほか、患者の既往歴や服薬歴、通院中の疾患などを、患者をハブとして各社が直接情報を確認することができるようになります。これは情報の移動(データポータビリティ)を向上させるとともに、個人情報保護法や欧州のGDPR(※2)といったプライバシーに対する意識の向上に対応しなければならないサービス事業者に、一つのソリューションを提供します」

※2 GDPR:EU(欧州連合)の各国内で適用される、個人情報(データ)の保護という基本的人権の確保を目的とした「EU 一般データ保護規則」のこと。

●ブロックチェーン技術の今後の可能性

今後、ブロックチェーン技術はどのような可能性があるだろうか。

「ブロックチェーン技術の可能性は無限大だと言いたいところですが、現実はそうではありません。我々は、複数事業者間で情報の連携や情報の管理を行う際、ブロックチェーン技術が価値を発揮すると考えています。事業者の自立分散から個人の自立分散にまで進むと昨今話題になっているWeb3.0やDAOといったような形にもなるところではあると思います。

いずれにせよ、複数の主体を元にした情報の管理基盤が、ブロックチェーン技術の最たる強みであると考えています。いい技術を提供することが目的ではないことを理解し、『ゴールデンサークル理論』のように、WHY→HOW→WHATの順で問いを立て、『なぜブロックチェーンを使うのか』を突き詰めて、実際に実サービスをユーザーに届けられるサービス事業者が出てくることが大事だと思っています」

3.ステーブルコインとデジタル証券のクロスチェーン決済の実証実験

三菱UFJ信託銀行はブロックチェーンを活用した独自のデジタル証券発行・管理プラットフォームを構築している。そして2022年9月にはブロックチェーン技術に関する企画・開発を行う株式会社Datachain社と共同でブロックチェーンを用いた決済技術の検証を行った。

それは日本円と価値が連動する「ステーブルコイン」を用いて、異なるブロックチェーン上のデジタル証券やNFT等の決済ができるようにする技術だ。ステーブルコインとは、価格の安定性を実現するように設計された仮想通貨のこと。今後、デジタル証券の売買体験が変わる。

●ブロックチェーン技術によるユーザーメリット

本件において、ブロックチェーン技術を活用することで、デジタル証券の売買を行うユーザーにはどのようなメリットが生まれるだろうか。同社の事業企画 吉田 基紀氏は次のように述べる。

「デジタル証券の売買に伴う手数料の軽減、ユーザー体験の向上等が考えられます。現状、デジタル証券のブロックチェーン基盤はいくつかサービス提供が開始されていますが、決済手段は法定通貨となっており、銀行間送金の手数料が発生したり、デジタル証券の売買(約定)から実際の権利の移転までにタイムラグ発生することによる決済リスクが発生したりといった課題があります。

今回の取り組みで発表した、ステーブルコインを扱うブロックチェーンとデジタル証券を扱うブロックチェーンの相互接続によるブロックチェーンをまたいだ決済(クロスチェーン決済)を可能にすることで、コストやリスクを軽減できることが期待できます。個人にとっては、より安価に証券取引をできるようになる可能性があります」

●ブロックチェーン技術の今後の可能性

今後、ブロックチェーン技術はどのように発展していく可能性があるだろうか。

「今後、当社はこのようなクロスチェーンでの決済の仕組みを、様々な領域にも応用していきたいと考えています。例えば、デジタルコンテンツ等の権利を表現するために用いられるNFTは最近、様々なニュースで取り上げられていますが、NFTの売買における決済手段として、このようなステーブルコインを用いたクロスチェーン決済を利用することで、よりスムーズに売買を行えるようになるかもしれません」

3つの事例だけでもブロックチェーン技術は、多様な分野での可能性を秘めていることがわかる。今後、さらなる技術革新を期待したい。

取材・文/石原亜香利

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