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三井住友DSアセットマネジメントでは、失敗しないポートフォリオ運用のために「やるべきではないこと」を提案するマーケットレポートを公開している。4つのポイントにわたるその概要をお伝えしていこう。
流行りを追いかける
相場の人気は移ろいやすいものだ。「流行り」に乗って投資をしても、人気が過熱する中で高値を買って、その後冷静になる中、「すたり」の安値で売ってしまうという結果になることもある。「流行り」は市場で大きな「テーマ」となり、バブルを生み出し、破裂することがある。これでは運用はなかなか思うような成果に結びつけることができない。
ただ、「テーマ」は時代の大きな変化を取り込むものでもあり、「テーマ」に注目することは必ずしも悪いことではない。まずは「流行り」と「すたり」の事例を「ビットコイン」、「不動産バブル」、「ITバブル」で確認してみよう。
ビットコイン
ビットコインは2009年1月に初めて発行された仮想通貨で、認知度が高まるにつれ価格の変動が高まり、「上がるから買う、買うから上がる」と、次第に投機的な取引が増え、2017年にバブル状態となった。2017年12月に米国でビットコインの先物取引がスタートしたことで透明性が増すと期待された反面、ビットコインの先行きに対する弱気な見通しが台頭したことから、ビットコインは一気に急落する局面を迎えた。
不動産バブル
2000年代後半に米国で発生した住宅バブルの発生と崩壊は、2008年のリーマン・ショックとして記憶されている。住宅価格の上昇は、ブッシュ減税(2001年)、持ち家支援政策(2002年)等による合理的なものだったが、持続的な価格上昇により「住宅価格は上がり続ける」との幻想が生じてしまった。
しかし、2006年には住宅価格の上昇が止まり、値上がりした住宅を担保にして低利ローンに借り換えるつもりだった個人はあてが外れることになる。そしてサブプライムローンの延滞が増加し、格付け会社はサブプライム証券化商品の格付けを下げ始める。こうして2007年8月のパリバ・ショック、2008年9月のリーマン・ブラザーズによる破産法申請(リーマン・ショック)へとつながっていった。
ITバブル
1995年8月9日に、ネットスケープ株が新規公開され、株価は28ドルから71ドルに急騰した。このネットスケープというブラウザ・ソフトがITブームの火付け役になったと言われている。
1995年はマイクロソフト社のWindows95が発売されている。さらにコンピューターの頭脳であるマイクロプロセッサメーカーを巻き込んでインターネット関連投資が過熱していった。収益を生み出すと考えられるビジネス・モデルが期待され、ITベンチャー企業の創業や投資資金の調達、設備投資が積極的に行われた。「上がるから買う、買うから上がる」状態となり、IT企業の株価は急激に押し上げられることになった。
米連邦準備制度理事会(FRB)が99年に利上げに転じた後もしばらく株価は上昇したが、やがて景気の悪化を受けてIT企業の業績が悪化し、株価は急落に向かった。当時グリーンスパン元FRB議長は、高すぎる株価を「根拠なき熱狂」と評した。
「デジタル化」の底力
このようにITバブルは消失したが、「デジタル化」という「テーマ」は脈々と息づくことになる。例えば、2000年の経済白書は「最近の情報通信技術の長期的なインパクトはまだ十分明らかではないが、過去の蒸気機関、電力、自動車などに匹敵する大きな技術革新の波である可能性が高くなってきた」と既に指摘していた。
この当時は、すでに1950~60年代に生まれていた人工知能(AI)や2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念であるデジタル・トランスフォーメーション(DX)などが破壊的なイノベーションになるとまで市場は予想していなかったことだろう。
ITバブルが急膨張し崩壊した2002年以降、NASDAQ100が高値を更新する2015年まで13年を要した。時代を経て、社会の「デジタル化」が進展する中で、技術進歩で業績を伸ばすIT企業が多くなったことが功を奏し、大幅な株価上昇につながった。
目先の相場に一喜一憂する
いざ運用を始めると、株式や為替レートの変動など日々の相場の上げ下げがどうしても気になってしまい、「一喜一憂」してしまう。その日その日の気分に流されて行動を起こせば、手数料がかさむなど投資成果はなかなか期待できない。長期の資産形成を賢く進めるためには、こうした値動きと距離を置き、「一喜一憂」しないことが重要だ。
資産運用は長期のスタンスで取り組むことが重要と考えられる。老後を意識した資産形成の場合、その運用期間は若い人なら40年から50年、定年を迎える人でも20年から30年に及び、継続して行うことができる。
この間、景気や相場の山谷は必ず訪れるため、それに都度反応していると、売買頻度が上がるほか、常に正しい投資判断ができる訳ではないため、場合によってはそれまでに積み上げた資産を失ってしまう可能性すらある。また、最悪の場合には、相場の底で資産を売却してしまい、その後の運用を放棄してしまうこともあるだろう。
ではなぜ、人は相場の上昇に喜び、下落に悲嘆してしまうのだろうか。
行動経済学から考えてみよう
行動経済学という比較的新しい研究分野にそのヒントがある。その一つが「簿価のアンカリング効果」というもの。どの価格で投資を行ったかに引きずられる傾向があるという考え方だ。
買った価格よりも市場価格が高まればうれしくなり、逆に市場価格が下落すれば精神的なダメージを受ける。常に簿価を意識していると、日々の運用成果は長期の目標に対する途中経過でしかないのに、それがとても気になってしまう。
もう一つは「プロスペクト理論」。人間は損失を非常に嫌がるという考え方だ。下がると売りたくなるのはそのためと考えられる。ただし、相場が下がって損をしたからといって、資産を売却したり、運用を止めてしまっては目標を達成できない。
目線を長期の目標に変えてみよう
短期的な一喜一憂を防ぐためには「相場を見ない」、という思い切り方もあるが、目線を長期の目標に変えるという方法もある。
例えば、毎月3万円を30年間積み立てる場合を考える。年間で36万円の投資になり、30年間で投資金額は約1千万円となる。
この時、仮に目標を3千万円に置けば、投資金額の3倍が目標となり、かなり高い目標と思われる。そして、それを達成するためには、長期間積み立て、それを複利で運用することが最も重要となる。
目標をしっかりと設定して、複利運用の力を味方にできれば、日々の相場の変動が小さいことに思えてくるはず。ちなみに、年平均5%の収益率で、運用資産の標準偏差(ブレ=リスク)が10%の場合、この目標を達成できる確率は約66%だ。ポートフォリオ運用の基本を守って長期で運用できれば十分達成できる可能性がある。
「目先の相場に一喜一憂しない」ためには、自分のリスク許容度(金銭的・精神的)を知り、ポートフォリオ全体のリスクをコントロールして日々の市場の値動きで神経がすり減らないような運用を継続することが重要だ。
また、ドルコスト平均法などで投資タイミングの分散を図り、いくらで買ったのか気にならないようにすることで、先に見た行動ファイナンスでいうところの「簿価のアンカリング効果」から逃れることもポイントになりそうだ。
ただし、相場下落の原因が当初の想定と大きく変わってしまったと合理的に判断できる場合は、いさぎよく損切り(ロスカット)することも重要だ。ロスカットをためらわせるのも、買った値段である簿価にこだわった「アンカリング効果」の一種と心得よう。
まとめ~辛抱強く長期投資を続けることが重要
今回やるべきではないこととして、流行りを追いかける、目先の相場に一喜一憂する、を取り上げた。相場格言でも「人の行く裏に道あり花の山」といわれており、人気に流されると概して投資が上手くいかない場合がある。
米フィデリティ・インベストメンツで旗艦ファンドといわれた「マゼランファンド」の運用を担当した伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチ氏は、「株価が大きく上昇するのは、不人気業種の隠れた優良企業」としており、「人気」や「流行り」に惑わされないことの大切さを指摘している。
肝心なのは、「人気」や「流行り」とは距離を置き、長期運用に適した効率的なポートフォリオに辛抱強く投資を続けることではないだろうか。こうした長期的なスタンスで臨むことで、短期的な「一喜一憂」する心理をある程度コントロールすることも可能となるだろう。
なお、「流行り」は新たな「テーマ」を内包している場合があるのも事実だ。世の中を大きく変えてしまうような「破壊的イノベーション」、「ゲームチェンジャー」、「構造変化」といった「テーマ」にはしっかり注目しながら投資をする必要がある。
昨今のAI、ESG、DX、GX、BEV(含む自動運転)、次世代医薬(高分子、ウイルス療法)などは、そうした「ゲームチェンジャー」となる可能性がある。こうした「テーマ」は世界経済がウィズコロナ、金融政策の変更という局面に入る中でも、引き続き重要な「テーマ」と考えられる。
AI:Artificial Intelligence(人工知能)。ESG(環境・社会・企業統治):持続可能な世界の実現のために、企業の長期的成長に重要なEnvironment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)、の3つの観点を示したもの。DX:Digital Transformation。GX:Green Transformation。BEV:Battery Electric Vehicle(二次電池式電気自動車)。
※個別銘柄に言及しているが、当該銘柄を推奨するものではない。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい
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