「グリーンGDP」とは、環境を考慮した経済発展の指標として開発されたもので、国内総生産(GDP)から、環境の悪化をによって生じたコストを差し引いて計算します。「環境調整済国内純生産」(Eco Domestic Product:EDP)とも呼ばれます。
国内総生産(GDP)は、一定期間内に国内で生み出されたモノやサービスの付加価値を表しますが、環境負荷などの負の価値はGDPから引かれない。そのためグリーンGDPは、そうした環境への負荷を考慮しないGDPの欠点を補い、天然資源の金銭的評価にも焦点を当て数値化することができる指標です。グリーンGDPでは温室効果ガスなどの排出量が減れば、環境に負荷をかけずに経済成長していると見なして成長率にプラスとする一方、排出量が増えていればマイナスにする計算をベースにしています。グリーンGDPを導入により、温暖化対策で経済成長が鈍化したとしても、社会が受け入れやすくなるという側面があり、GDPに代わる新しい経済成長の指標として、期待が高まっています。
1991年~2013年の平均では、ドイツをはじめ欧州を中心に従来の経済成長率にプラスの評価となりました。一方、インドや中国等は温室効果ガスの排出増が経済成長率にマイナスで反映されました。
日本は2022年8月に初めて試算を公表
内閣府は環境への負荷を踏まえてこの「グリーンGDP」の試算を今年の8月に初めて公表しました。
今回まとめたのは1995年から2020年までの日本のGDPの実質の平均成長率をもとにした「グリーンGDP」で、試算によるとこの期間のGDPの成長率の平均は0.57%だったのに対し、0.47ポイント高い1.04%になったということです。これは省エネ技術の進展や再生可能エネルギーの導入で、2013年をピークに温室効果ガスの排出が減少していることなどが要因だとしています。
内閣府は経済活動とそれに伴う環境への負荷の関係を見える化するため、グリーンGDPの研究を進め、今後の本格的な導入を検討していくとしています。
今後の課題は?
「グリーンGDP」を示すことでGDPの成長率の低さをポジティブに捉え直すことができることはいいことでしょう。期待通りに機能すれば既存のGDPに取って代わる主な指標として国際的に健全な競争を促すことができる可能性があります。一方で環境コストを貨幣換算することが難しさも指摘されています。内閣府のホームページでも、環境・経済統合勘定(SEEA)の試算の難しさについて以下のように触れられています。
しかし、環境・経済統合勘定の体系自体、理論的成熟化の必要な点が残されており、また、今回の試算でも、多くの基礎データの仮定や論理上の割り切り等を行っている。
したがって、今回の試算値はその推計過程を十分理解した上で取り扱う必要があるとともに、今後とも、環境・経済統合勘定体系の研究を推進していくことが必要である。
引用:環境・経済統合勘定の試算について
参考:https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/satellite/kankyou/contents/g_eco1.html
この指標がどこまで世界的に認められていくか、またその中身の分析も今後必要になってくるでしょう。
文/編集部
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