三井住友DSアセットマネジメントはこのほど、同社チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏がその時々の市場動向を解説する「市川レポート」の最新版として、「再びドル売り・円買い介入か~政府・日銀の意図を探る」と題したレポートを発表した。詳細は以下のとおり。
政府・日銀は急速なドル高・円安の進行を受け、再びドル売り・円買い介入を実施か
ドル円は10月21日のニューヨーク外国為替市場において、一時1ドル=151円90銭台に達し、約32年ぶりのドル高・円安水準を更新した。しかしながら、その後は反転して一気にドル安・円高が進み、146円20銭台をつけた(図表1、一時的に144円台をつけたとの報道もある)。
ドル円が急速にドル安・円高方向に振れたことを受け、市場参加者の間では、政府・日銀によるドル売り・円買い介入の観測が強まった。
なお、神田真人財務官は10月22日の日本時間未明、記者団に対して「介入の有無についてはコメントしかねる」と述べ、9月22日の為替介入と異なり、今回は実施を明らかにしなかった。
ただ、10月21日のドル円は、151円を超え、152円の突破も試す勢いがみられたことや、当局が注目するボラティリティ(変動率)も上昇していたことから(図表2)、恐らく為替介入が実施されたものと考える。
米紙報道や地区連銀総裁発言から、FRBが利上げ幅縮小に向けた協議開始の可能性も
なお、10月21日は、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)の記事が市場で注目された。記事によると、米連邦準備制度理事会(FRB)は11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、次回12月の会合での利上げ幅縮小に関する協議を行う模様とのことだ。この内容が同日の日本時間午後10時頃に伝わると、米10年国債利回りは低下に転じ、ドル円もドル高・円安の動きが一服した。
その後、前述の通り、為替介入と思しき動きから、大幅なドル安・円高が進行した。また、この日は、サンフランシスコ連銀のデイリー総裁が、米カリフォルニア大学バークレー校で行われた講演で、「利上げペースを緩めることを協議し始める時期に来ている」と発言している。これらを踏まえると、FRBのなかで利上げ幅の縮小に向けた協議が近々始まる公算が大きいと考えられる。
当局は円安進行を遅らせたい意向だが、米利上げ幅縮小は不確実で頻繁な介入は効果が弱まる
実際にFRBの利上げ幅が縮小に向かう流れとなれば、ドル高・円安基調に変化が生じることも予想されるが、追加的な手掛かりは11月1日、2日のFOMCと、パウエル議長の記者会見での発言が待たれる。
さて、改めて為替介入について考えると、政府・日銀には、ドル高・円安に過度な弾みがつかないよう、為替介入によって、できるだけその進行速度を遅らせたいという意向があると思われる。
進行速度を遅らせている間に、FRBが利上げ幅縮小の議論を開始すれば、政府・日銀には好ましい展開となるが、利上げ幅は米国の物価次第であり、楽観はできない。なお、日本時間の本日朝方、ドル円は一時大きくドル安・円高に振れた(図表1)。
仮に連日の為替介入であれば、本来、頻繁な実施を想定するものではないため、次第に効果が弱まることも懸念される。為替介入に関する政府・日銀の難しい判断は、当面続く見通しだ。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい
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