職場内では“身内”の関係だからこそ、丁寧なコミュニケーションが必要
「能力は同じくらいなのに、感じがいいことで得をしている」――あなたのまわりにそんな人はいないだろうか。延べ5万人以上にコミュニケーションの指導をしてきた産業カウンセラーで、著書『言いかえ図鑑』シリーズがベストセラーとなっている大野萌子さんによると、「感じがいい人」は、絶妙なコミュニケーション術を無意識のうちに、あるいは意識的に身につけているという。
2022年9月30日に出版された『仕事も、人間関係も、驚くほどうまくいく! 「感じがいい人」の行動図鑑』(以下『「感じがいい人」の行動図鑑』)では、「感じがいい人」の65のアクションをピックアップ。なぜその言動が周囲に「いい感じ」を与えるのかを、わかりやすく解説している。
同書の内容の一部を5つのシーン別にクイズ形式で紹介していくので、ぜひセルフチェックしてみてほしい。第1回目では【日常会話】編、第2回目では【メール・WEB会議】編を紹介した。
第3回目の今回は、【職場】編。社内の人間関係を面倒と感じる人も少なくないが、ビジネスパーソンが最も多くの時間を過ごす社内の人間に与える印象で、日々の仕事を円滑にできるかどうかが決まってくる。職場で「感じがいい人」と思われるためのアクション例とは?
累計50万部突破のベストセラー『言いかえ図鑑』シリーズ著者の最新刊。『仕事も、人間関係も、驚くほどうまくいく! 「感じがいい人」の行動図鑑』(大野萌子著/小学館)。「日常会話」「メール・WEB会議」「職場」「社外・取引先」「プライベート」のシーン別に、65の「感じがいい」印象を与えるアクションを紹介している。
著者の大野萌子さんは、法政大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構(メンタルアップマネージャ(R)資格認定機関)代表理事。コミュニケーション・ハラスメント・メンタルヘルスに関連する研修・講演を、防衛省をはじめ大手企業等で年間150件以上行なう専門家
部下に仕事を頼む時に気持ちよくやってもらうには
A ◎◎さんには難しいかもしれないから、あなたに頼むよ
B あなたのリサーチ力を見込んで、この仕事を頼むよ
ヒント:部下に対する態度で一番重要なのは、「平等性」
上司が年下だったり、年下のデジタルネイティブの部下に教わることが多くなったり……。以前はごくシンプルだった上司と部下の関係も、どんどん複雑になってきている。上司の印象の良し悪しを端的に分けるのが、部下への仕事の頼み方。部下が忙しそうで頼みづらい時に、いい印象を与えて快く引き受けてもらえるのは、どんな頼み方なのだろうか。
「部下への接し方で、常に心に留めてほしいのが『能力を尊重すること』と『平等性』です。Aの頼み方は一見、部下の能力を高く評価しているように聞こえますが、他の同僚を悪く言ったり、部下同士を比較したりするような態度は、いい印象を与えません。Bのように、他者の比較でなく、個人を尊重し、期待や信頼を盛り込んだ依頼であれば、依頼された部下も前向きに仕事に取り組めるでしょう」(大野さん)
正解…B
部下を注意する時の場所は
A 緊張が少ないオープンスペース
B 他人の目にふれない別室
ヒント:部下の心理的安全性を確保しておくのも上司の務め
仕事の頼み方よりもさらに難しいのが、ミスをした部下への注意の仕方だ。感情的になると今の時代はパワハラと受け止められかねないし、気を悪くしないように遠回しに言っては大事なことが伝わらない可能性もある。また上司の言葉を受け入れやすい環境を整えることも大事だ。
「注意を受けている姿を同僚に見られるのが苦痛という人もいますし、上司と一対一で話すことに緊張してしまう人もいます。どのような環境なら心を開けるかは人によって違うので、一番いいのは、『◎◎の件について話したいのですが、場所と時間の希望はありますか?』と、率直に聞くこと。心理的な安全性を確保するのも上司の仕事の一環ですし、それが確保されて初めて、建設的な話し合いが進められるのです」(大野さん)
正解 …どちらも◎
上司に意見を主張する時に気を付けるべきことは
A 「私は◎◎だと思います」と、自分を主語にして話す
B 「みんなもそう言ってます」と、自分の主観ではないことを示す
ヒント:「みんな」の範囲は?
「上司に自分の意見を伝えるのが苦手」という人は多い。特にそれが上司の仕事の進め方への苦言のような内容なら、なおさら。しかし意見を伝えないといつまで上司は部下が抱いている不満が理解できず、部下は理解してもらえないことにさらに不満を膨らませるという悪循環になり、職場でのストレスがたまりがち。上司に意見を主張する時の、感じのいい伝え方のコツは?
「上司に言いたいことを上手に伝えるポイントは『事実』を『シンプルに』『穏やかに』伝える」ということ。例えば優柔不断な上司なら『そこが決まらないとその後の作業に支障をきたすので、提出期限を守るために、今決めていただけないでしょうか』というように、把握している現状を事実として冷静に伝えることが大切です。この時注意したいのは、『みんなもそう言っています』『普通は◎日以内に決定します』というように、他者を引き合いに出す言い方を避けること。そのほうが客観的データを示せて説得力があると思うのは間違いで、『みんなって誰?』『普通って何?』と疑問や反感を抱かれてしまいます。意見を言う時は、あくまでも自分を主語にして話すことが大事です』(大野さん)
正解…A
褒められた時の返しで印象がいいのは
A 「いや、私なんてまだまだです」と謙遜する
B 「◎◎さんのおかげなんです」とほめ返す
ヒント:ネガティブの沼に、相手を巻き込まないように
基本的に、誰だって褒められるのは嬉しいはず。それなのに褒められることに苦手意識を持つ人が多いのは、「そのまま受け止めると傲慢だと思われはしないだろうか」という不安を抱く人が多いからだ。また最近は特に若い世代で自己肯定感の低い人が増えていて、人と違ったり、目立ったりすることによって否定される対象となり得ることを恐れる人も増えている。ではどんな受け止め方が好感を持たれるのか。
「謙遜も度が過ぎると、褒めてくれた相手を否定することになり、不快な気持ちにさせることも。相手はあなたのことを認めて褒めてくれているのだから、その言葉を素直に受け止めて『ありがとうございます』とお礼を言えばいいだけ。それができる人のほうが好印象を持たれます。それでも不安だったら、『ありがとうございます。ラッキーだったんです』というように、偶然やたまたまであると伝えつつ受け入れてみては?また『◎◎さんの言葉がヒントになったんです』というように、他者への褒めを重ねて返せば、きっと好循環が生まれるはずです」(大野さん)
正解…B
結果はどうだっただろうか。「『感じがいい人』の行動図鑑」には、職場での感じのいいアクション例が12例も紹介されている。ぜひ参考にして欲しい。
※次回のテーマは【社外・取引先】編。
文/桑原恵美子
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