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この秋おすすめ!酵素、毒、言葉、目に見えないものを魅せる展覧会3選

2022.10.27

「芸術の秋」はアート鑑賞に励みたいもの。展覧会といえば絵画やオブジェなどをイメージするが、そればかりではない。中には、実際では目に見えないものをうまく表現した展示もある。

そこで今回は、目には見えないものを表現している展覧会を3つ取り上げる。それぞれどんな表現の工夫をしたか、見ていこう。

1.天野エンザイム「見えないもので世界はできている」展

一つ目は、天野エンザイムという各種酵素剤を製造・販売している会社の「酵素」をテーマとした美術展だ。

●どんな展覧会?

その名も「見えないもので世界はできている」展。2022年9月17日より、福井県の金津創作の森で開幕する「ほくりく発酵ツーリズム展」内で開催している。

酵素は、体内で重要な働きをする自然由来のたんぱく質の一種で、近年では食品分野にとどまらず、多様な分野で活用されているが、目には見えない酵素の具体的な働きや、その製造を手掛ける酵素メーカーの認知度は低い状況にあった。そこで様々な社会課題を解決する可能性をもつ酵素を広く知ってもらい、酵素を通じた持続可能な世界づくりを目指すためのプロジェクトを2021年にスタート。特設サイト「見えないもので世界はできている」を立ち上げた。今回の美術展はプロジェクトの第2弾に該当する。

●展示内容

展示では、酵素の世界の案内役「酵素くん」を中心とした世界の中、「見て・聴いて・触れて体感する」を楽しみながら、酵素について4つのコーナーで学ぶことができる。

1.イントロダクション「酵素と発酵の切っても切れない関係」

2.奇妙礼太郎さん&高井息吹さんが歌う“酵素の歌”とアニメーション「見えないもので世界はできているの歌」(動画)

3.触れて楽しむ酵素の世界「酵素の宇宙図」

4.じっくり学ぶ展示コーナー「酵素ってなんだろう?」

●表現に苦労した点

同社の経営推進室 尾崎氏は、今回、酵素という目に見えないものを表現するときに苦労した点について次のように述べる。

「今回、日本各地の発酵食品を紹介していますが、その生産のためにはすべて酵素の働きが欠かせません。酵素は、食品以外にも私たちの生活の中で身近に働いていますが、目に見えないということもあり、ほとんど人々に知られていないのです。展示にあたっては、私たちの周りで働いている酵素をいかにしてわかりやすく、身近に感じていただくかということに心を砕きました。

酵素について詳しく説明しようとすると、専門用語や化学式が出てきてしまい、一般の方には遠く感じられてしまいます。また酵素は主に微生物を通して発酵に関わっており、目に見えない酵素の働きを、目に見えない微生物を通して説明する必要があります。

そこで体感できる展覧会ならではの特徴を用いた、子どもでもわかりやすい酵素の働きの表現方法の模索に力を注ぎました」

●表現を工夫した点

具体的には、どんな風に工夫したのか。

「目に見えない酵素や微生物の世界を、目で見る、耳で聴く、手で触れるという3つの方式で体感いただけるように工夫を凝らしました。

ポールコックスさんのチャーミングなイラストとともに、歌って踊れる酵素のアニメーション動画『見えないもので世界はできているの歌』を展覧会場内で上映したり、特設サイトの人気コンテンツ『酵素の宇宙図』を手元のタブレットと連動するよう壁面へ投影したりしています。

説明パネルでは、酵素のはたらきや発酵との関係性について、酵素くんを通してやさしく学べるよう表現しています。

歌や動画、宇宙図を通して子どもたちに科学に興味を持ってもらうことはもちろん、歌詞や説明を読むことで大人でも新たな発見があるような内容になっています」

●鑑賞した人のリアクション

今回の展示を見た人からは、どんな感想が挙がっているのだろうか。

「展覧会場内では、画面に上映された酵素の歌とアニメーションに合わせ、画面前のスペースで小さな子どもたちが踊っている光景や、親子で宇宙図を動かしながら投影画面を興味深そうにご覧いただいている光景をしばしば見ることができました。

また『とっつきにくい酵素について非常にポップにまとめられていると感じた』『”酵素の宇宙”では、絵と分かりやすい解説から、酵素の世界での役割を具体的にイメージすることができた』などの感想もいただいています」

●開催概要

「見えないもので世界はできている」展
開催期間:2022年9月17日(土)〜12月4日(日)
開催場所:金津創作の森美術館アートコア(福井県あわら市宮谷57-2-19)
公式サイト:https://mienaimono.jp/

2.国立科学博物館 特別展「毒」

東京、上野公園にある国立科学博物館では、2022年11月1日(火)から2023年2月19日(日)まで、「毒」をテーマにした特別展を開催中だ。

●どんな展覧会?

自然界のあらゆるところに存在する、動物、植物、菌類、鉱物や人工毒などの毒について、動物学、植物学、地学、人類学、理工学の各研究分野のスペシャリストが徹底的に掘り下げて解説している。

●展示内容

今回の展示の毒数は250点以上にも上り、各分野から網羅されている。例えばハブやオオスズメバチ、イラガの幼虫といった毒生物の巨大模型の展示や、東大発の知識集団QuizKnock(クイズノック)から出題される様々な毒クイズの出題などバラエティに富んだ展示となっている。

●表現に苦労した点

毒という目に見えないものを表現するときに、苦労した点について、同館の植物研究部 細矢剛氏は次のように述べる。

「私は、以前『菌類のふしぎ』という特別展を担当し、カビの展示をどうするかに苦労しました。カビも直接的には目には見えないものです。しかし、拡大したり、たくさん集まることによって肉眼でも見える状態になります。毒も同じことで、物質ですから、たくさん集めると見ることができます。しかし見えるものは大部分『白い粉』であることも多く、正直、面白くありません。また、大量の毒を集めて展示すること自体がリスクとなります」

コモドオオトカゲ

●表現を工夫した点

その表現において、どんな工夫したのだろうか。

「毒そのものではなく、毒の所有者(生物)や、原体(鉱物)などにスポットを当て、そこからどのような毒が得られるかを紹介しました。また、構造式が分からないと理解できないような説明をできるだけ避け、『構造なしでも理解できるが、構造を知っていればもっと面白い』という展示を心がけました。つまり羅列的になるのではなく『どのような毒なのか』という作用や化学構造上の特徴などが深掘りできるように、様々なエピソードと絡めました。

また、目に見える毒については、紫外線で発光させるなどして毒の存在そのものを可視化できるようにしたコーナーもあります。

全体を通じて、毒の特性である『毒と薬は同じもの。使う量によって効果が変わる』という点が伝わるように工夫しました。展示の最後の部分にそのメッセージが込められています」

毒きのこ 写真左から ドクツルタケ、カエンタケ、オオワライタケ

●開催概要

特別展「毒」
開催期間:2022年11月1日(火)〜2023年2月19日(日)
開催場所:国立科学博物館(東京・上野公園)
公式サイト:https://www.dokuten.jp/

3.国立民族学博物館「Homō loquēns「しゃべるヒト」~ことばの不思議を科学する~」

大阪にある国立民族学博物館では、特別展「Homō loquēns 『しゃべるヒト』――ことばの不思議を科学する」を、2022年9月1日(木)から 11月23日(水・祝)まで開催中だ。

●どんな展覧会?

身近にありすぎてほとんど振り返ることのない「コトバ」をテーマに、言語学だけでなく、文化人類学、工学、教育学、脳科学、認知心理学、医・歯学等の120名を超える国内外の研究者が協力して、その不思議を展示している。

●展示内容

国立民族学博物館の教授である菊澤律子氏は、「コトバは楽しい」ことを知ってほしい、また、「ヒトとコトバとの関係はいろいろだ」ということを伝えたいという思いから本展示を企画したという。

本展では、一般的な「コトバ=外国語」というイメージからは離れて、コトバに関するメカニズムと、ヒトとコトバの関係を紹介している。「言語とはなにか」を「コトバが伝わるしくみ」、「コトバを発する身体のしくみ」、「コトバを身につけるしくみ」を通して考えてもらう展示となっている。また、ヒトとコトバの関係がライフイベントによって大きく変わり得ることを伝えるため、「言語ヒストリー」という概念を提唱し、社会でさまざまな形で言語と付き合いながら活躍する20名の言語ヒストリーを紹介している。

日本語、英語、日本手話の三言語が解説言語となっており、実際に三言語が使われる様子を体験できる場にもなっている。

●表現に苦労した点

同博物館での本展示はモノを見せる展示が多く、当初は、館内チェックで「何を見せたいかはわかるが、何が見られる展示なのかが全然わからない」とマイナス点がついたという。

「モノの展示と言語展示の違いは何か、と考えたところ、言語展示では“現象”を見せることが大きな違いなのではないかと思いました。課題をまとめたところ、次の3つがありました」

1.シグナル(目にみえないモノ)をどう見せるか

「言語を用いるとき、話者が意味をシグナルとして生成し、聞き手がその理解を行います。音声の場合には空気振動、手話の場合には光学シグナルとして流れていってしまうため、モノのように静的に並べて見せる方法を考える必要があります」

2.言語の性質(現象)をどう見せるか

「こちらは現象の見せ方になります。例えば、語順や発音は、話し手の意図や条件により変動しますが、その『現象』を、どう展示として表現するかということも課題です。これは物理現象をどのように展示するのかということに性質が似ています」

3.言語と言語以外の要素との関係(現象と現象の関わり)をどう見せるか

「言語と言語以外の要素との関わり、例えば話し手の身体や心理状況、地理的な要素や環境などとの関係をどう見せるかも課題です」

「これらの課題を解決し、さらに言語展示というのは、どんな風にみなさんに見てもらえるか、そして『面白い』『すごいね』と思ってもらえるかと考えなければなりません」

●表現を工夫した点

実際、どのような工夫がされたのか。

1.考える素材を提供

「科学のおもしろさは分析すること、また答えが一つではないことにあります。『これ言語?』『どっちが便利?』『何がへん?』などのコーナーでは、素材を提供して、ポイントを吹き出しで投げかける形で、来館者ひとりひとりに考えてもらうコーナーにしました」

2.物理的メカニズムを現象に結び付ける素材を提供

「コトバのモトは物理です。その物理とコトバのつながりを考えてもらうための素材を科学展示風に提供してみました」

3.ヒトとの関わりについて考える素材を提供

「ヒトもコトバも一般化・抽象化されてあたかも完成形があるようにとらえられていますが、実際には、人の身体も、ひとりひとりが使うコトバも、それぞれ他とは異なっています。さらに、ヒトとコトバの関わりも、ひとりひとり様々です。異なる『私とコトバの関わり(=言語ヒストリー)」を持つ方々20名に登場していただき、さらに、来館者それぞれのご自身の言語ヒストリーを考えていただくことで、コトバへの新しい視点に気づいていただける仕掛けをつくりました」

●開催概要

特別展「Homō loquēns『しゃべるヒト』――ことばの不思議を科学する」
開催期間:2022年9月1日(木)~11月23日(水・祝)
開催場所:国立民族学博物館 特別展示館(大阪府吹田市千里万博公園 10-1)
公式サイト:https://loquens.site/

3つの展示は、いずれも目に見えないものを展示として表現するために、さまざまな工夫を凝らして「楽しめる」展示に作り上げられている。ただできあがったものを漠然と見るのでなく、ユニークな表現技法にも着目してみることで、より一層楽しみが広がるのではないだろうか。

取材・文/石原亜香利


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