小学館IDをお持ちの方はこちらから
ログイン
初めてご利用の方
小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼントにお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
新規登録
人気のタグ
おすすめのサイト
企業ニュース

法人・自治体向けに年内から提供開始!KDDIが日本の衛星通信60年目にSTARLINKを展開する狙い

2022.10.25

日本の衛星通信は、2022年11月に60年目を迎える。

そんなタイミングでKDDIは、イーロン・マスク率いるスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)の衛星通信『STARLINK』を使ったサービスを発表。国内で展開する法人と自治体向けのサービス『STARLINK BUSINESS』についてオンライン説明会を開催した。

世界で4社目、国内唯一の認定『STARLINK』インテグレーターへ

KDDIの宇宙衛星通信の歴史は古く、1963年に日本で初めて日米間のテレビ中継受信に成功。これはケネディ大統領の暗殺のニュースだったことでも有名だ。これまで衛星通信は、多地点への通信に優れていることからテレビ伝送に利用されてきたが、2011年の東日本大震災では、対災害性の点でも着目されたという。

ちなみにKDDIは、国内唯一の認定『STARLINK』インテグレーターで、これは世界で4社目。『STARLINK』回線のビジネスだけではなく、設置・導入支援や通信/DXの総合提案、構内LANの構築・閉域網・クラウド・セキュリティ、カスタマーサポートもパッケージしてさまざまな要素を組み合わせた複数のプランを提案していくという。

年内にスタートさせるが、料金については今後発表する予定だ。利用エリアについては、スペースXのサイトには個人向けサービスは東日本側だけが利用できるように表示されているが、『STARLINK BUSINESS』は一部制約がある地域もあるが全国に対応しているという。

2022年10月11日にスペースXは、アジアで初めて『STARLINK』を展開する国が日本だとツイート。「日本は自然が豊かで山間部が多く、漁業が盛んで島が多い。アジアで展開する前に、まず日本がロールモデルになると期待が込められていると感じています。我々も先駆者としての役割を担っていきたいと考えています」(松田氏)

今回の説明を担当した、KDDI経営戦略本部長兼事業創造本部長の松田浩路さん。現在は新規事業を担当しているが、入社当時に衛星通信を担当していたこともあり、個人的にも思い入れがあると語った。

『STARLINK BUSINESS』を法人・自治体向けに年内提供開始

これまで日本の衛星通信は、主に赤道上空約3万6000キロメートルの静止軌道上にあるものを利用してきた。衛星が離れた場所にあるので、地上との通信の往復に0.2~0.3秒かかり、電話などでは0.5秒ぐらい誤差が出る遅延問題があったという。一方で多地点へ強く、長野オリンピックなどテレビ放送などで活躍してきた。これまでの衛星通信の問題を解消するために低軌道衛星として低い位置に衛星を配置するコンセプトで運用されるのが『STARLINK』だ。遅延が少なく容量の大きい通信が可能で、従来の衛星よりも距離が近いことから出力する電波の量が少なく、相対的に干渉する量も少なくなるという。さらに『STARLINK』の強みは、すでに数多くの衛星が打ち上がっていて、すぐにサービスを利用できる点だ。

スペースXは、複数の人工衛星を連携させる「衛星コンステレーション」としては世界最大で、それを支えているのがロケット『Falcon9』による打ち上げ技術の確立。ロケットの一番上に人口衛星や宇宙船「ドラゴン」などを搭載可能で、衛星の打ち上げコストが劇的に下がっているという。スペースXは、今年だけで無人と有人を合わせて10月19日までに47回のロケット打ち上げを行っており、この中には『STARLINK』の衛星も含まれている。通信衛星は今年だけで1400機以上を打ち上げている。「衛星がどんどん打ち上がることで、宇宙空間の衛星と地球の地上局をつなぐことが大事になってくる。そこを担うのがKDDIの役割ではないかということでパートナーシップが始まった」と松田さんは語る。

『STARLINK』はグローバルサービスなので、日本で利用するための調整として2020年4月には総務省に技術資料を提出し、2021年9月にau通信網への採用を発表。山間部や人がいない場所など、auの基地局や光回線が手配できないようなところでも『STARLINK』を使ってauのスマートフォンの利用エリア化していくという。

KDDIでは、すでに『STARLINK』の基地局バックホール回線としての利用を発表しているが、『STARLINK BUSINESS』は『STARLINK』のアンテナ端末にWi-Fiや有線LANをつないで、そこから地上局経由でインターネットにつながるようになる。ちなみにスマートフォンによる直接通信は、『STARLINK』は今年8月にアメリカで発表しているが、日本では地上で使っているスマートフォンの周波数をそのまま衛星に使うことに関して制度上の調整が必要になるという。一方で「衛星と地上の距離が550キロもあるので、携帯電話の電波が届いたとしても低速な回線になる」とのこと。

アンテナの仕様は、個人向けサービスと比較するとハイパフォーマンスになっており、高速性、安定性、高耐久性の3点に優れているという。個人向けの2倍以上の性能で、受信速度は最大350Mbps、送信速度が最大40Mbps、遅延時間は20~40msになる。ビジネス用途では帯域を優先的に利用できる仕組みになっており、従来は100度ぐらいだったアンテナの上空視野角も140度まで35パーセント拡大されている。屋外に設置するため厳しい気象条件にも対応する耐久性を持ち、防水・防塵はIP56準拠で強い噴流水耐性を持つ。雪の多い地域などで有効な融雪能力も75㎜/hで従来の1.7倍に向上している。

『STARLINK BUSINESS』のアンテナは四角形で自動で稼働する。隣の丸形が個人向けに販売されているものでサイズも違う。今後、個人向けアンテナも四角形のデザインになるという。

『STARLINK』で人が住んでいない場をサポートしていく

『STARLINK』によって、今まで電波の入りにくかったところや山間部に通信を届けることでデジタルデバイドを解消して、さまざまな社会課題にも対応していくという。これまでスマートフォンを利用できなかった場所でピンポイントに利用できることのメリットは大きい。例えば山小屋周辺だけWi-Fiでいいなら『STARLINK』で対応可能だという。KDDIでは、山岳会などと話して登山小屋などにリーズナブルな提案をしていきたいとしている。ほかにも建設業界やインフラ産業などではニーズも多そうだ。そして海上でも利用の可能性が広がる。『STARLINK』は「MARITIME」という海上で利用できるサービスも提供しているが、現時点ではアメリカや欧州の海域周辺が中心で日本では提供されていない。これが拡大すれば通信できる範囲が広がり、基地局が作れない海上でも商船、漁船、作業船、クルーズ船などでスマートフォンを利用できるようになる。海上で利用することに関しては、総務省とも協議して領海内(12海里)は早期にやっていきたいという。

「従来は住民がいるエリアを中心に基地局を作っているが、普段はあまり人が住んでいないが人の行き来があるところをサポートして、未開の土地を開拓し、あるいは元々は携帯電話の電波が入らないところに高速な通信環境を整えていきたい。企業や自治体などの事業活動の維持については、山間部や離島だけでなく都市部でも対応し、病院などの公共サービスの継続維持のためのバックアップ回線にもなります。日本は自然災害が多いので、避難所に通信環境を提供して整備するなど、『STARLINK』によって新しい利用シーンを作っていけるのではないかと期待しています」(松田さん)

構成/久村竜二

@DIMEのSNSアカウントをフォローしよう!

DIME最新号

最新号
2024年3月15日(金) 発売

DIME最新号はデザイン一新!大特集は「東京ディズニーリゾート&USJテーマパークの裏側」

人気のタグ

おすすめのサイト

ページトップへ

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標(登録番号 第6091713号)です。詳しくは[ABJマーク]または[電子出版制作・流通協議会]で検索してください。