何かのキャンペーンに参加すると、ポイントが付与されるといったキャンペーンがよく行われている。貯めたポイントを買い物に使えるというのはこの物価上昇時代に消費者にとってもありがたいことだ。そんな近年のポイント活用マーケティングの最新手法について紹介する。
今回は、ポイント還元などポイ活施策で成功した顧客マーケティング手法を2つ紹介。顧客の心をつかむ施策を探しているなら、参考にできるだろう。
楽天ポイントのポイントバッククーポンでオンライン・オフラインを迅速につなぐ
楽天グループ株式会社は、楽天IDや楽天ポイントを軸にした顧客マーケティングソリューションを提供している。そのうちの「RMP – Omni Commerce」のメニューの一つが「ポイントバッククーポン」を用いた施策だ。
ポイントバッククーポンとは、楽天が提供する「Rakuten Pasha」においていえば、ユーザーがクーポンを取得し、店舗で指定の商品を購入後、レシートを送付することで楽天ポイントを受け取ることができるクーポンのこと。このポイントバッククーポンを用いることで、店舗での購買を促すことができる。ここで一つの事例を紹介する。
●事例
キッコーマン飲料株式会社(現・キッコーマン食品株式会社)は、2021年当時、新発売の野菜飲料についてコロナ禍で試飲の機会が失われ、顧客に商品をアピールする機会が激減していた。
そこで2021年3月から5月にかけて、楽天と協業し、販促施策を実施。「Rakuten Pasha」上で、「つぶ野菜」、「リコピンリッチ」という商品のポイントバッククーポンを発行してトライアル促進を実施した。
結果、他社で従来実施している施策と今回の新規顧客獲得単価を比較すると、「つぶ野菜」「リコピンリッチ」ともに1/2~1/3程度に削減できたという。またわずか1ヶ月で目標としていたKPI(重要業績評価指標)を達成した。
●施策の特徴
楽天のアド&マーケティングカンパニー Data & DX ソリューション部 ヴァイスジェネラルマネージャー山口高志氏はこの事例の特徴について次のように述べる。
「キッコーマン様の事例で利用したメニュー『ポイントバッククーポン』は、デジタル起点でユーザーのオフライン購買を促進するメニューになっております。特徴は次の4点です」
1.実施スピードが速い(最短10営業日で実施可能)
2.どこの小売店も対象にすることができる
3.成果報酬型のため販促効率性においてリスクが低い
4.購買データを分析することでPDCA(Plan、Do、Check、Act)をまわすことができる
「4については、ポイントバッククーポンを活用した施策の場合、購買データを分析することで、例えば、新規で購買したユーザー率の評価なども行えます」
●ポイントバッククーポンで成果を出す秘訣
今回、ポイントバッククーポンによって、1ヶ月程度でKPIを達成するなどの成果が出た。このような成果を出す秘訣にはどんなことがあるのだろうか。
「ポイントバッククーポンの利用にあたっては、施策目的や実施ブランドに応じて、付与する楽天ポイントのポイント数を精査してからキャンペーンを設計することが重要です。例えばトライアルを促す目的で、サンプリングのように実施する場合は、付与するポイント数を高めに設定することもできますし、ちょっとしたフックとなるような購買動機付けを行いたい場合は10~20ポイントと低めに設定して継続的に実施することも可能です」
●ポイントバッククーポン施策に適した商材とは?
ポイントバッククーポン施策に適した商材はあるのだろうか?
「飲料や酒類、食品などユーザーが日常的に必要となる商品に加え、日雑品といった定期的に購買を図る商品など、幅広く利用いただけます。特に、ちょっと品質にこだわったプレミアム商品や、健康意識の高まりをとらえた商品をトライアルいただくきっかけをつくることが、より効果的です」
●ポイント活用施策を成功させるには?
ポイントを提供することで顧客を動かすことは近年のトレンドとなっているところがある。ポイントを活用する施策全般について、より効果が出る施策について、山口氏に教えてもらった。
「ポイントバッククーポンを活用した施策実施時に、Twitterでの投稿を実施いただくキャンペーンを併設することや、商品を一つ購入した際に個別でインセンティブを付与することに加え、『複数個買うことで、抽選で楽天ポイントを○ポイントプレゼント』というようなボーナス企画を行うことで、施策をより強化することが可能です。
ブランドのマーケティング強化の施策としては、各種広告施策と販促を楽天IDで接続する方法があります。楽天IDに基づき分析したユーザー層に広告を打つことで販促につながります。また、購買情報だけではわかりえない顧客の購買背景を、インターネット上でアンケートを行っている『楽天インサイト』による調査で深掘りしたりすることで、ユーザー像の解像度を上げることも可能です」
ポイントバッククーポンは、消費者を惹きつける施策であると同時に、オンラインとオフラインを巧みにつなぐ最先端の手法といえる。成果を出すスピードが速く、楽天IDなどを活用することでさらに施策が加速しそうだ。
ポイント付与でファンづくりにも効果「LINEポイントインセンティブ」
続いてはLINE株式会社の施策。LINE社は、LINEのサービスを利用することで獲得できるポイント制度を提供している。
このLINEポイントを商品購入のインセンティブとして付与する施策「LINEポイントインセンティブ」を活用したキャンペーンは、LINE社が提供する王道の施策の一つだ。すでに大手企業が販促に利用し、成果を出しているという。同社の担当者は次のように語る。
「主な施策のパターンとして『対象商品を購入するとLINEポイントがもらえる』というキャンペーンを実施いただくケースが多いです。成果の一例としては、キャンペーン期間中の販売数増加、ある企業様では参加者数の目標対比200%達成などが挙げられます(クライアント調べ)。
また、参加者がLINEポイントを獲得する際に、自動で企業様のLINE公式アカウントに『友だち』追加される仕組みがあります。これにより大幅な『友だち』数増といった成果も出ています。友だちユーザーとは継続的にコミュニケーションが取れるため、単発的な成果だけでなく『ファンづくり』という長期的な価値創造が可能です」
●ポイントインセンティブによって成果を出す秘訣
ポイントインセンティブを提供することで成果を出すにはどんな秘訣があるだろうか。LINEポイントの場合について聞いた。
「LINEポイントの最大の特徴として、LINEアプリを利用いただいているほぼすべてのユーザーが使うことができるという点があります。また、企業様が開設するLINE公式アカウントとの相性も良いため、キャンペーンの告知などをLINEからメッセージ配信で行ったり、キャンペーンの参加方法自体にLINEを使っていただいたりすると、ユーザーの離脱が少なく、反応率が高まる傾向にあります」
●LINEポイントインセンティブ施策に適した商材の特徴や傾向
本施策で成果が出やすい商材の特徴や傾向は?
「LINEポイントは『LINEスタンプ』やデザインを変えられる『LINE着せかえ』をはじめとしたLINEで提供している様々なサービスへの利用が可能なため、少額のポイントでもユーザーに喜んでもらうことができます。
そのため、低価格の商品で少額のポイント付与から、高価格帯の商材で高額のポイント付与まで様々な使い方に対応しております」
●ポイント活用施策を成功させるには?
ポイントで顧客を動かすことは近年のトレンドとなっている中、それにプラスアルファで実施するとより成果が出る方法はあるだろうか。同社の担当者は次のように語る。
「LINEポイントの場合、先述の通りLINE公式アカウントとの相性が良いことから、ユーザーがLINEポイント獲得時に企業のLINE公式アカウントと友だちになることで、継続的な関係性を築くことができます。また、LINEポイントをフックにして、LINE公式アカウント内でアンケートを取得し、回答内容に応じてユーザーに即したコンテンツを送ること等も可能です。このようなファンづくりとアンケート実施によるコンテンツ提供などは、より成果が期待できると考えられます」
ただポイントを付与するだけでなく、企業アカウントとつながれるというメリットは企業と消費者双方にありそうだ。ポイント施策はSNSを通じたファンづくりにも効果が期待できる。
最新のポイント活用の顧客マーケティングは、オンラインとオフラインをつないだり、SNSにおけるファンづくりにつなげたりする形で、より効果や副産物が得られるようだ。ぜひヒントにしてみよう。
取材・文/石原亜香利
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