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寝具メーカーの西川が「昼寝」に着目した理由

2022.10.26

不定期の新シリーズ「イノベーションの種を育てる人」。

新製品には、改革や刷新が埋め込まれている。重要なのは小さな改革や刷新、新機軸を積み重ねることだ。それが産業構造改革をも巻き起こすイノベーションへと発展していく。

この連載は新商品を世に送り出した開発担当者や企業内研究員に、その発想と製品完成までの創意工夫と試行錯誤を、そして新製品がもたらした次のイノベーションの予感を紹介する。

シリーズ第一回はお昼寝枕。寝具の西川株式会社が2018年に発売した「konemuri」と、2022年リニューアル発売した「konemuri∔」だ。ビジネスパーソンの6割以上が睡眠に不満を抱いているといわれる昨今、サボりの代名詞でもある昼寝を推奨、昼寝専用の枕をシリーズ化した。昼食後の15~20分の昼寝は睡眠不足の解消を促し、疲労回復、集中力アップ、仕事の効率アップにつながる。私のような不眠症気味の人間には、よくぞ考えてくれたと膝を叩く逸品なのである。

西川東京本社の地下一階、「ちょっと寝ルーム」に置かれた円卓テーブルを挟んで、お昼寝枕「konemuri」開発のメインスタッフ、商品第2部第3課の比護努さんと、お昼寝枕開発をアシストした西川社内の日本睡眠科学研究所の研究開発室のメンバー、安藤翠さんに話を聞いた。

よく眠れると熟睡の違い

睡眠は記憶の整理や定着、免疫力の維持、心のバランスを整える等、身体のメンテナンスを司っている。

――比護さんも安藤さんも、夜はぐっすりと眠れるタイプですか。

「ええ、夜布団に入ればスッーと」私の質問に二人はうなずくが、寝具メーカーに入社し熟睡の奥深さを知ったと安藤は言う。

「例えば弊社の4層特殊立体構造のマットレスを使ってみると昼間、思考力が低下する時間が減りました」

比護も言葉を継ぐ。

「僕は羽毛布団ですね。入社して初めて体験して、たった一枚で軽くて暖かい。羽毛布団での爆睡は、人生で初体験といってもいいです」

比護は枕の開発を手掛けてきた。いい枕は後頭部と肩を支え、首と寝具の間に空間を作らないことが重要だ。ユーザーそれぞれに合ったオリジナル枕の開発等を、社内の研究所のスタッフとともに商品化してきた。

昼寝って、サボりじゃないか

ある日のことである。比護は運転中に眠気を感じ、パーキングエリアで車を止め15分ほど仮眠を取った。すると疲労が回復して頭がスッキリ、集中力が増していることに気づく。脳裏にふと、アイデアが閃いた。

昼寝はいいぞ、昼寝用の枕はニーズがあるんじゃないか。

新しい市場への挑戦はどの企業も奨励するが、「弊社はそれが強い」と、比護は言う。“ユーザーに健康を届ける”ことは、寝具メーカーとして大きなテーマだが、昼寝はその主旨にも適っている。早速、部署内で提案し、会議が重ねられた。

「昼寝ってサボりの象徴みたいなもんじゃないか。イメージ悪くないか」

上司や同僚からのそんな声に、比護や昼寝枕に肯定的なスタッフが反論する。

「確かに昼寝=悪という印象はありますが、昼寝は疲労回復につながり集中力が増し、午後の仕事の効率アップが期待できます」

会議に加わった社内の研究所の研究員、安藤も「体内時計の働きを考えたとき、お昼過ぎに眠くなるのは、自然なことという論文もあります。仮眠を取り眠気を軽減させることで、午後の仕事のパフォーマンスアップが期待できます」と、アカデミックな面からバックアップ。

「社内の女性専用ルームで仮眠しているスタッフもいます。女性にも午後の効率アップにつながるお昼寝を取ってもらいたいですね」と、安藤は言葉を足した。昼寝の奨励は“働き方改革”の主旨にも適っている。

「よし、やってみるか」上司の後押しで、“お昼寝枕”の開発に着手がスタートした。

「konemuri」使い方はそれぞれ

比護はこれまで熟睡のための商品を手掛けてきたが、今回は15分程度の昼寝に適した枕というこれまでにない発想の商品開発だ。さて、どんな商品を世の中に送り出すか。

「座った状態での仮眠に適していること、収納に困らないことも大切な要素だな」
「座ったまま、デスクにうつ伏して昼寝をするわけだから、腕の負担を軽減しなければならないぞ」
「お腹に圧迫感を抱く人もいるだろう」
「肩や腰に負担を感じる人もいるに違いない」
「つまり、昼寝用枕の使い方は個々まちまちでいい。腕でもお腹でも腰でも、机にうつ伏して昼寝をするときに、クッションとして用いて、リラックスしてもらおう」

比護たちの部署のスタッフや研究所の安藤の意見、デザインチームの考え。さらに社員の新商品へのつぶやきを参考に、昼寝用枕は具体化していく。

試作品で昼寝をした社員からは、「なるほど、机にうつ伏せて仮眠しても腕がしびれない」等、高評価が相次いだ。展示会でも“いいんじゃないか”というアンケートの回答が多かった。昼寝のときに使えるクッションを販売する寝具メーカーはあったが、昼寝用の枕をシリーズ化した同業他社はない。業界初の試みだ。新しい発信にこそ意味がある。

「熟睡用ではない、15分程度のちょっと昼寝のための枕だから、かわいさが伝わる、楽しんで使ってもらえるものにしたいね」

そんな声を生かして、お昼寝枕シリーズの名前は「konemuri」。キャッチフレーズは~広げようこねむり(お昼寝)文化~、発売開始は2018年8月だった。

全8種類でスタートしたお昼寝枕「konemuri」は、やがて新型コロナウイルスの蔓延を逆手にとり、新シリーズへと展開していくことになる。

その詳細は、明日アップする後編で詳しく紹介する。

商品情報:https://shop.nishikawa1566.com/shop/e/ekonemuri/

取材・文/根岸康雄

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