■連載/Londonトレンド通信
第66回ロンドン映画祭が、10月16日に閉幕した。閉幕映画となったのはライアン・ジョンソン監督『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』。12月23日からNetflixで配信される。
開幕映画『マチルダ・ザ・ミュージカル』も、閉幕前日の15日にワールドプレミアされた『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』も、やはりNetflix配信となる映画だ。
映画祭、試写も配信の存在感が増す
今回の映画祭には、そのほかにもNetflixが配信、制作に名を連ねたりもする映画が多かった。
ロンドン映画祭は、これからの公開を待つ映画を集めた、映画のショーケースだ。ここでお披露目される作品に加え、三大映画祭での受賞作など、注目作が並ぶ。その中で年々Netflixをはじめとする配信映画の占める率が高まっている。
映画祭には、映画のキャスト、スタッフが参加して華やかに上映が行われるガラがつきもので、映画人がファンと集う、まさに祭りだ。人が集うことに意義があるわけだが、そこで占められるのが配信映画というのは皮肉にも感じる。
一方で、家に居ながら観られる配信が便利なのは動かせない事実でもある。実際、映画祭でのプレス試写も、かつては劇場上映のみだったものが、最近ではオンライン配信も加わった。
数百本の映画が上映されるロンドン映画祭、配信のおかげで、試写できる映画の数は格段に増えた。配信の便利さを享受しつつ、集う楽しさがある映画館、映画祭も廃れないでほしいと願うのは欲張りだろうか。
さて、華やかな方に戻ろう。『ナイブズ・アウト グラス・オニオン』の閉幕上映には、主演ダニエル・クレイグはじめ主要キャスト、スタッフが勢揃いした。
Dave Bautista, Kathryn Hahn, Leslie Odom Jr., Janelle Monáe, Rian Johnson, Daniel Craig, Edward Norton, Kate Hudson, Jessica Henwick and Madelyn Cline attend the “Glass Onion: A Knives Out Mystery” Photocall during the 66th BFI London Film Festival at The May Fair Hotel on October 16, 2022 in London, England. (Photo by Tristan Fewings/Getty Images for BFI)
この映画は同じくジョンソン監督による『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』(2019)の続編となる。
主人公はダニエル・クレイグが演じる探偵ブノワ・ブラン。エキゾチックな名前の通り、強い訛りのある英語で話す。クレイグと言えば007ジェームズ・ボンドだが、ボンドガールとあれこれあるのがお約束になっているボンドと、ブランは正反対のキャラだ。
会見では、ジョンソン監督によって「クイアである」ことが明かされた。様々な意味があるクイアだが、監督はゲイを指しているようだ。そう聞くと、いろいろと合点がいく。ブラン自身のミステリーが1つ解かれたというところか。
そして、メインのミステリー、今回、ブランが解くミステリーの舞台となるのは、億万長者(エドワード・ノートン)の持つ島に建つ豪邸だ。持論を滔々と説く成功者にして大金持ちのハンサムという、反感しか抱かせないような嫌味な男に、ノートンがよくはまっている。
その島に、デザイナー(ケイト・ハドソン)、政治家(キャスリン・ハーン)、ユーチューバー(デイヴ・バウティスタ)らが招待され、やってくる。ゴージャスな舞台に、ゴージャスな面々が揃うわけだが、こちらはこちらで、それぞれに胡散臭いのが、ミステリーの背景になる。
昔の友達グループらしいが、最初から不穏な空気が漂う。招待されたのが間違いではという謎めいた女性(ジャネール・モネイ)と彼らの間に何かいきさつがあるらしい。
そこからスタートして、殺人、謎ときが始まるのだが、今回はカメオ出演が楽しい。中でも、後半ひょっこり顔を出す主役級の俳優は、前半でも声だけ出していて、顔を見ると、そういえばあの声はこの人と一発でわかる。それだけに、声を聞いた時気づけなかったのが、個人的には謎が解けなかったより悔しい。
文/山口ゆかり ロンドン在住フリーランスライター。日本語が読める英在住者のための映画情報サイトを運営。
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