連載/FIREの向こう側
世はすっかり「FIREブーム」。資産運用でお金を殖やし、「経済的な自由を得よう!」とうたう記事やテレビ番組がずいぶんと増えた。が、それらに現実味を感じることができずうんざりしている人も多いだろう。
どうしてFIRE(Financial Independence,Retire Early)は遠いものに感じてしまうのか――『投資をしながら自由に生きる』の著者で、自身もFIREしたという投資家の遠藤洋さんに、本企画では素朴な疑問をぶつけてみることで「自由に生きる」ための方法を探っていきます。
Question「いつも『失敗したらどうしよう』と心配になります」
「仕事でも『失敗したらどうしよう』と心配したり、『評価が下がったら嫌だな』と、なかなか思い切って仕事ができません。どうしたら失敗しないようになるでしょうか?」(26歳・会社員・女性)
Answer「失敗はして当然だし、たくさんしたほうがいい」
まず、多くの人は「失敗はできるだけしないほうがいい」と考えていないでしょうか。僕は「失敗して当然」、「失敗はたくさんしたほうがいい」とすら考えています。失敗を気にしたり、他人の目を気にしすぎるのは、日本特有の文化かもしれません。
8月、3週間ほどアメリカに行っていたのですが、向こうの人たちって全然人の目を気にしないんですよね。ブリーフ1枚で自転車に乗ってるおじさんがいても誰も気にしない(笑)。日本でそんなことやったら捕まるんじゃないかって、誰もやらないですよね。
公園にはハトに餌をあげてるおじさんがいて、体中にハトがまとわりついて、頭の上にもハトが乗ってるんですよ。でも誰も気にしないし、本当に自由なんですよね。
ビジネスの世界を見ると、アメリカでは事業を起こしたスタートアップは4年で半数以上が消えていくそうです。それだけ失敗も多くあるということです。でも、そんなものは失敗のうちに入らない。別に失敗しても何の問題もない、みたいな感覚なんですよね。日本人もそれくらいの感覚を持って、「失敗して当然じゃん」くらいのマインドを持ったほうがいいと思います。
失敗の中から“学び”を得る
僕自身も本当にいろいろな失敗をしてきましたが、その失敗の中に“学び”がたくさんありました。
何かやってダメだったことから“学び”があり、成長に繋がるんです。失敗をたくさんした経験がある人間って強いんですよね。なので、失敗はどんどんしたほうが僕はいいと考えています。失敗したことがない人って、結局、挑戦したことない人でなんです。
例えば「1年後に投資をしよう」と準備万端にしても、やっぱり投資には想定外のことがいっぱい起こるんですよね。一方、その間に見切り発車で投資を始めた人は、その1年の間にトライして失敗して、またトライして失敗して、1年後には何もやっていない人と比べて全然違うところに立っているはず。失敗は恐れず、行動に移すことが大切です。
やってみてダメだったり何か違ったとわかることって、一歩前に進んでるんです。発明王のトーマス・エジソンも「失敗ではない。うまくいかない1万通りの方法を発見したのだ」という名言を残しているように、失敗したことで「そのやり方はうまくいかない」ことがわかったわけで、次は別のやり方を考えればいいんです。失敗ってネガティブなものではなく、ポジティブなことだと思います。
価値判断を「他人軸」ではなくて「自分軸」に置く
それでも「失敗したらどうしよう」「周りの目が気になる」と感じる人は、価値を「他人軸」に置いているのだと思います。
価値判断を「他人軸」に置いてるから失敗するのがかっこ悪いとか評価を気にしてしまうのであって、価値判断を「他人軸」ではなくて「自分軸」にしっかり置くことができれば、多少失敗したところで「なぜ失敗したのか」「次はどうすればいいのか」と成長に繋げることができます。
そもそも多くの人は、何をやるにしても「でもこんなリスクがあって…」とか「だって失敗したら…」とやらない理由、できない言い訳を並べて、行動に移しません。
例えば「海外旅行に1週間行きたい」と思っても、実際に行動に移せる人って本当に少ないんですよね。「会社が休めない」とか「家族の休みが合わなくて」とか言い訳をする。でも会社って普通に有給休暇が取れるじゃないですか。週末の3連休と有休を繋げれば行けるのに、「いや、職場に迷惑がかかるから…」と、できない理由がどんどん出てきてしまう。会社員として働いていたらその気持ちはわかるんですが、やっぱりもったいないなって思います。
海外旅行に行きたいんだったら、無理やり休みを取ってでも行ったほうがいいと思いますし、職場の人に迷惑がかかるというのはその人の責任じゃなくて、経営側の責任なんです。社員が1人有休取って1週間会社にいなくなるだけで仕事が回らなくなるのなら、それを計算して採用をしなければならないですから。やっぱり「他人軸」で他人の目を気にしすぎちゃうと行動できなくなってしまうのかもしれないですね。
今の若い世代の人たちと接していると、他人からの評価をすごい気にしてしまったり、失敗したくないっていう気持ちを持っている人が多い印象を持ちます。
でも、皆さんが思っている以上に、周りの人って自分の失敗を気にしていません。自分が失敗したら、「周りから変な目で見られる」とか「上からの評価が下がっちゃうんじゃないか」っていうのは自分の中で勝手に考えているだけで、案外周りって見ていないものですよ。
想定外が起こることも想定内に
失敗はたくさんしたほうがいいといっても、取り返しがつかない失敗をしては、再起することもできなくなってしまいます。そこで大切なのは2つ。1つは「想定外が起こることも想定内に入れておく」ということです。
仕事でも投資でも何でもそうですが、実際にやってみると、想定以上の困難に直面することは多々あります。想像したのと違う問題も出てきます。やってみてもわからないことはたくさんあって、どれだけ事前にリスクを想定していたとしても、実際やると想定しなかったものって出てくるので、「想定外が起こるのが当たり前」くらいに考えておくのが大切です。
そして2つめは、「小さく失敗していく」ということです。失敗する前提でやるにしても、擦り傷くらいの起き上がれる程度の失敗にとどめることが大事です。
例えば投資で、ある人にとって100万円は受け入れられる損失だったとしても、1万円でもなくなったらいやだっていう人もいますよね。そういう人は5000円から始めるなど、リスクを小さくする必要があります。「投資は余剰資金で」とよく言われますが、全額を投資するようなことはしてはいけないのは明白ですよね。
自分の中の「許容できる失敗のライン」を知り、その範囲内でチャレンジして失敗をするっていうのはすごい大事です。人ってやっぱり転ばないと学ばないので、失敗したことが多い人ほど最終的にはうまくいくと思います。
今回のまとめ「価値判断を他人軸ではなく自分軸に置き、失敗しても当然というくらいの気持ちでチャレンジ。ただし、失敗は小さくとどめ軌道修正していく」
失敗したときには「次に生かす」ということが大事なのですが、同じミスを繰り返してしまうこともありますよね。どうやったら失敗を成長につなげることができるのか、次回は「失敗との向き合い方」「失敗から学びを得る方法」について具体例とともに紹介したいと思います。
文/遠藤 洋(えんどう・ひろし)
投資コミュティixi主宰、投資家・自由人。1987年埼玉県生まれ。大学在学中にアルバイトで貯めたお金を元手に知識ゼロの状態から投資を始める。大学卒業後、ベンチャー企業に入社。26歳のときに投資で得た資金を元手に独立。本質的な価値を見極め「1年以内に株価3倍以上になる小型株」へ集中投資するスタイルで、最大18倍、1銘柄だけで億超えのリターンを達成。その投資経験をベースに、経営者、上場企業役員、医師、弁護士、ビジネスパーソンなど、これまで1600人以上の個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出。現在は投資をしながら1年のうち半分は国内外を旅して自由を謳歌しつつ、次世代を担う投資家や事業の育成に力を入れている。
構成/向井翔太
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