コロナ禍で遠ざかってしまった客足を呼び戻そうと、地元の関係者を集めて、ちょっとしたイベントを開催することになった。
その告知のチラシの作成を言い出しっぺの自分が担当することになっている。ところがイベントの内容を盛り込もうとすると、ひどく見づらいし、インパクトを狙えば何のチラシかわからない、と評価は散々なのである。自分のセンスの無さをつくづく思い知らされている。
プロのデザイナーでなくても、ポップやチラシを作る機会は多いはず。簡単に見えて、観る人にこちらの意図を伝えられるように仕上げるのは難しい。そうした、デザインの知識を楽しく学べる「解くだけで一生使える知識が学べる!クイズde デザイン」(SBクリエイティブ刊 定価1,980円)が発刊された。著者のingectar-e(インジェクターイー)寺本さんに、楽しく学ぶデザインについて話を聞いてみた。
クイズに回答していくだけでデザインの力がつく
――二択のクイズ形式になっているのが面白くて、解いたら次のページを早くめくってみたくなります。こんなに楽しい教則本は初めてです。どうしてこういう形式の本を考えられたのでしょう?
ingectar-eさん 「クイズ形式でデザインを学べる」という内容は、担当編集の鈴木さん(SBクリエイティブ株式会社)から頂いた企画でした。デザイナーだけじゃなく、普段デザインを職業とはされていない方にも読んで見て楽しんで頂き、ご自身の日常や仕事のシーンでも活かせるような内容にしたいと言われ、私たちもぜひ形にしたい!と思い、様々なアイデアをまとめていきました。
――本書は5つの章に分かれていますが、この順番は習熟度を勘案したものですか?
ingectar-eさん はい、ぜひ1章の第一問から読んで頂きたいです。1章からどんどんレベルが上がっていってクイズが難しくなっていくというのも、この本の特徴です。
「場所と時間を考えるデザインの秘密」など、場所や時間帯がこうだから、こっちが正解という解説もあり、章が進むにつれてingectar-e社内でも解答を間違えるスタッフが続出しました。
街中で見かけるポスターのデザインにも納得
――確かに後に行くほど問題が手強くなっている感じがします。本書の表紙に「解くだけで一生使える知識が学べる!」とありますが、ただ二択のどちらかを選ぶだけでなく、その選んだ理由を考えることで、ちゃんと「解く」ということになりますね。本当に良い問題集です!
ingectar-eさん クイズの次のページに解答があって、ページをめくるまで、一瞬でもいいし分からなくてもいいから「自分の頭で考える」ということを読者の方にして頂きたくて、1番最初の大扉に「自分の頭で考えた体験があなたの知識になる。」という強いメッセージを入れました。
また、少しでも解答ページをめくるのをワクワクして頂けるよう、編集さんと相談して、クイズの右下には「正解は・・・」「理由を考えてからページをめくろう!」「答えが分からなくても3分間は考えてみよう!」など、様々に違う言葉を入れました。
――解答の解説のわかりやすさもそうですが、その後にある「デザインの知恵袋」でクイズで学んだ知識を補強してくれます。
本書を読み終わっても、その後、何回も解決策を得られるような「デザインの虎の巻」的な使い方ができます。
ingectar-eさん ありがとうございます!解答を読んで「なるほど」、さらに知恵袋の解説で理解を深めて頂き、二段階の納得落ちでしっかり身に付くデザインになるよう考えました。
読み終わった後は、街中で見るポスターも「この場所だからこんな風に表現しているのか」「ターゲット層に向けてこのサイズなのか」とか、少し深く見て頂いたらより世界が変わると言いますか、面白いと思います。
ビジネスに役立つデザインのちから
――本書はデザインについて書かれていますが、他人に意図を簡潔に伝えるという部分で、頭の中にデザインを描ければ、対人関係におけるコミニュケーションも劇的に変わり、プレゼンでも勝てそうな気がします。そういう意味では優れたビジネス書と考えることができますね。
ingectar-eさん そうですね、0から1を生み出したり、クライアントの課題発見、課題解決をするデザイン思考力はビジネスに必須だと思いますし、プレゼン資料もより興味を引き、より伝わりやすくするにはデザイン力が必要です。
また、経営者や広報や販促、企画に関わる方はデザインの良し悪しを判断したり、デザイナーに指示をすることもあると思います。あらゆるビジネスパーソンの方はデザインの基礎を身につけておかれて損はないです。
――最後にDIMEの読者にアドバイスまたはエールをお願いします。
ingectar-eさん 自分にはセンスがない!と思われているビジネスパーソンの方にも理解できる、納得落ちして頂けるデザインの本です。デザインの表面的な部分だけじゃなくて「どういう効果を狙ってこうなったか」が身に付くことはご自身の仕事にも必ず活かして頂けると思います。
――ingectar-eさん、ありがとうございました。
これまでは結局自己満足で終わっていたが、目を留めて手に取ってもらうためには、それなりのデザインの知識が必要だった。これはデザインの話だけではなく、ビジネスでのやりとりにも応用が効くとわかった。これからはもう少しマシな企画書が書けるかもしれない。
著者紹介
ingectar-e 代表 寺本恵里さん
デザイン書の執筆やイラスト素材集の制作をしている。著書は30 冊以上。代表作に『3色だけでセンスのいい色』『あるあるデザイン』『けっきょく、よはく。余白を活かしたデザインレイアウトの本』ほか。カフェの運営、企画、プロデュース、開発等も行っている。大阪、京都にて「ROCCA&FRIENDS」など。
文/柿川鮎子
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