4人で対面する麻雀は、コロナ禍の影響を無視できないゲーム。だからこそ対策は必須
長引くコロナ禍。第7波は一時期全国的にも相当数の新規陽性者を出し続けたが、このところは往時に比べると感染者の数そのものは減っている。
ただ、今後も感染の再流行はあり得るという話だし、私たちの新しい生活様式は、まだあらゆる局面において拭い去ることはできないのかもしれない。
コロナ禍以降、様々な場面で感染対策は講じられ続けている。
今回はその中でも、室内で、4人1卓、向かい合って遊技する人気のゲーム。麻雀について、コロナ禍を経てどういった変化が見られるようになったという話をしていきたい。
筆者は新型コロナ感染症第3波頃に都内の某雀荘に恐る恐る来店したことがあったが、そこでは換気も十分配慮され、利用者は原則マスク徹底という、感染対策としての気遣いを感じられるルールが既に確立されていた。
そして現在も、コロナ対策は麻雀を楽しむ場を提供する雀荘、さらには麻雀プロを取り巻く環境においても徹底されている。
これを具体的に紹介するためにも、このたび気鋭の女流麻雀プロ、日本プロ麻雀協会の田なべもえさんに話を伺うこととした。
女流プロ田なべもえさんが語る、プロ雀士たちのコロナ対応
今回のインタビューでは、麻雀プロとして活動している方々が実践しており、なおかつ私たちにはあまりなじみのないコロナ対応について質問させていただいた。
最近では麻雀プロのリーグ戦も人気だが、このコロナ禍で屋内。それも卓上の駆け引きが必須となる麻雀となると、相当な苦労がしのばれる。
松本 今回はインタビューに応じていただきまして、誠にありがとうございます。
まず初めに、田なべさんのプロとしてのデビューのきっかけや、これまでの活躍を簡単に、読者さんたちに向けて自己紹介いただけますでしょうか?
田なべさん 日本プロ麻雀協会の田なべもえです。
今はほぼ麻雀一本ですが、元々舞台役者やアイドルをやっていまして、その中で麻雀プロの知り合いがかなり増えてきた頃に複数の方からお誘い頂きプロになりました。
プロとしてはまだまだ若手ですが、今年の9月にプリンセスオブザイヤー2022(大勢の女流プロが参加するタイトル戦。田なべさんは9月25日に開催された決勝で見事1位となった。この対局はABEMAでも放送された)という大きなタイトルを獲ることができました!
月28日くらいは麻雀を打つ生活を送っています。
松本 コロナ禍ということでプロとしての活動にも制約があるかと思いますが、現時点で一番やりにくいと思う、コロナ禍で麻雀を行う上での壁と感じられる部分をお教えください。
田なべさん 麻雀を楽しむ上での影響はあまり感じていないですね。ほぼ毎日麻雀をして生活しているので日常生活で気をつけていることをそのまましているだけ、みたいな認識です。
それよりも各団体が大変そうだなあ……って。
こんなに感染力の高いウイルスへの対応が難しいのは当然ですし、しょうがないとは思うのですが、リーグ戦休場の扱いが難しくなってしまったなあと感じることはあります。
例えば今まではインフルエンザ等で休場した場合は降級になっていたのが、新型コロナは0pt消化になったり、リーグ戦を1期間休む場合も降級だったのが残留になったり…
団体ごとにも違うのですが、昇級ボーダーギリギリならマイナスになる可能性のある最終節を休場して昇級を狙う、みたいなこともできちゃったりします。当団体は最終節休場の場合は降級になりますけど。
陽性反応が出たら団体に報告するよう言われていますが、コロナ初期の頃は晒されてバッシングを受けた方もいましたし、そうなったら陽性になったことを報告したくないという人が出てきてもおかしくないよなあって思っていたりもしました。
まだまだ長引きそうなコロナ禍、各団体頑張ってほしいですし、私も団体所属者として恥ずかしくない行動を心がけていこうと思っています。
コロナ禍以降のリーグ戦に関する対応の変化について、田なべさんの話を反芻すると、やはり前例のない事態だからこそ団体も苦労をしていることが窺える。
感染拡大を防ぎつつ麻雀文化を存続させるため、各雀荘も頑張っている!
冒頭で書いたように、コロナ禍を迎えてから比較的早い段階で、全国の飲食店やスーパーなどと同様に、雀荘も感染対策の徹底に取り組んできた。
そしてこの対策もいつしか当たり前の努力として受け入れられるようになった。
その変化について、仕事として麻雀に取り組んでいる田なべさんに気づいた点を教示いただいた。
松本 コロナ以前と今とで、麻雀をする際に大きく意識が変わった部分がありましたら、それについて教えていただけますでしょうか?
田なべさん 今メインで働かせていただいてる雀荘の意識がとても高くて“マスクを外してる状態での発声”がツモ・ロン・ポン・カンの4種のみで徹底しています。これらの発声は直ちにしないと他家が次の行動に移ってしまうからですね。
それ以外の立直だったり点数申告時はマスクを正すという間を置いても大丈夫なので、必ずマスクをしてから言うようにお客さまにもお願いしています。
これはとてもいい心がけだと思っていて、どこで麻雀をしても意識して打っています。
広まってほしいコロナ禍での新しいマナー、モラルです!
麻雀をしているときでもマスク着用が推奨されている昨今。
ただし飲み物で水分補給をするときなど、一瞬マスクを外す局面は出てくる。そういう場合に田なべさんが示したように、鳴きや和了を宣言する際に限っては発声が許されるものの、それ以外はマスクを正しく着用する。
このルール、たしかに広まってほしいと個人的にも思えた。
多くのプロ雀士は既にコロナ禍以降の麻雀にアップデート済み!
最後に、筆者がコロナ禍以降に麻雀をする上で一番苦心する点について質問をしてみた。
その苦心とは、“マスクのせいで相手の表情を読み取りにくくなった“である。
元々麻雀が弱いのに、今では対局者がマスクをしているのが当たり前。
そのためにテンパイしたであろう表情の緩みがさっぱり把握出来ず、満貫、倍満フリコミまくっている。
しかしプロの場合は、マスクがあろうとなかろうと問題はないようだ。
松本 私は麻雀の素人なのですが、コロナ禍以降に雀荘に行きますと、みんなマスクをして口元が隠れているので、対局相手がどんな表情をしているか読み取るのが難しく感じるようになりました。
プロの方にする質問ではないような気がするのですが、プロとしての立場で麻雀をする場合、マスクがあるのと無いのとでは、どちらがやりやすいのでしょうか?
田なべさん 「どちらがやりやすいか」という質問の回答は「そりゃ無い方が表情見えるしやりやすい」ですが、プロとしての立場でなら「どちらでも良い」が私の回答です!
プロ同士での対局時は表情で読み取られないようにするのが当たり前なのでどちらでも良いと回答する方が多そうです。
そして、お客さまと同卓する際は、一緒に打つことを楽しんでいただくのが私たちの仕事なので、それがマスクの有無によって変わるかというとそうでもないかな、と思っています。
ちなみに公式戦でもマスクをしたままで打つのが基本ですが、放送対局はマスクなしでのものも多いです。
現在はプロの放送対局を手軽に観られる時代になり、エンターテインメントとして受け入れられるようになりました。その点でいうと、難しい場面や苦しい場面でカメラに表情を抜かれることも増え、表情で視聴者の方に楽しんでもらうというのもプロの仕事だと思っています。
私自身、自己紹介でお話しさせていただいたプリンセスオブザイヤー2022の放送時は、かなりの回数の「顔芸」をカメラに抜いていただきました。
コメントでも「顔に出る子だね〜」とか「プロがこんなに表情に出すのはよくないだろ」等言われてしまいましたが、「顔wwwww」というコメントのように楽しんでくださった方もたくさんいらっしゃいました。
放送対局なら「表情を見てもらえる」という点でマスクなしのがやりやすいですね。
質問の意図通りの回答ではなくてすみません(笑)。
一緒に打ってくださる方、見てくださっている方、みなさんが楽しいと感じていただけるようなプロを目指していきたいです!
田なべさんのお話を伺う限りでは、プロ雀士の方々はコロナ禍においての麻雀の打ち方、楽しみ方と楽しませ方のアップデートを逐次してきたという印象を受ける。
「麻雀。コロナが騒がれるようになってからやってないなぁ」という方も、きっと多いはず。
そうした方も是非、贔屓の雀荘が今どういった対策を講じて営業しているのか気に掛けてもいいかもしれない。
もちろん「もう少し様子見をしたい」というのであれば、それでいい。
この場合は動画でプロ雀士たちの白熱した対局を観戦し、麻雀熱が胸の中から消えないようにキープし、コロナの心配がなくなったその日に備えておけばいいのだ。
新型コロナウイルス感染症は、正しく怖がり、正しく予防する。
麻雀を楽しむ上でも、この観点はきっとプロ・アマ問わず必須なのだろう。
文/松本ミゾレ
【取材協力】
日本プロ麻雀協会会員 田なべもえ
17期前期入会・本部所属
Twitter https://twitter.com/s2moepins2
【監修】一般社団法人日本プロ麻雀協会
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