独学で得たスキルで年収1000万を超える
山田竜也さんは、数年の会社員時代を経てWebマーケティングのプロとして独立。以後、スキルを多方面に増やし、複数の肩書で年収1000万以上を維持しつつ、40代に入ってFIREした。
現在約10種類の収入源があるという山田さんだが、仕事に必要な知識・技術は、ほぼ独学で身につけたという。
「リスキリング」や「リカレント教育」といった言葉が飛び交う昨今、独学が注目されているが、より効果的に学ぶ方法はあるのだろうか? 先般、著書『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)を上梓した山田さんの独学術を、いくつか紹介したい。
読書で「長文的思考」をものにする
山田さんが大学を卒業した20年ほど前までは、新社会人の独学と言えば、書籍を読むか、現場で学ぶOJTが主流。山田さんも当時は、「最大で年間700冊程度読書」をしていたという。
それがいまや、インターネットから提供される学びの情報が、圧倒的に増加。読書家であった山田さんも、読書時間は大幅に減らし、デジタル情報から学ぶ機会を増やしているという。
とはいえ、内容の質の高さ・濃さという点では、書籍に軍配が上がる。山田さんも「読書の費用対効果は恐ろしく高い」と言うように、独学をするにあたって書籍は絶対に外せない教材となる。
もちろん、ただ漫然と読むだけではダメ。読む際に心しておくべきは、「当事者意識」だという。
「この本に書かれていることで、自分で使えることは何だろう」
「著者と自分では状況が異なるが、いったい何が異なるか、応用が効く部分はどこにあるのか」
「一冊読むごとに、何か1つは自分の行動を変えるネタを探して実行する」
こう意識しながら読むと、得られるものは全く変わってくるそうだ。
また、インターネットにはない書籍のメリットとして、「長文的思考」が身につく点も指摘されている。これは、リンクをたどりながら、方々のサイトを読むことで身に染まる「ハイパーリンク的思考」の対になる言葉。
ハイパーリンク的思考は、答えが決まっているものを探すのには便利だが、大きなデメリットもある。山田さんは、次のように解説する。
“一方で、答えがなかなか導き出せない問題を考えるときには向いていませんし、思考があちこちに飛んで集中力に欠けるタフさもない思考でもあります。”
対して書籍の場合、1つのテーマを著者が掘り下げた多角的な視点が綴られており、読者は時には考え込みながら、いやおうなしに広く深い内容に向き合うことになる。これによって培われるのが「長文的思考」だ。
“昨今、答えが決まっていて導き出せるようなものは、AIなどの機械学習がどんどん効率的に処理できるようになってきています。逆に、答えがかんたんに出せないような複雑なテーマや課題には、私たち人間の能力が必要とされ続けます。本で身につく「長文的思考」というのは、ひと筋縄ではいかない複雑なテーマを考え抜くのに極めて適した能力ともいえます。”
速読でなく「並行読み」で読書スピードをアップをする
書籍の効用は理解しても、1冊を読み通すだけでもそれなりに時間はかかり、せっかちな現代人は、「その時間がもったいない」という思考が働きやすい。例えば速読術をマスターするなどして、何か対策を立てられないだろうか。
山田さんは、「速読の技術は無理に覚える必要がない」というスタンス。その理由として1つには、長文的思考が身につきにくくなるリスクを挙げる。
ただし、(フォトリーディングといった)速度優先の読み方でなく、「知識を身につけているがゆえに読解力が上がり、読書スピードも上がる」という形の読書であれば問題ないという。
冒頭で触れたように、山田さんは一時期、年間700冊もの本を読んでいたが、基本的にはそのやり方で、読書スピードを速めていたそうだ。
“ビジネス書で「営業術」の本をたくさん読んでいると、各本の内容でかぶっている部分や考え方として似通っているものなどパターンが頭の中に入ってきます。そうなってくると、ページによっては半分読み飛ばすような速度で読めるようになりますし、テーマに関するあなたなりの解釈も増えてきているので、読書中に立ち止まる回数も減ってきます。”
山田さんがむしろ重視するのは、読書時間を「きちんと確保」すること。「読書する暇がない」とつぶやくビジネスパーソンでも、それを可能とするテクニックがあるという。
その1つが「並行読み」。何冊かの本を常備しておき、その時の気分に応じて読む本を選ぶというもの。1冊の本を読み切ってから別の本を手に取るよりも、結果として読書の進みが早いし、挫折するリスクも低いそうだ。
そして、どんな気分でも読みたくない本があれば、それは読むのをやめてしまってかまわないとも。「せっかく買ったから」と無理して読めば、かえって読書嫌いになりかねない。
逆に、読み終わって「面白かった」「役に立った」と思った本は、すぐに再読することがすすめられている。その読み方にもコツがある。
“2度目はじっくり読まずに、ざっと読んで気になったポイントに集中するなど、メリハリをつける読み方で大丈夫です。これをやると、知識や理解が定着します。また、面白いことに、一度全体を読んでからもう一度読むと、同じ文章を読んだはずなのに、「こんなことが書いてあったのか」と驚くような新しい発見があります。”
この場合、再読の前に「著書名+感想」などのワードで検索し、第三者の書いた書評を読むとベター。他者の視点や解釈を知ることで、再読時の理解に深みが出るそうだ。
Kindle Paperwhiteで電子書籍に親しむ
「電子書籍元年」と呼ばれた2010年から、はや10年余り。紙の書籍と電子書籍が併存する中で、どのように使い分けていくのがよいのだろうか。
山田さん自身は、「できる限り電子書籍で読む」という電子書籍派。これは、普段からワーケーションをしていて、移動の機会がとにかく多いという大きな理由がある。Kindle Paperwhiteさえあれば、どこへ行くにも不都合はないし、ワード検索もできるし、並行読みするにも便利だと推す。
山田さんが、電子書籍の端末はKindle Paperwhite一択だと言うのは、スマホだと目が疲労しやすくなるから。特に寝る前にスマホで何か読むと、「睡眠の質が大幅に下がる」とも。また、電話やSNSのやり取りなど誘惑材料もあるため、専用の端末がベストということになる。
目の疲労回避という観点で、もう一つすすめられているのが、オーディオブックの活用。特にAmazonが提供しているAudibleというサービスは、今年1月から「12万タイトルの中から好きなだけ聞き放題」になったおかげで、使い勝手とお買い得感が大幅に増強。
運転・散歩時も読書時間にできる利便性も無視できない。ただし、普通に聴いていれば、1冊が終わるまでにかなり時間がかかってしまうため、2~3倍の速さにして聴くべしと山田さんはアドバイスする。
後編につづく
山田竜也さん プロフィール
同志社大学哲学科卒業後、3年半の会社員生活を経て独学でWebマーケティングを学び、2007年にフリーランスとしてWebマーケティング専門会社パワービジョンを立ち上げ。中小企業から東証プライム上場企業まで幅広くWEB事業のコンサルティングを手掛ける。その中でも、成長スピードの激しいスタートアップや、NPO法人が得意。創業初期から支援し上場した企業も複数社ある。コンサルティング、広告運用、WEB管理の他、自分の所有するメディアからの広告収入、セミナー講師、著書印税、イベント売上など複数軸の収入を持つポートフォリオワーカーでもある。著書に『すぐに使えてガンガン集客! WEBマーケティング123の技』(技術評論社)、『フリーランスがずっと安定して稼ぎ続ける47の方法』『小さな会社のWeb担当者になったら読む本』(日本実業出版社)ほか、共著に『世界一ラクにできる確定申告』(技術評論社)などがある。『神速で稼ぐ独学術』(技術評論社)は最新の著書となる。
文/鈴木拓也(フリーライター)
@DIME公式通販人気ランキング