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満足しながらもどこか物足りなさを感じたシトロエンの新型クロスオーバー「C5 X」

2022.10.20

シトロエンにとって、1955年に登場したアッパーミドル用の高級車「DS」といえば、現在でもブランドの精神的支柱と呼べる名車。その偉大なるDSを受け継ぐ形で1974年に「CX」、1989年には「XM」、そして2005年に「C6」が登場し、途切れながらもフラッグシップモデルの流れがあった。そのC6も2012年にラインナップから消えると、このポジションを担うモデルは不在。それから10年、今回の「C5 X」は、久方ぶりの“ビッグシトロエン復活”となったのだが、世のクルマ好きたちは、モデル名に与えられた「X」の文字に注目。過去のCXやXMというモデル名に由来する「Xの系譜」を継承したと、かなり賑やかである。果たして、受け継がれたビッグシトロエンの味、フレンチテイストのプレミアムとはどんな味わいだろうか?

昔の恋人との再会に心はちょっぴりざわめいた

少し前、シトロエンのスペシャルショップを取材で訪れたときのこと、若いころに購入を迷いに迷ったシトロエンGSパラスに「乗ってみませんか?」というお誘いをショップ代表から提案された。もちろん断る理由はないし、なにより青春時代の恋人との再会に、少しばかり甘酸っぱいものを感じながら待っていると、目の前に76年式のGSパラス、走行距離3万9千キロという車両が現れた。当時、西武自動車販売で輸入された正規ものという希少車だそうだ。「ほとんど毎日、快適に乗っていますよ」と代表が胸を張るだけあって、すこぶる調子は良さそう。外観はいい具合にやれた感じだが、それとて齢を重ねた証であり、むしろ凜とした佇まいである。

70年代のシトロエンと言えば、シンプルの極みと言われた大衆車2CVや、ひとクラス上のアミ、そしてフランスの政府公用車、とくに第五共和国大統領であるシャルル・ド・ゴールが愛用した車として知られるDSあたりが、日本でも知られた存在。しかし、2CVは48年、DSは55年、アミでさえ61年と言うのがそれぞれのデビュー年。いささか新鮮味に欠けるラインナップに、一陣の風が吹くがごとく70年に姿を現したのがGSだった。「大衆が乗る普通車」という触れ込みで、2CVとDSの間を埋めるモデルだった。そんなクルマを急激に身近な存在として意識したのは80年代に入ってからだったが、友人の愛車に乗せてもらったときの、得も言われぬ乗り心地に魅了されたことを今でも良く覚えている。結局のところ、その友人が日本の酷暑を乗り切ったり、メンテナンスで超絶苦労しているところを目の当たりにして実際には購入しなかった。その車に久方ぶりの再会である。

エンジンを始動させると、ふわぁと車高が上がる。それまで眠っていたネコが目を覚まし、ゆっくりと背伸びをしているような、なんとも趣のある風情が心をくすぐる。ゆっくりとアクセルを踏み込んでスタートした。ハイドロニューマチック・サスペンションがリアの沈み込みをいい塩梅に抑え込みながら、まさにクルマ全体がふっと浮き上がるようにスタートした。路面のうねりをいとも簡単にいなし、コーナリングではあくまでもフラットを保ちながら、まさに心穏やかな時間を過ごすことが出来た。40年以上の時を経ても、相も変わらず魅力的で、自分がかつて愛したことを一切後悔させないほどに光り輝いていた。

そして今、最新のシトロエン、C5 Xのステアリングを握っている。正直に言ってしまえば、共通項はシトロエンのクルマである、と言うことだけ。このクルマにはハイドロニューマチック・サスペンションもなければ、時代を一歩も二歩も先行く近未来的なインテリアもない。だが、すべてが最新のテクノロジーによって仕上げられた、新世代のビッグシトロエンの価値観をもたらそうとしていたことだけは確実だと感じながら、ドライブを続けていた。

満足していながらも、どこか物足りなさを感じた理由

シトロエンの発表ではC5 Xは「セダン、ステーションワゴン、SUVなど、それぞれの強みを組み合わせたもの」とのこと。簡単に言ってしまえばクロスオーバーであり、特別に目新しい手法でもない。要は仕上がったクルマが、クロスオーバーとしてどれほど魅力的に調和を取りながら、まとまっているかである。その点からすれば「すべてにおいて悪くない」といった感想である。一方「これぞシトロエン」という強烈な主張も、実は感じられないでいた。

スタイルはビッグシトロエン復活という期待を裏切ることなく、存在感はある。だが、あの頃の「シトロエンだけど、なにか?」といった、憎たらしいほどの上から目線、独自性というか独立独歩の感覚はない。時代も変わり、そんなことをいっている場合ではない、ということは理解しながらも、そんなことが堂々と言って許されるのも、またシトロエンの魅力。そう信じてきただから、よけに感じてしまうのかもしれない。

その感覚は走りにもあった。はっきり言って走り出した途端に感じたのは「ん、これはハイドロ?」といった乗り味だったのである。走っているうちに、その思いは日増しに強くなっていく。実はC5 Xの前身モデルに2代目のC5があるが、このクルマには進化型の窒素ガスと油圧によるハイドラクティブサスペンションが与えられていた。だがC5を最後にこの独特のサスペンションは採用されていない。

ところがいま運転しているC5 Xはどうだ。コイルスプリングによるサスペンションを採用しているのに、その乗り味は一瞬、ハイドロ? と戸惑うほど。実はC5 Xのダンパーには「プログレッシブハイドローリッククッション(PHC)」という、ハイドロが持っていた乗り心地を、現代の手法によって再現したシステムが導入されている。その乗り味は、なんともゆったりと、緩やかに上下に動きながら、市街地から高速道路までフラットにして穏やか、エレガンスに溢れた乗り心地を実現しているのだ。ある意味「電子的に再現されたハイドロ」と言うことが出来るかもしれない。

「だったら不満はないでしょ」と言われてしまうだろう。確かにここから先は言い掛かりに近いものである。

多くの点でシトロエンであり、よき味を持っている。クルマとして不満もないし、むしろ魅力が引き立っている部分も多い。しかし、これがビッグシトロエンか、と言われればどこか物足りなさを感じてしまった。名車、DSに始まり、CX、XM、そしてC6などが出る度に感じた「自分のガレージに納めたい」という感覚が希薄だったのだ。その要因はなんだろうか、とずっと考えていた。多分、強烈な、あの上から目線のシトロエン臭さが少し不足しているからかもしれない。まだC5 Xプラグインハイブリッドを試す機会は訪れていないが、そちらの走りに期待をしたいと思っているが……。

シトロエンのクルマ作りを表現するこんな言葉がある。「10年進んだ車を20年間作り続ける」。いま、良く出来たC5 Xに乗ったまま20年以上ともに過ごせるか? その自信がない故の、ちょっとした言い掛かりである。

ステーションワゴンのようなサイドフォルムと2,785mmのホイールベースによって伸びやかでゆったりとした佇まいに仕上がっている。

よく見るとルーフの後端と、その下にもう一枚のリアスポイラーを装備。盛り上がったリアフェンダーとV字型のリアコンビランプの組み合わせが個性的。

広々としたキャビンとフランス車らしい、抑制の効いたダッシュボードが快適。
ただ、もう少し近未来的なインテリアの提案が欲しかった。

パンッと表皮が張りつめたシートだが、座り心地はすこぶる快適。疲労感も少なくロングドライブには最適な仕上がりだ。

ホイールベースが長いこともあり、足元の広さは十分。乗員すべてにとって快適というのはビッグシトロエンならではの魅力。

全高は1,490mmであり、少し背の低いSUV的な見栄えのリアスタイル。

フロアレールを装備したトランクは奥行きもたっぷりとあり、その容量は545~1640L。

1.6Lの4気筒ガソリンターボは車重1.5tを越えるボディであっても必要にして十分。市街地や山道などでも予想外にキビキビとした走りを実現する。

センターコンソールにはアイシンの8ATの操作スイッチなどが整然とレイアウト。使い勝手にストレスは感じない。

(スペック)
車両価格:5,300,000円~(シャインパック)
(C5X シャインパック)
全長×全幅×全高=4,805×1,865×1,490mm
最小回転半径:5.6m
車重:1,520kg
駆動方式:FWD
エンジン:直列4気筒DOHCターボ 1,598cc
最高出力:133kW(180PS)/6,000rpm
最大トルク:250Nm(25.5kgm)/1,650rpm
WLTCモード燃費:未公表
問い合わせ先:シトロエンコール 0120-55-4106

TEXT:佐藤篤司(AQ編集部)
男性週刊誌、ライフスタイル誌、夕刊紙など一般誌を中心に、2輪から4輪まで“いかに乗り物のある生活を楽しむか”をテーマに、多くの情報を発信・提案を行う自動車ライター。著書「クルマ界歴史の証人」(講談社刊)。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。


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