2食で6600円の宮崎牛カレー、1食でも5000円の仙台牛カレー
レトルトカレーと言えば、一食100~200円程度の安さとレンジでチンするだけですぐに食べられるお手軽さが売りだった。ちょっとした夜食や休日の昼食、あるいは被災時の非常食など様々なシチュエーションでお世話になっている。ここ数年はコロナ禍による“おうち時間ブーム”もあり、名店や老舗が監修した少しお高めのレトルトカレーもスーパーの店頭に並ぶようになってきている。個人的には「レトルトカレーに200円以上はなかなか出せないな……」というのが本音だが、どうやら世間の認識は変わりつつあるようだ。カレー研究家の一条もんこさんはこのトレンドにはかなり期待していると言う。
「ちょっとお高めのレトルトカレーでおうち時間を充実させたいというのもありますが、それ以上にレトルトカレーが味、バリエーションともに進化していることに世間も気づき始めたのではないでしょうか。その結果、非常食だけでなく日常食として楽しむ人たちも増えているように感じます。
こうしたトレンドが生まれてくると、“ちょいお高め”から“高級”と呼ばれる価格帯のレトルトカレーまでも誕生してきました。都城市内の焼肉店が中心となり開発した宮崎牛をふんだんに使った金箔入りの『都城華礼(みやこのじょうカレー)』(6600円、2食)やちょいお高めレトルトカレー『NISHIKIYA KITCHEN』のブランドで知られる株式会社にしき食品さんが東京ミッドタウン店限定で販売している仙台牛のステーキを贅沢に使った『A SPECIAL,GREAT,FANTASTIC,AMAZING,SUPER DELICIOUS CURRY』(5000円)など、今では5000円を超えるレトルトカレーまでも登場しています。
こうした高級カレーはご自宅用だけでなく贈答用としても需要が高いんです。レトルトカレーの市場が広がることで、各地のブランド牛や特産品、あるいは世界各国のカレーがレトルトカレーとしてお手軽に食べられるようになってきています。これを機にみなさんがカレーの魅力を再発見してもらえると嬉しいですね」
いざ「5000円の高級レトルトカレー」を食べてみたら…
500円のレトルトカレーだと購入に躊躇するが、5000円のレトルトカレーだと食べてみたくなるのは不思議なものである。そこで私は早速、六本木にある東京ミッドタウンに赴き、にしきやの『A SPECIAL,GREAT,FANTASTIC,AMAZING,SUPER DELICIOUS CURRY』を入手した。ちなみに私は知らなかったが、にしき食品は無印良品のレトルトカレーの開発に携わっており、業界ではかなり有名な企業であるそうだ。
『A SPECIAL,GREAT,FANTASTIC,AMAZING,SUPER DELICIOUS CURRY』
価格:5000円(税込み)
株式会社にしき食品「NISHIKIYA KITCHIN東京ミッドタウン店」限定発売
高級感のある黒い外箱を開けるとさらに高級感のある金のパウチが収められている
ずっしりとした重みを感じるパウチの封を開けると、巨大な肉な塊が顔を見せる。付属の説明書によれば
厳しい基準をクリアした最高品質の「仙台牛」。「ブリスケット」とも呼ばれる赤身と脂身のバランスのよい「肩バラ肉」を選び、こんがりと焼き、旨味を閉じ込めたステーキに仕上げ、まるごと1枚(生換算で約150g)贅沢に使用しました。
とのことであり、その自信を裏切らない、食欲をそそられる見事なボリューム感である。これほどまでのステーキが乗っていながら、温めは電子レンジ(500W)で2分チンするだけでよく、レトルトカレーの良さが失われていない点も評価したい。
真ん中に存在感を主張しているのが仙台牛のブリスケット(肩バラ肉)のステーキ
ステーキにスプーンを入れると想像以上に柔らかくスプーンでも「ほろり……」と簡単に切れてしまった。ステーキだからと用意していたフォークが無駄になってしまった。庶民的な例えをすると、ビーフカレーに入っているビーフがでかい一枚肉になったと表現すればいいのだろうか。このボリューム、肉厚はレトルトカレーでなくとも普通のカレーでもなかなか味わえないレベルである。
スープはサラサラ系。辛さは甘口で、せっかくの仙台牛の旨味やカレーのコクを邪魔しない仕上がりになっていた。少なくとも辛くて食べられないという人はほとんどいないだろうと断言できる辛さなので、辛さに弱い人やお子さんにもおすすめできるだろう。
全体の感想としては「シンプルを極めたカレー」である。大きなステーキを除いては、特に衝撃を受けるものはなかったし、私たち日本人にとってよく知るタイプのカレーではあった。しかし、それは言い換えれば嫌いな人はいない、誰もが美味しいと感じることのできるカレーなのだろう。そこに高級肉のステーキが乗っているなら十分すぎるほど満足できる。
5000円という価格を考えればリピートするのは少し悩むところだが、友人や家族などには食べてもらいたいと思える“体験”があった。高級カレーが「贈答用として需要がある」というのは、もしかしたらこういうことも含めてのことなのかもしれない。
文/峯 亮佑