去年7月、日本初のスーパーマーケットが京都にオープンした。その「日本初」とは個包装なしの量り売り、ゴミもフードロスも出さない「ゼロ・ウェイスト」なスーパー。
そもそも「ゼロ・ウェイスト」とは、無駄や浪費を無くし、ごみを生み出さないようにしようという考え方のこと。
「斗々屋」はそのコンセプトのもと、オーガニックとフェアトレードを基準とした食材やグッズを取り扱っている。ドライハーブやチョコレート、お煎餅などの菓子類を始め、ワインやビールの酒類、調味料など国内外から集められた食材が揃う。
使い捨ての包装はせず、量り売り、または再利用が可能でリターンとともに返金してもらえるデポジット容器を使って食品を販売。1容器あたり数百円程度の預かり金を支払うことで、次回来店時に容器を返却すれば預り金が返金される。
量り売り商品に関しては20g以上であれば欲しい分だけ購入可能。もちろん持参した容器でも持ち帰ることができる。
量り売りも今どき珍しいシステムだが、広報担当ノイハウス萌菜さんによると量り売りには凄まじいこだわりがあった。
「現在の生活にマッチした利便性の高い量り売りを提供したいと思い、野菜や果物が判別できるAIスケールを世界で初めて導入したり、計りながら量と値段が見られるリキッドスケールを使用するなど最先端の量り売りシステムを採用しています」
それだけではない。店の奥にはスーパーにある食材を使った「メニューのないゼロ・ウェイストレストラン」を併設。昼間はカフェスタイルだが、夜はレストランとしておすすめのコース料理を提供している。
ここでも、ごみを最小限に抑えようと徹底。その結果、月に出るゴミの量はわずかゴミ袋1袋程度だという。
「私たちは基本的にお店では食品ロスを出していません。生鮮食品は新鮮なうちに加工して、お惣菜、そして店の奥にあるレストランで飲食することができます。万が一メニューで活用できないような野菜の皮やヘタが料理の際に出た場合は、出汁として活用し、その後はコンポストで堆肥化もしています」
「従来のスーパーは食品ロスを出す前提でビジネス戦略を立てていることも多いそうです。私たちは、ただ単に勿体無いからやるのではなく、より多くのビジネスが食品のゼロ・ウェイストな料理方法と販売方法が逆にビジネスチャンスであることを伝えていきたいと思っています」(ノイハウスさん)
家庭でもできるごみゼロ術
日本初のゼロ・ウェイストスーパー「斗々屋」はいかにして誕生したのか?立ち上げの苦労をノイハウスさんはこう語る。
「起業当時は日本でのゼロ・ウェイストスーパーの前例が無く、世間もゼロ・ウェイストに目が向いていない印象がありました。そのため、メンバーやビジネスパートナー、銀行などを探すのに非常に苦労した部分もありました」
現在も、社会的意識や知識が足りない部分をどう補い、コミュニケーションしていくか。ゼロ・ウェイストへの理解を広めようと邁進している斗々屋。そんな日本初のスーパーに今回、『家庭でもできるごみゼロ術』を教えてもらった。
◆当たり前に使っているアイテムを見直してみよう!
サランラップに代わるものだけでも使いまわせるシリコンラップ、蜜蝋ラップ、電子レンジに入れる際にはお皿を被せる、冷蔵庫に入れる際にはタッパーを使うなど、方法はさまざま。少し価格が高めであったとしても、その代わり長持ちするアイテムを選ぶことで愛着がわき、生活が豊かになります。
◆食材余りの使い道を考えよう!
野菜のへたや皮も(特にオーガニックであれば)食べられるので、今まで捨てていた生ゴミをどのように美味しくて栄養たっぷりの料理に変えられるか?レシピをリサーチいただくのも良いと思います!
ーー今後「斗々屋」が目指しているものは?
「ゼロ・ウェイストなお店が全国で増えて買い物の選択肢が広がることです。意識していなくてもゴミが減らせている豊かな生活が目標なので、今後もより多くのステークホルダーを巻き込みサポートし合い、循環型社会への動きを加速していきたいです」
世界が注目するゼロ・ウェイストの町・徳島県上勝町のごみゼロテクニック
四国の小さな町。人口およそ1400人。山地に覆われ、畑の風景が広がる徳島県上勝町。この町には世界から視察者が訪れるという。
実は、かねてから注目される町だった。数年前から日本料理を美しく彩る「つまもの」と言われる季節の葉や花を栽培、販売する「葉っぱビジネス」を展開。そして現在は、、、
毎日のごみを45分別するという他では真似できない徹底的な仕分けを実現した結果、現在約80%という高水準のリサイクル率を維持。ごみの減量やリサイクルで、焼却・埋め立て処分ゼロを目指す「ゼロ・ウェイスト」宣言を日本で初めて行った町として知られている。
ゴミの排出をなるべくゼロに近づけることを目指し、「未来のこどもたちの暮らす環境を自分の事として考え、行動できる人づくり」を2030 年までの重点目標に掲げ、精力的に活動している。さらに、
2020年4月、上勝町唯一のごみ収集場であり、住民のコミュニティ施設と体験型宿泊施設が一体になった「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」が誕生。町民は自らこの施設にごみを持ち込み、可能な限り分別を行なっている。
また、交流スペースや宿泊棟を設けたことにより、ゴミステーション以外の部分について経営的に自走できる体制が取れるようになったことも大きなメリットだとか。
とにかく、町民のごみ分別への協力意識が高い上勝町。世界に誇れるごみゼロタウンに生まれ変わった経緯について、上勝町役場の菅さんに話を聞いた。
「我々がゼロ・ウェイストを目指した直接的な理由は町内でごみを焼けなくなったからです。20年ほど前まではごみ処理も野焼きが主でした。しかし、法整備により野焼きを続けられなくなったんです」
「また、野焼きをやめるために整備した小型焼却炉もわずか3年程で使用できなくなるなど、焼却ありきでごみ処理を考えたとき上勝町のような財政基盤の弱い小さな自治体がそれを継続していく事は非常に難しいことでした」
「そこで我々は焼却炉を持たない方法を模索し、ごみの多分別という独自の道を歩み始めることを決意したんです」
ーーそして日本の自治体として初の「ゼロ・ウェイスト宣言」をされました。
「アメリカでゼロ・ウェイストを提唱し、焼却炉の建設計画を中止に導いてきた化学者のポール・コネット博士との出会いがきっかけでした。博士の勧めを機に2003年、日本の自治体として初めてのゼロ・ウェイスト宣言を行なうことになりました」
ごみ多分別について町民の反応はというと、ごみ問題を「まちづくり」と捉えることにより大きな反対意見や批判などは起こらず、ほとんどの町民から賛同が得られたという。
また、分別に協力してもらうため、町役場の職員たちも地道に55の集落を回って説明。分別が始まった時は職員が現場に立ってサポートしてきた。
その結果、リサイクル率は約80%に。徹底的すぎる上勝町のごみ収集・ごみ処理は他の自治体と何が違うのか?
「上勝町にはゴミステーションが1か所であること。自ら持ち込む方式で収集車がないことが大きな違いだと思います。でも、あえてそうしているわけではなく、野焼き時代からごみは自分で野焼き場に持って行き投入する形であったため、処理の仕方は焼却から資源化へ変わったものの収集方法がそのままの状態で残っているというのが現状です」
ーー上勝町の人だからこそ教えられる「家庭でもできるごみゼロ術」はありますか?
「まずはご自身の自治体のごみ出しルールを再確認し、資源化できるのに焼却ごみに入れてないか?など気づくことからスタートするのが良いと思います。そもそもごみを減らす手段としては買い物段階での見直しが効果的です」
「普段の生活の中で使い捨てではなく『長く使える』『繰り返し使える』物を取り入れることや、フードロスなどの生ごみを減らして、焼却以外の方法で処理するなど家庭でできる範囲で取り組んでいただけたらと思います」
上勝町がゼロ・ウェイストに成功した理由は?という質問に返ってきたのは「まだ成功とは言えないと思っています」という言葉だった。「厳密にはごみがゼロになっていない」「リサイクル率もまだ2位ですから」と上勝町役場の菅さんは話す。
謙虚な姿勢で実直に取り組み続ける上勝町。今後、町が目指すもの、挑戦したいこととは?
「重点目標は環境教育・人づくりです。教育の場やプログラムを作成し、『環境について学ぶなら上勝町』と言ってもらえるくらいになれるよう取り組みを進めて行ければと思います」
取材協力
斗々屋 京都本店
https://totoya-zerowaste.com/
上勝町役場HP
https://zwtk.jp
ゼロ・ウェィストセンターHP
https://why-kamikatsu.jp/index.html
文/太田ポーシャ
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