メタバースにNFT。DIMEでも取り上げられてたりしますけど、皆さーん。ついていけてますかー!? かくいう私はギリです。厳密に言うと、メタバースはギリOKでNFTはギリOUTです。難しいですよねえ。
で、今回はメタバースについて考えるんですが、まあ「仮想空間」ですよね。自分が分身のアバターになって、バーチャルの世界で動いたり戦ったり、ほかのキャラクターとおしゃべりしたりとか。未経験の方は「そんなの何が楽しいんだよ。居酒屋でハイボール飲みながら友達と喋ってるほうが楽しかろう」という方もいるかもしれません。あと、文字どおり「現実逃避」なわけですし、何か現実から目を背けている印象もあって苦手意識を持つ方もいらっしゃるかもしれませんね。
まず、そんなあなたにはメタバースを経験する前に2018年の映画『レディ・プレイヤー1』を観ていただきたい。森崎ウィンさんの好演も記憶に新しい名作です。さすがのスピルバーグ監督作品でこれがよくできてる! 2045年の世界、ほとんどの人がスラムに暮らさざるを得なくなった現実、しかし人々はハッピーに生きている。その理由がメタバース。VRゴーグルをつけて「オアシス」という仮想空間に飛び込めばかっこいいキャラクターでどこへでも行けて、理想の自分として生きていられるわけです。で、VRゴーグルはわかるとしてどうやって仮想空間内を移動するんだ、という問題ですが何とウオーキングマシン! 自分の汚い部屋の中でVRゴーグルつけて、いろんな動きに対応したウオーキングマシンの上で歩くとオアシスでも移動できる、てわけです。
さて、これを夢見がちなSFだ、と片づけることができるでしょうか。この夏、暑かったですよねえ。37℃て。てか、ここ数年ずっとこれ。ということはこれが「異常気象」じゃなくて「通常気象」。もっとひどくなるかもしれませんね。さらにコロナ、円安、物価高、賃金上がらないという日本は生きにくさMAX。
そんな窮屈な現実を諦めてメタバースの世界でエアコンに効いた中、のびのび生きるってのは逆に現実的ではないでしょうか。先述の映画のように、もっと没入感の深いメタバースが出てきてメインストリームになってもおかしくないのでは。
『アメーバピグ』が終了した現実的すぎる理由
で、このメタバース、何か既視感があるなあと考えてて思い出したのが『アメーバピグ』! 2009年からアメブロと連携して始まったサービスで、自分そっくりな2頭身のアバターを作って代々木公園、渋谷、浅草などの広場に集まってテキストチャットを行なうというのが主な機能でした。ゲーム機能もあったり、自分の部屋を作れたりといろいろ楽しむことができました。基本無料ですが家具とか衣装とか一部課金システムで、メタバースの課金システムの元祖といってもいいんじゃないか、と感じるわけです。
そして私も何年かアメーバピグやってました。仕事の合間とかススっとログインして知らない人たちと気づけばテキストチャットしたり。ちょっとオシャレもしたかったので課金して良い衣装とか購入した想い出もあります。2010年にはAAAがピグの姿でライブしたりして、めっちゃメタバース。しかしまあ、アメーバピグ内でいろんなことを話したり、アバターだからこそ話せた深層とかあったのに全然記憶がないんですけどね。これってメタバースあるあるなのかな。「何を話したか記憶がない」。そんなメタバースの先駆けが何でサービス終了したか、というとAdobeのFlashを使用していて、Flashがサービス終了したから、というめちゃ物理的な問題だったわけですが。
最近いろんな企業が闇雲に「メタバース参入!」を掲げてトライアルしていますが「あらら」というものも散見されます。黎明期特有の散らかり方を斜に構えて楽しみつつも、乗り遅れて前時代の化石にならないようにしたいですね。とはいえのめり込みすぎて「何を話したか記憶がない」無駄な時間も過ごしたくもない。アメーバピグ卒という肩書を胸に、新時代とサーフィンしたいものです。
文/ヒャダイン
ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
※本記事は、2022年9月15日に発売された雑誌「DIME」11月号に掲載された記事を転載したものです。
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