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採用条件は〝日本語でうまく話ができない〟こと?北九州市の高齢者施設が「赤ちゃん職員」を募集した理由

2022.10.16

赤ちゃん職員職員募集告知がSNSで話題!

仕事を探している“赤ちゃん”におすすめの求人情報がある。

条件がとにかく最高だ。

「資格:日本語でおはなしができないこと」「時間:10時〜16時のご機嫌のよい時」「仕事内容:老人ホームの中のお散歩」。これほど待遇の良いお仕事はあるだろうか?

一体この「赤ちゃん職員」とは何なのか、とても気になったので、社会福祉法人もやい聖友会の理事長、権頭喜美惠さんに話を聞いた。

ーー赤ちゃん職員募集を始めたきっかけから教えて下さい

「2020年6月に私に孫が誕生し、生後一か月から娘と孫は私共が経営する施設『銀杏庵穴生倶楽部』に毎日通っていました。自宅に引きこもって赤ちゃんと2人で生活するよりも、色んな人との交流があった方がいいかなと思ったんです」

「すると、入居者さんたちはみんな満面の笑みで孫を迎えてくれて『可愛いねぇ』と声をかけてくれたり、時には昔のことを思い出して涙を流したりされる方も。その様子を見て、これが日常的な風景になったらいいなと考えたのが、赤ちゃん職員でした」

まさに赤ちゃんは天使だ。すべての人を笑顔にしてくれる。権頭さんのお孫さんがきっかけとなり、2021年3月から始まった「赤ちゃん職員」募集。

だが、もう一つ気になったことがある。ユニークすぎる募集要項だ。これも詳しく聞いてみよう。

「応募資格は0歳~3歳まで。日本語でのお話しが上手くできない方となっています。3歳以上になってきますと赤ちゃんの世界も広がり、高齢者との距離も離れていってしまうので……」

「また、言葉を上手く発することが出来るレベルになってくると、言語によるコミュニケーションが主流となってきますので、正しい言語で『伝える』『聞き取る』『理解する』のようなプロセスが重視されるようになってしまうんです」

(確かに。ごもっともな見解だ)

「どちらかというと、耳の遠い方や言葉を発することが難しくなりつつあるような高齢者、特に認知症のある高齢者にとっては、感覚的なノンバーバルなコミュニケーションの方が、より安心でほっと出来ます。なので3歳までの赤ちゃんが最適なんです」

あまりにユニークすぎるので最初は少々奇をてらっているのかと思ったら、利用する高齢者の立場で考え、細部まで配慮された募集要項だった。双方の立場をよく理解している。

「あ、ちなみに給与はオムツとミルクなんですが、ママには施設内にあるカフェでの飲み物券と、6回来て頂きますと赤ちゃんの写真撮影会『お昼寝アート』への参加券がもらえます」

お昼寝アート撮影会の様子

こっちも笑顔でいっぱい

赤ちゃんと若いママが集うことで元気やエネルギーが溢れる 

ここで「赤ちゃん職員」の具体的な仕事内容を確認したい。「ご機嫌の良い1時間」の勤務時間にどんな仕事をこなしているのか?

「基本的にお母さんと一緒に来て頂き、施設内をお散歩していただくことが大事なお仕事です。お散歩の途中で高齢者の方と挨拶したり、慣れてきたら握手するなどのスキンシップもあったりします」

「あくまで無理せず、自然な形で気の合う人と仲良くなっていけばいいと思っています。赤ちゃん職員はママとの心地よいお散歩をしてくれるだけでいいんです」

なるほど。ホワイト企業のごとく最高の労働環境だ。働きやすく従業員優先で、当然ノルマも残業も無い。赤ちゃん職員がフレキシブルに伸び伸びと仕事をする姿を、高齢者はやさしく見守る。そこに笑顔が生まれる。

ーー赤ちゃん職員を採用して変わったことは?

「施設での変化としては3点あります。まずひとつは、なかなか会うことの出来ない赤ちゃん世代に会えると、高齢者のみなさまは笑顔になられます。中には面会に来られた家族にいつも怒ってばかりいたおばあちゃまが、たまたま通りかかった赤ちゃん職員を見て、優しい声で話し出したことも。それを見たご家族が驚かれたということもありました」

「2つ目は介護に従事する職員達が、いつにも増して優しい気持ちになったり、丁寧な声かけをするようになりました。赤ちゃん職員から学んでいることも多いようです」

「3つ目は施設を訪れる赤ちゃんやそのママ世代の方が増えたということ。若い世代の訪問が増えることでエネルギーや元気をもらえますし、施設内の空気も明るくなります。老人ホームへの入居はどうしても暗い気持ちになる方が多いんですが、多世代の方が自由に出入りすることで和やかで活気のある雰囲気も増えてきました」

施設を開設した当初から「特別養護老人ホームに入居しようとも社会の一員、地域の住民」というコンセプトを掲げ、普段通りの環境の中で生活をしてもらいたいと思っていた理事長の権頭さん。

そのため、施設内にはコミュニティカフェやFMラジオのスタジオ、貸出スペースなどを完備し、毎日のように近所の方々が訪れてはサークル活動を行なっている。

また、夕方からは地域の方が講師を務める学習塾や英会話教室、体操教室が開かれ子ども達が集まってくる。この施設は老人ホームというよりも、もはや「ひとつの街」のようになっているのだ。

未来の目標、それは『土が繋ぐ』 

ーーこれまで特に印象に残っている赤ちゃん職員のエピソードは?

「赤ちゃんはいつも笑っているばかりではないので、泣いてしまうこともあります。でもそんな時に『泣いても可愛い』と高齢者に言われて、その言葉にホッとされたママがいらっしゃいました。人生の先輩からのちょっとした言葉に新米ママも安心したりする場面もあるようです」

ーー今後も赤ちゃん職員は募集していくのでしょうか?

「はい、今後も継続していきます。赤ちゃん職員が退職して大きくなってからも、ここにくると安心出来る、話を聞いてもらえる、というような居場所になっていけたらいいなと考えています」

「私達は高齢者と共に次の世代を育てていくことに少しだけ関わらせていただいていると実感しております。それが未来への楽しみでもあり生きがいにもなっているのかもしれません」

最後に今後の展望について聞いた。

「老人ホームはどうしても孤独な場所というイメージがあると思うんですが、それを払拭するだけでなく、社会的な交流の場を提供することで癒やしにつながればと考えています」

「それと、今後の大きな挑戦としては『土が繋ぐ』です。夢のような話と捉えられるかもしれませんが社会保障制度に頼らなくても『土』を中心とした、誰もが安心して生活の出来る幸福度の高い地域『洞南型地域包摂コミュニティ』の取り組みを持続可能な事業として考えています。こちらも期待して下さい!」

取材協力
社会福祉法人 もやい聖友会
https://moyai.or.jp/

文/太田ポーシャ


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