DIME MAGAZINE
後継者難で廃業する中小企業を、「個人M&Aで買い取りトップに立つ」という新しい事業承継例が増加している。起業ほどの難しさがなく、さらには経営経験がなくても社長になれる一大チャンスが到来している。
経営者の高齢化に悩む中小企業を〝個人による事業承継〟で救えるチャンスが到来
独立行政法人 中小企業基盤整備機構
事業承継・再生支援部審議役
木口慎一さん
全国48のセンターに後継者人材バンクを設置。2021年3月時点で後継者人材バンクの累計登録者数は5617人、成約まで至った案件は累計で187件に上る。
起業よりも成功可能性が高い個人M＆Aによる事業承継
ニッポンの産業を支える中小企業が、経営者の高齢化と事業承継する後継者不足のダブルパンチにあえいでいる。中小機構の事業承継・再生支援部審議役の木口慎一さんは「このまま放置すると、2025年までの累計で、労働力人口の約1割に当たる約650万人の雇用と、約22兆円のGDPが失われる可能性があり日本経済全体に大きな打撃を与えかねません」と不安を募らせる。中小企業廃業の加速には国も危機感を持ち、事業承継を契機に経営革新などを行なう中小企業に税の特例措置や補助金で支援をしている。
事業承継の方法には親族承継、内部昇格、企業M＆Aの3つがあるが、ここ数年トレンドになっているのが、会社とつながりのない個人がM＆Aによって事業を承継する、「後継者人材バンク」と「サーチファンド」を使う方法だ。
後継者人材バンクは2014年に設立された、後継者不在の事業者と創業希望者とを結ぶマッチングシステム。もうひとつのサーチファンドは、個人が投資家から資金を調達し、自分で会社を探してM＆Aを行なう仕組みで国内では2019年からスタートしている。企業の経営資源を引き継げるため、起業から経営を安定させるまでのステップを省略できるのが魅力だ。経営者を目指す20～30代の起業家の中には、ゼロからの起業ではなく、個人M＆Aによる事業承継で社長の座に就くケースも増えている。
「若い経営者のほうが新事業に挑戦する割合が高くなるデータもあります。経営者の世代交代は企業の成長に加え、日本経済全体の活性化につながります」（木口さん）
今回は後継者人材バンクや、サーチファンドを、実例を交えながら詳しく紹介する。事業承継で社長の椅子を目指すなら、今だ。
廃業する中小企業の約3割が後継者難
経営者に事業承継の意向がありながら廃業した中小企業は約3割に達する。事業承継の個人M&Aによって経営者が代わることで、廃業を免れていたかもしれない。
〝個人M&A〟など第三者の承継が増加
事業承継者で最多が同族承継だが、その数は減少している。変わって外部承継（企業M&A）とその他（個人M&A）の数が堅調に伸びている。
親族承継にも新しい選択肢｢ベンチャー型承継｣とは？
2018年以降生まれてきた親族承継の新しい仕組み。若手後継者が先代から継承した経営資源を活用するだけではなく、新規事業や業態転換、新市場への参入などにチャレンジし、企業の永続と新たな価値を創出する。行政や産業界、一般社団法人ベンチャー型事業承継が一丸となり普及を進めている。
取材・文／安藤政弘 出典／帝国データバンク『全国企業「後継者不在率」動向調査（2020年）』
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