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離婚する前に考えるべきこと、離婚後に大切にしてほしいこと

2022.10.17

■連載/あるあるビジネス処方箋

前回前々回に、離婚と再婚をテーマに取材を試みた記事を紹介した。その際、女性が離婚後の生活(養育費など)を考えると、離婚をあきらめ、例えば、モラハラをする夫との生活を続け、不本意な人生を歩んでいく場合があることを取り上げた。

前回の記事は、こちらから。
前々回の記事は、こちらから。

確かに、子どもを育てあげるためには一定の経済力が必要であり、安易な思いで離婚はするべきではない。だが、私は前回の記事の後半で書いたとおり、自分を犠牲にしてまで寄り添う相手はこの世におらず、常に自分の思いを最優先に生きていくべきではないかと思う。

そこで今回は、社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーで、離婚経験がある久保田あきみさんに、2022年3月に取材を試みた時のことを紹介したい。

久保田さんは保険会社を経て、テーマパークでバイリンガルセクレタリーとして勤務した。結婚出産を機に退職。子どもに障がいがあったこともあり、10年間専業主婦生活を送るが、40歳で夫と別居。派遣社員として働きながら教員免許を取得し、小学校教員となる。

離婚を考えるも経済的な不安がぬぐえず、FP資格を取得。別居4年後に離婚し、開業した。その後、社労士資格を取得し、大阪にて社会保険労務士として障害年金申請業務、FPとして家計や確定拠出年金のコンサルティングを行う。

現在、久保田さんのところへ離婚の相談に来る人の中には、夫に機会あるごとに批判や否定をされ、時には厳しく説教をされて、精神的に滅入っている女性も多いようだ。いわゆる、モラハラと呼ばれるものだという。

私が1時間半に及ぶ取材で特に印象に残ったのは、次の内容だった。


「私の事務所に相談に来る方も皆、悩み苦しんでいます。「子どものことを考えると、離婚はできない」と話す女性もたくさんいます。お子さんが両親の離婚で傷つくことを考えると、その気持ちは痛いほどわかります。

しかし、お子さんはきっと苦しんでいる母親の姿を見たくないと思っているはずです。離婚後、少しずつでも前向きに、明るく幸せに生きる姿を見せることで、お子さんの気持ちも癒されていくように私は考えます。相談後に離婚された女性からは、“大変なこともあるけど、苦しんでいた頃に比べれば、今の方が断然幸せ”“子どもと一緒だから、がんばれる”との声が寄せられています」


夫婦に子どもがいる場合、確かに養育費は離婚時やその後の問題になることがあるようだ。養育費は、子どもを監護・教育するために必要な費用のこと。未成熟子(経済的・社会的に自立していない子)が自立するまでに要する費用で、例えば衣食住に必要な経費、教育費、医療費などだ。

久保田さんは、養育費については相手の男性とよく話し合い、取り決めをきちんとしておくことを相談に来る女性に勧めている。

「例えば、厚労省子ども家庭局の調査では“離婚時に養育費の取り決めをした”と回答したのは約43%、“養育費を現在受け取っている”と答えたのは約24%なのです。双方で合意に至らなかったり、話し合いすらできなかったりする場合は弁護士や調停の力を借りることも考えてみるとよいでしょうね」

なお、久保田さんによると、養育費の金額は裁判所が作成した「養育費算定表」を基準にすることが多いという。次のものが「養育費算定表」に基づき、試算したケースとなる。

①夫 年収600万円 妻 専業主婦 乳幼児の子ども1人 月8万円
②夫 年収300万円 妻 専業主婦 乳幼児の子ども1人 月4万円
③夫 年収600万円 妻 120万円 高校生の子ども 2人 月10万円
④夫 年収600万円 妻 600万円 高校生の子ども 2人 月7万円

久保田さんは「この金額の中には、公立高校進学までの教育費しか含まれていません。私立高校や大学に進学を考えている場合は、別にきちんと取り決めをしておくことが大切です」と強調する。

久保田さんは、養育費について考えるサンプルとして次のケースを挙げた。ある家庭(30代で共働き、幼児1人)のケースを試算したものだ。


夫:会社員 500万(賞与年2か月)
妻:会社員 300万(賞与年2か月)
子1人(4歳、幼稚園)

・給与(夫27万+妻17万) 44万(手取り)
・児童手当        1万

            計 45万


この場合、離婚すると妻の収入は次のようになる。

・給与          17万円(手取り)
・養育費         4万円
・児童手当        1万円
・児童扶養手当(母子手当 )0円

           計 22万円

久保田さんは、「シングルマザーは児童扶養手当(母子手当)があるから安心のように思われがちですが、実は年収約300万を超えると打ち切られるという所得制限があります」と話す。

そして、こう続ける。

「子どもが小さいうちは月22万円で生活できるかもしれませんが、子どもの成長や自身の老後を考えると、もう少し収入を増やしたいところです。そこで、私はキャリアアップについても考えるようお勧めしています。

例えば、給与が現在よりは多い職場に転職をすることです。この場合は、シングルマザーとなった自分と立場が似ている社員がいるのか否か、会社としてどのようなサポートをしているかを面談の場で確認してみるとよいのではないでしょうか。少なくとも、結婚している女性が少ない職場でシングルマザーとして働くと後々、苦しくなるようになるかもしれません。あるいは、私のように資格を取ることをお勧めする場合があります。シングルマザーが利用できる資格取得のための支援制度も増えてきています」

久保田さんと前回、前々回に紹介した女性はある面で似ていることを話していた。前回、前々回に紹介した女性が取材時に話していた言葉が次のものだ。


「養育費や生活費はもちろん大切なのですが、まずは自分の気持ちを大切にして、進んでいく方向を明確にしてほしい。その後から、養育費や生活費を確保する手段を考えていけばいい」。


実はこういう生き方は甘い考えではできないものであり、限られた女性しかできないのではないかと私は思う。だからこそ、その生き方は尊い。本来、こういう女性が増えるように、安心して離婚ができる環境を政府や経済界はつくるべきなのだろう。それが高度な民主国家であり、成熟した社会と言える。

そして、様々な価値で構成される外国資本を呼びさせるならば、まずは日本人の多様な生き方を社会として受け入れるべきだ。そのために、安心して離婚ができる環境を整備するところまで視野に入れた改革をするべきではないか。

自分を犠牲にしてまで寄り添う相手は、この世にいない。常に自分の思いを最優先に生きていくべきではないか、と私は思う。これは、身勝手な生き方ではない。むしろ、自力で(夫や家族の力ではなく)人生を切り開くのだから、厳しいものだろう。だからこそ、読者諸氏に投げかけたいのだ。

文/吉田典史

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