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男性育休を長期取得した社員に聞いた、キャリアへの不安や悩みとの向き合い方

2022.10.18

男性の育休制度がどんどん整っていく中で、自身の勤め先の会社でも積極的に取得するよう、呼びかけられていることだろう。一方で男性にとってはキャリアや業務に遅れをとることが悩ましいところがあるのではないか。そんな焦りや不安は、男女問わず持つものだ。

そこで今回は、実際に長期で育休を取得した男性社員にインタビュー。育休中の不安をどう解消したかを尋ねた。男性育休の取得推進に力を注ぐ企業のトピックスも合わせて紹介する。

長期で育休取得した男性社員たちの声

●育休を7か月取得した男性社員の体験談

クルマ情報メディア「グーネット」を運営するプロトコーポレーションの子会社として、2007年に沖縄県宜野湾市 に設立した株式会社プロトソリューションは、「イクメン企業アワード2020」の特別賞を受賞した企業だ。社内報を活用した、育児休業取得フローの紹介や、男性育児休業取得者の経験談を掲載するなど、男性が育児休業取得しやすい環境づくりに力を入れている。

今回、話を聞いたのは、2021年11月25日~2022年6月末までの7か月間、育休を取得したIT部門の嘉数(かかず)直紘さんだ。第一子で、現在1歳半の子の育休取得という。

――育休に入る前や育休中に、自身のキャリアについての不安はありましたか?

「部署専任人事が設けられており、以前から相談を重ねていました。育休取得を決めたのは、取得1カ月前くらいになります。当初は、3カ月程度の予定だったので、それほど心配はなかったものの、保育園が決まらなかったことなどの背景もあり、9月までの延長を決めました。その際はさすがに心配はありました。『こんなに長期で休んで復帰できるのかな』と、キャリアの遅れなども心配がありました」

――キャリアや業務に関するブランクに対して、どのように対策しましたか?

「育休期間を延長することが決まったタイミングで上長に相談しました。キャリアのこと、心配に思っていることも相談し、復帰時に業務内容の調整もしていただけるという話ができたのは良かったです。上長には育休前・延長前・復帰前と、面談を複数回行っていただき、コミュニケーションを取ることができました。復帰前面談で、育休取得前と同じキャリアプランを進みたいという意思を伝えました。

ただ長期でチームから離れていたことなどを踏まえ、自分の希望もあり、役割を一段階下げて復帰することになりました。改めて力をつけてプロジェクトリーダーの道を進みたいと思っています」

――育休を取得する前に、業務についてどのように引き継ぎしましたか?

「タスクの洗い出しを行い、すべて引継ぎ先を決めた上でチーム全体に展開し、モレがないようにしました。業務の内容や注意事項なども細かく書き出したこと、後任がチームメンバーだったことも含め、1-2ヶ月で引継ぎを行うことができました。

育休取得の最初の1ヶ月は連絡が取れる体制をとっておきましたが、大きな問題はなかったですね。引継ぎ先を探し、決めることが一番大変な部分でした」

――今後、育休を長期で取得する男性会社員に向けて何かアドバイスください。

「出産時には奥さんに任せっきりにせず、一緒にやったほうがいいと思いました。また分からないことばかりなので、周りにも相談ができる環境を整えたほうが良いです。保活のむずかしさも身をもって経験しましたし、最初から夫婦で寄り添う大事さが身にしみました。

育休を取得する前までは、育休中はある程度、自分の時間も余裕を持ってできると思っていたのですが、実際に取得してみると、体力の限界を感じましたし時間の余裕もなかったです。

家族が寄り添える大事なライフイベントなので、しっかりご家族と向き合ってください」

●育休を半年間取得した男性社員の体験談

LINE株式会社の国内第二拠点で福岡にあるLINE Fukuoka株式会社は、配偶者の妊娠が分かった段階で育休に関する説明を行うなど男性育休取得を推進しており、2020年度の取得率は46.2%、平均取得日数は102.6日(中央値:90日)という実績がある。

その男性育休取得者のうち営業部門で最も早く取得した平法人(たいら・のりと)さんは、6ヶ月間の取得について、次のように同社が独自に実施したインタビューに答えている。

・自身のキャリアについての不安について

「正直不安でした。僕は営業だから、担当しているお客様にも負担をかけてしまうし、担当顧客の対応をお願いするメンバーの業務も増えてしまうので」

・上司・職場の理解について

「相談した時の上司の後押しが大きかったです。最初は1ヶ月で考えていましたが、『お客様にご負担かけないよう担当をメンバーに割り振るから、中途半端に休むより安心して思いきり休んだ方がいい』と上司が言ってくれました。取得期間は夫婦で話し合い、育児休業給付金の額が変わらない半年まで取得しました」

・業務の引き継ぎについて

「チーム内で歴が長く、質問を受けることが多い立場だったので、より丁寧な回答+ナレッジを共有するようにしました。本当は社内の情報共有ツールに、新人メンバーからよくある質問集などをまとめておきたかったのですが間に合わなかったです。反省して、育休復帰後にそれらの情報をまとめ、ナレッジをオープンにしています」

・半年ぶりに現場に戻ったときの感想

「半年ぶりに復帰したとき、組織は以前と変わらず滞りなく回っていました。育休中に新しくメンバーが加わって顔ぶれも変わっていましたし、販売するサービスの内容も変わっていました。

復帰後2週間くらいで普通に仕事はできましたが、営業としての勘を取り戻すのにはもう少し時間がかかりましたね」

いずれの長期の男性育休取得者も、キャリアや業務への不安はあったものの、職場や上司の理解が支えになったようだ。一方で、自身の覚悟のようなものはやはり必要であることもわかった。

男性育休とキャリアについて

ダイバーシティの観点から、企業は男性育休とキャリアについて、どのように対応していくべきだろうか。また男性社員のキャリア継続のためには、どのような工夫が必要になるのか。

Indeed Japan株式会社にてダイバーシティインクルージョンを担当する、Anthony 大輔 Estrella(アンソニー ダイスケ エストレラ)氏に話を聞いた。

【取材協力】

Anthony 大輔 Estrella(アンソニー ダイスケ エストレラ)氏
Indeed Japan株式会社 Senior Manager, Diversity and Inclusion
2009年カリフォルニア大学バークレー校を卒業後、同年に株式会社東芝に入社し、グローバル人材育成を担当するとともに、ジャパンラグビートップリーグで選手として活躍。2017年より、PwCコンサルティング合同会社にて、海外取引、働き方改革、チェンジマネージメントなどの各種プロジェクトに携わる。2021年にIndeed Japanに入社し、APAC(日本、シンガポール、インド、オーストラリアの4ヶ国)におけるダイバーシティ、インクルージョン&ビロンギングの責任者として、各種プロジェクトを推進している。

Indeedでは、「ペアレンタルリーブ」という実子が産まれたときに限らず、養子縁組でも使える休暇制度を法定の育休とは別に設けている。「プライマリー養育者」として最長16週間、「セカンダリー養育者」として最長6週間の有給が取得可能だ。

また、「ボランタリ-ワークプログラム」という生活スタイルの変化に合わせて自分に合った働き方を選べる制度もある。育児や家族と過ごす時間などのために、働く時間と給与を80%に減らす、30日間~90日間の無給休暇を取得することが可能だという。育児のために時間を使えるための環境が整っている。

アンソニー氏自身は、二人の子どもがおり、前職の1人目の出産のときに育休を6週間とり、2人目の出産のときはIndeedで6週間とったという。自身の育休の感想について、次のように話す。

「育休を通じて、パートナーへの理解が深まりました。出産・育児を経ながらも、女性がどのような課題に直面するかという視点でも理解が深まり、自分のビジネス的な視点も深められました。

仕事との両立に関しては、出産して体力的にもダメージがあり、休養も必要な女性社員は、必ず直面する課題だと思います。男性も、生まれたての子どもを育てることにコミットするという責任は同じです。そのタイミングで、仕事と子育ての両立という同じ課題を父母双方が経験するのはいいことだと思います。

社会人として、出産した女性が社会に進出するには、男性が家庭に進出することが必須だとわかりました。職場という仕事のことだけの視点では語りつくせない本質的なことに気が付けてよかったと思っています」

●育休中は子育てに集中したほうがよい

キャリアへの不安について、どんな対策が考えられるだろうか。

「育休に入る前は、“休み”という感覚もあり、資格試験の勉強でもしようかなとも思っていましたが、大きな誤りでした。出産は大事業。子どもを育てるということに親が取り組むのは、父でも母でも当たり前にすべきことです。

育児に専従することで、夫婦が平等にパートナーの負担を減らすのは当たり前ですが、タイムマネージメント、タスクマネージメント、チームプレイ、コミュニケーションなど、ビジネスに必要なことをすべて学べます。育休中は子育てにコミットすることで、ビジネスパーソンとしても成長します」

●業務への対策について

男性が育休中に、業務の進捗が気になって仕方がない場合、どのような工夫が考えられるだろうか。

「当社では、男性・女性に限らず、育休前に復帰後の計画を上司と話し、もちろん自分自身も努力しますが、周囲の同僚も復帰後にすぐに業務に追いつけるようにフォローしてくれるカルチャーが根付いています。

また、社員向けイントラネットを通して、出産、子育てをする人たちに有益な情報を公開しています。多国籍な企業であることもあって、詳しいことがわからない外国人社員もいるので、育児前後で、例えば日本で保育所に入るためにどういう条件が必要なのかなどの情報公開もされており、私もとても助けられています。

また私自身も今後、自身の出産・育児の経験を通して、出産前後に知っておいたほうがいいナレッジなどを社内シェアしていくことを計画しており、プロジェクトを進めています」

男性育休中は、出産・育児という大事業に専念せざるを得ないというのも、事実のようだ。

音声アシスタント利用で男性育休を有意義に!

育休中、父母が共に育児を効率的に行えるよう、さまざまな取り組みが行われている。そのうちの一つに、Amazonと佐賀市の「男性の家事・育児参画促進事業」がタッグを組んで行った、音声アシスタント「Alexa(アレクサ)」の有用性に関する実証実験がある。音声アシスタントは、育児・家事にどのように影響したのか。

●実施内容

Amazonは、「Amazon Echo Show 5」を同市内在住の子どもを持つ父親30名に提供し、Alexaの有用性を検証する実証実験の実施に協力。同実験は 2022年8月に行い、期間終了後に参加者へのアン ケートを実施した。

●実証実験後に佐賀市が実施した調査結果の概要

・ 82.8%の父親が、「Alexa で育児の負担は軽くなった」と回答
・ 93.1%の父親が、「Alexa があることで育児を楽しめた」と回答
・ Alexaで活用した機能は音楽再生、天気予報、タイマー・アラーム、やることリスト、リマインダーが上位に
・ 93.1%の父親が、「今後の育児にも Alexa を使い続けたい」と回答

特に、子どもの喜ぶ音楽の再生やお風呂の時間のリマインダー、天気予報などの情報を音声で知らせてくれる点が好評だったそうだ。また写真表示・絵本の読み聞かせなども育児に役立った。

音声アシスタントを導入することは、育児をより楽しく、楽にする効果があるようだ。ガジェット好きの父親であれば、よりモチベーションも保ちやすいかもしれない。

男性育休取得が推進されるなか、長期取得者も増えてきている。不安がある人は、体験談を参考にしながら、育休中は育児という「仕事」に専念することが最善と言えるのかもしれない。

取材・文/石原亜香利

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