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モータースポーツはこれからどうなる?燃料の果たす役割を考える

2022.10.10

 2050年のカーボンニュートラル社会に向けて。そしてSDGsといった社会変革も同時に起きており、世界全体が変革期に入っていることを感じていると思う。そうした変革期の中でモータースポーツはどうなるんだ?ということについて考えてみたい。

「カーボンニュートラル燃料」って何?

 モータースポーツ界全体でも、カーボンユートラルな社会へ向けて加速させている現状がある。例えばFIAが管轄するF-1では既にE-10と呼ばれる燃料を使用している。これはガソリン90%に10%のバオエタノールを混ぜたもので、2024年までこの燃料を使用し、2025年からは100%カーボンニュートラル燃料へシフトする予定だ。

 カーボンニュートラル燃料(CNF)とは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を使った合成燃料のこと。そのCN燃料とは、「自然界にあるCO2を増やさない燃料」という考え方で作られたものだ。エンジンに燃料として使用し燃焼させるが、その時にCO2は排出する。が、生成過程でCO2を回収しているため、回収量より排出量が少ないという理屈で、自然界にCO2は増やしていないというわけ。

 生成過程では工場などから排出されるCO2を回収する技術の向上が期待されている。これは日本の経産省も推し進めているもので、DAC(Direct Air Capture)と呼ばる技術。大気中の空気とCO2を分離回収する技術のことで、自然界に放出されているCO2を回収し、そのCO2を使って新たな燃料を作るというのがCN燃料ということになる。一方、水素は水の電気分解により生成し、その際の電力は太陽光などのサスティナブルな再生エネルギーとしている。

 このCN燃料にも種類があり、成分の違いなど企業秘密となっているものが多く、国内のモータースポーツではスーパーフォーミュラとスーパーGTは共通のCN燃料で、スーパー耐久に参戦しているトヨタ、SUBARUチームが使用するCN燃料とは異なるタイプと言われている。ちなみにWRCは既に今シーズン(2022年)から、このCN燃料(E-FUEL)を採用し競っている。

WRCではすでにCN燃料が使用されている。

市販車にも使えるのか?

 国内に目を向けると、S耐で使われるこのCN燃料は、フランスのP-1レーシング・フューエルという燃料会社が合成した燃料で、WRCに供給している会社だ。そこからCN燃料をトヨタが調達しSUBARUにも供給している。ただし、WRCで使用するCN燃料とS耐で使用するCN燃料に違いがあるのかは不明なのだが、S耐に参戦するトヨタやSUBARU、マツダ(バイオディーゼル燃料)の狙いは、市販車に使える次世代燃料の開発と課題の洗い出しという視点であり、WRCの燃料はいわゆる競技用燃料のため、成分が同じとは考えにくい。

 CN燃料は、自然界にCO2を増やしていないという部分と、ガソリンの代替という側面を持ち、S耐では市販ガソリンのJIS規格とスペックを揃えている。そのためSUBARU BRZは市販エンジンのままで、FA24型の自然吸気エンジンに使用して検証している。トヨタのGR86には競技ベースのエンジンG16E-GTS型に換装し、マツダはバイオディーゼル燃料を使用し、マツダ2の市販ディーゼルエンジンでテスト参戦をしている。

 S耐のCN燃料ではここまでのところ、大きなトラブルはなく、実用領域にありそうだが、コスト面に課題がある。というのは現在2000〜3000円/1リッターという価格なので、10倍以上の価格であり即、市中に出回ることは難しい。合わせて大量生産という部分でも課題はある。マツダのバイオディーゼルは研究中のため価格設定はないということだが、1万円/1リッター程度という噂もある。

 しかしながら、CN燃料を高級燃料という位置付けにし「エンジン車に乗りたい人向け」にしてしまうと、高級燃料で定着してしまう危険性がある。一方で途上国などにあまたあるエンジン車がEVに切り替わるとも考えにくく、アホーダブルな要件は必須と考えられ、政治と企業による「カーボンニュートラルな世界」という本質の曲解は避けてほしい。

スーパー耐久に参戦するトヨタGR86とSUBARU BRZはCN燃料をテストしている。

燃料電池車のレースカーまでも

 一方でスーパーGT、スーパーフォーミュラで使用するCN燃料も競技用燃料で、今シーズン(2022年)からテストされており、来年2023年からはCN燃料に切り替わる予定だ。供給元はドイツに本社を置くハルターマン・カーレス製のCN燃料で、現在、SGTはもちろん、SFでもエンジン供給をするトヨタとホンダがテストをしている。またGT300クラスは今季の最終戦終了後にエントラントによるテスト走行が行なわれる予定だ。

 スーパーGTをプロモートするGTAの坂東会長は「10年先でも音のあるレースを続けたい」というコメントをしており、ICE(内燃機関)を使ったレースカーの進化に期待しているようだ。WECではE-FUEL+ハイブリッドというレギュレーションにプラスして2024年からは燃料電池車クラスの設置も考えているようで、水素から発電するEVマシンがル・マン24時間レースで走ることになる。

 余談だが、水素に関してもさまざまな進化があり、物流のトラック輸送業界でも将来技術としてBEV(100%バッテリー電気自動車)、FCV(燃料電池車・水素を使って発電できる燃料スタックを用い、電気モーターで走る車両)、そして水素燃焼エンジンの3つの可能性があるとしているのだ。それぞれに課題があり、コストも含めて何がブレークスルーするかによって、将来のロジスティックは決まってくるとしている。

国内最大の集客数を誇るスーパーGTでもCN燃料が導入される。

新しい価値を理解

 そうしたこともあり、欧州では電気自動車の可能性を求め、E-GTというEVカテゴリーも検討されている。つまりEVのGTカーレースだ。一方、EVレースのパイオニアであるフォーミュラEはFIAの競技でもあり、2023年にシーズン9に突入する。車体やバッテリーは共通で、モーター、インバーター、エネルギーマネージメントなどが自由開発されており、2023年からGen3マシンへとシフトする。

 こうしたモータースポーツに使われる燃料が変貌していく中で、燃料以外にも新しい技術による進化がモータースポーツには期待できる。例えば材料開発によってSDGsに貢献するカーボンセラミックなどのボディも可能で、また通信技術の進化によって、見る側への情報提供の方法も変わってくる。例えばフォーミュラEでは応援するファンからの応援投票によって、上位5人にモーター出力が5秒間アップするといった「ファンブースト」が既に行なわれているのだ。

いち早くハイブリッド車の参戦や24年シーズンには燃料電池車クラスが検討されている。

 フォーミュラEは既存の燃料を全く使用しない新しいレースカーによる競技なので、既存のレースの代替という側面はなく、新しいモータースポーツと言える。従って見る側も既存の価値観ではなく、新しい価値観をどう受け取るかで人気が決まってくるというわけだ。

 モータースポーツは、こうした新燃料やハイブリッド技術、蓄電池技術、そして新しい価値観のテストフィールドにもなり、グローバルで見て、通信技術の進化もあり、社会インフラへの貢献も期待される。先端技術と考え方の集結の場であり、とりわけ欧州のカーメーカーではエリートエンジニアがモータースポーツを主導している理由がよくわかる。

 モータースポーツでのレースドラマには感動と興奮を覚えるが、プロモーター、オーガナイザーはこの先、手を変え品を変えという試行錯誤をしていくことになるが、見る側、応援する側も新しい価値を受け入れる姿勢が大事になってくるのかもしれない。

文/高橋アキラ(モータージャーナリスト)


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