4年間の研究開発から生まれた3度の傾斜
カシオ計算機は電卓の打ちやすさを追求した結果、右から左に3度の傾斜を付けた「人間工学電卓 E-12、DE-12D」を10月6日に発表した。同社が2018年から実施した電卓操作時における指の動きや手の状態の分析調査によって新発想の人間工学階段キーを開発、試作機を使ったテストでは83%のユーザーが従来品よりも打ちやすいと回答したという。これを元にして生まれた製品が2タイプの人間工学電卓なのだ。
75%の人が電卓を右手で操作していた
人間工学階段キーを開発したのは、カシオ計算機 教育BU 商品戦略部 ハード戦略室 木村加奈子さんである。より使いやすい新しい電卓の理想形を見つけるためリサーチをおこない、電卓を打つ人の75%が右手で、また40%の人が3~5本指を使用することが分かった。国立研究開発法人産業技術総合研究所との共同研究では、電卓を操作するときに手が外側に傾くことが分かった。また、手を傾けてもキーを押す方向は垂直のままだった事から、新構造のキーの構想がかたまった。
これに基づき、キーボードを左から右へ傾斜を0~9度まで付けた試作機を作り検証を続け、3度傾きのある電卓を製品化した。デザイン担当は、扉の写真の人物、カシオ計算機 技術本部 デザイン開発総轄部 第一デザイン部 Gデザイン室 岡 駿佑さん。傾斜した面は不安定に見えるため、左側の膨らみを増やして見た目の重量バランスを取ったという。また、全体を曲線で構成して丸みのある柔らかな印象を演出したそうだ。腕時計やキーボード(楽器)のデザインも担当する岡さんは、キーボードの裏面と同じように、電卓の裏面も初めてデザインした。滑り止めの溝を直線でなく曲線的に処理したのだ。電卓の数字と文字は、同社の電卓の中で最も見やすいとされる「本格実務電卓」と同じフォントを採用したと言う。カラーはホワイトとブラックの2色になる。
右手は斜めになっても打鍵方向は垂直を保っていることが判明した
左から右の傾斜だけでなく、奥から手前方向にも傾斜していることが分かる
0から9度までの傾斜のある試作機を作り、最適な傾斜角度を検討した
テンキーは傾けると打ちやすいのか?
私も発表会会場で人間工学階段キーを体験してみたが、普段はスマホの電卓機能しか使っていないため、イマイチその良さが実感できなかった。いいと思えば、いいような気もするが、帰宅後、思い付いたのが毎日、仕事で使っている「DK6 Ergo」キーボードの高さを変えて実験してみること。現状では奥から手前に傾斜が付いている。これを活かして左から右へ傾斜させたい。高さ調整可能な足を手前に増設して左右の傾斜ができるようにした。最初はあえて右を高く、左を低くしてみた。視覚的にはこちらの方が違和感がない。打ってみると左右水平だった時より違和感があって打鍵が遅くなる。今度は左を高く右を下げる設定にすると、確かに打ちやすい。特に中指、薬指と小指が打ちやすい気がする。このセッティングいいかもしれない。しばらくこのまま使って、問題なければウチのキーボードも3度傾けようと思った。人間工学電卓の発売は10月21日で、これに先駆けて有楽町電気ビルの「b8ta Tokyo-Yurakucho」で実機の体験ができる。電卓にうるさい人もそうでない人も「人間工学電卓」をシビアに検証してみてはいかがだろう。
・展示会場:b8ta Tokyo-Yurakucho(東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル1階)
・展示期間:2022年10月6日(木)~10月31日(月)
・展示製品:人間工学電卓「JE-12D」「DE-12D」
写真・文/ゴン川野