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話題のアーティスト、上野の森美術館で開催中の「長坂真護展」に行ってみた!

2022.10.07

投棄された廃棄物を用いて作品を制作し、ガーナのスラム街再生プロジェクトを進めるアーティスト・長坂真護。今、東京・上野の森美術館で彼の個展「長坂真護展 still A BLACK STAR」が開催されている。

DIME編集部で、この個展開催に合わせて、図録の代わりにもなり得る『NAGASAKA MAGO ALL SELECTION ―長坂真護作品集―』を制作。今回、担当編集・テラダが同書に数多く掲載されている作品群を間近で見ようと、上野の森美術館へ向かった。

『NAGASAKA MAGO ALL SELECTION長坂真護作品集』
著/長坂真護
発行/小学館
定価2200 円(税込)
判型:B20取・160ページ
2022年9月2日(金)発売
https://www.shogakukan.co.jp/books/09682416
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まず館内に入ると目に入るのは、長坂氏自身が〝売れない路上の絵描き〟だったという時代の作品群だ。ニューヨークやパリで転売ヤーをしつつ、画廊に売り込んでいた時期のものだが、のちに紹介するガーナを題材にした作品とは大きくタッチが異なることがわかるはずだ。

そして最も目を引く場所に展示されているのが、長坂氏の代表作「真実の湖Ⅱ」という作品だ。

これは、もともとは美しいラグーンに先進国の廃棄物が堆積してしまったガーナのスラム街・アグボグブロシーを題材にした作品。ゴミの湖と奥底に見えるのは、純粋な少年の瞳。先進国の残忍さと無垢な少年の姿でコントラストを出しているーーこうした解説を長坂氏のインタビューをもとに作品集に記したのだが、実物を見るのは初めてのこと。

表紙にも採用した作品なので、編集作業の中で何度も目にしてはいたのだが、まず「想像以上にデカい!」というが第一印象だった。そして横から見ると作品がより立体的に見え、改めて「本当に俺たちが使っているモノが装飾されている」という事実を思い知った。

特に、スーパーファミコンのコントローラーを発見したときはショックだった。子供の頃に遊んでいたものが、はるかガーナに投棄されているなんて……と。

同じフロアに展示されている作品「We are the one」にも注目だ。実はこれ、長坂氏が長靴にペンキをつけて、巨大なキャンバスの上を歩きながら描いたというもの。左は黄色人種の、右は黒人の肌の色だが、歩みを止めなければ次第に肌の色が一緒になる=誰もが平等になれるという意味を込めたものだとか。これも巨大で、サイズはH512×W412㎝。右下に置かれている長靴からも、その大きさが想像つくだろう。

次に目に入るのが同フロアの中央に配置されているスラム街に建つ住居。その壁面の描かれているアートだが、実は現地で親しくなったスラムの子供たちが長坂氏のために描いてくれたもの。アブラヒムという青年の自宅壁面に描かれたものだが、これを気に入った長坂氏が、新しい壁をプレゼントして日本に持ち帰ったという。

続いて紹介するのは、「世界平和のワクチン」。3本脚の不安定なテーブルの上に広がるのは、元々は美しい湖だったアボグボグロシー。そのテーブルを押さえるのは中国の主席、その横には先進国の首脳たち……。彼らの背後には、この不秩序を正常化するために送り込まれた生命体が迫るーーというものだ。これは彼が感じる〝不条理な資本主義の真実〟を率直に表現した作品といえよう。

作品集では、「世界平和のワクチン」と同ページに掲載したのが、上の日本、アメリカ、イギリス、中国、ガーナの国旗を描いた作品。実はこれ、ガーナの国旗以外、その国のメーカーが作った電子機器のゴミで構成されているのだ。個展でじっくりと見て確認してほしい。

これは2021年に制作された「相対性理論」という作品なのだが、額縁にパイプの装飾があしらわれており、コインを投入できるようになっているのだ。先進国と途上国をつなぐマネーパイプを表現するだけでなく、実際に先進国に住む人たちからお金を稼ぐアート」となっている。

作品集に未掲載のアートも少なからずある。この「I’m Princess」もそのひとつ。少女のスカートをアグボグブロシーに投棄されているアパレルゴミで表現した立体作品だ。

「ガーナ」シリーズ以外の代表作も見逃せない。

この「FRANK MULLER×Nagasaka Mago」は、長坂氏のもうひとつの代表作「Moon」シリーズ。高級時計ブランド、フランクミューラーとのコラボ作で、独特なビザン数字を、長坂氏が〝平和の象徴〟として描く満月の上に描いている。

「小豆島」というシリーズも目をひく。コロナ禍でガーナに渡航できなくなった際、長坂氏がオリーブ栽培を学ぶために訪れた小豆島で拾ったシーグラスなどを用いたシリーズだ。圧倒的な迫力で訴えかける「ガーナ」シリーズと異なり、この「向日葵」のような花や妖精を描いている。

2022年4月にスタートしたばかりのNFTプロジェクトの第1弾「Waste St. in NYC」も展示。これはニューヨークの路上に捨てられているゴミを用いた作品で、数日たつと埋め立てられてしまうが、デジタルアーカイブ上に残すことで、負のエネルギーをプラスに変えようと考えたものだ。

最後に訪れて欲しいのが、ミュージアムショップだ。およそ個展というと関連グッズが多く販売されているが、長坂真護展は違う。売られているのは、彼の作品そのものなのだ。――これにも理由がある。グッズのようなものは、いずれゴミになってしまう可能性が高い。が、長坂氏の作品そのものを購入してもらえば、結果として〝スラム撲滅〟のための資金になるからだ。安価な作品でも34万9800円だが、彼のアート活動に共感して手にする人は多い。

そして、ぜひ上野の森美術館を訪れた人に手に取って欲しいのが、『NAGASAKA MAGO ALL SELECTION長坂真護作品集』だ。図録にもなるようにと考えてつくっており、もう一度作品を見たい時にピッタリのはずだ。長坂氏のインタビューもたっぷり掲載しているので、彼のSDGsへの取り組みを知ることができるはずだ。

ちなみに、10月9日には本人も来場し、サイン会が開催される予定とのこと。気になった方はぜひ、足を運んでみてほしい。

取材・文/寺田剛治 撮影/藤岡雅樹


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