■連載/阿部純子のトレンド探検隊
シダス愛用者の元サッカー日本代表・大久保嘉人氏がインソールの重要性を語る
インソールの老舗ブランド「シダス」は1975年にフランスで創業。2009年には日本法人を設立、「シダス」をメインに、医療向けに開発されたインソールブランド「ポディアテック」、先進の技術で6つの温度帯に対応した商品を備えた温度コントロールブランド「サーミック」を展開している。
シダス ジャパンは30年以上に渡りスポーツ分野をサポートしてきた経験と蓄積されたデータをもとに、現在では本国フランスの商品開発にも参画。日本人に合った商品づくりを行い、年間150名以上のトップアスリートへインソールを提供、日本でのインソール累計販売数は320万ペアに上る。
本社のある横浜でアスリート向けに個人に合わせたカスタムインソールを作成していたが(資格者がいる一部のスポーツ店でも取り扱いあり)、9月に青山にオープンした「SIDAS FITTING LAB」にその機能を移行。世界45カ国でサービスを展開するシダスだが、直営店出店は東京がグローバル初となる。
オープンを記念して、現役時代からシダスのインソールを愛用していた、元サッカー日本代表の大久保嘉人氏をゲストに迎えたトークイベントが開催された。
「アテネオリンピックの時にシダスと出合い、シダスのインソールがないと不安になるくらい必要なものになりました。僕は体の左右のバランスが違うので、バランスを合わせて一番力が出せる状態にするインソールを作ってもらっていました。
以前はよく怪我をしたり、足の裏がスパイクを履くだけでも痛いということがあったんですが、インソールを入れてから怪我をすることは無くなりました。インソールがサポートしてくれたおかげだと思っています。
サッカーは息子たちもやっていますが、みんな足が痛いと言っていて、なぜだろうと思いましたが、インソールを入れない状態で硬い人工芝や土のグラウンドでやっているので傷めてきたのではないかと。アスリートはもちろん、スポーツをする子どもたちも、インソールをあまり意識していないですが、僕は一番大事なのはインソールではないかと思っています。
インソールを入れると体のバランスを整えて、足のアーチを支えてくれるので、立っていても疲れないし、姿勢が良くなって目線が高くなったような印象になります」(大久保氏)
同じくゲストとして登壇した整形外科医・リハビリテーション科医の山田睦雄氏は、インソールの重要性についてこう話す。
「姿勢が悪いと足の裏にも影響が出てきて、足のトラブルに見舞われる可能性があります。美しい姿勢を保てるようにするには筋力をつけることが必要になりますが、筋肉は一朝一夕でつくものではなく、筋力がついて姿勢が整うまでの間をサポートするものとして、インソールを使うのが足の健康には良いと思います。
また、足の形が悪い状態で運動をすると、それが原因で疲労骨折や、足の障害、他の関節への影響もあるので、これらを予防する役割、衝撃緩衝としてもインソールは有効。美しい姿勢を保つ、怪我や障害の予防になる、この2点がインソールの効果だと思います。
体を支える足をきちんと整えることで、上半身、下半身にも影響を与えていきます。足の痛みや体の不調を感じたときにフットケアは考えられるオプションであり、インソールを考えるのもひとつの方法でしょう」(山田氏)
【AJの読み】デジタル×マイスターの技術で作られるオリジナルインソールを体験
「SIDAS FITTING LAB」はシダスのすべてが網羅された直営店。デジタル×マイスターの技術で作られる個人の足裏に合ったカスタムインソールをはじめ、成形不要の製品を含めた約50種類以上のインソールや、ソックス、リカバリーサンダルなどを販売している。
足の悩みに役立つ独自のマシンを使った分析だけを受けることも可能。インソール作成は完全予約制なので、ラボの公式サイト、もしくは電話にて予約を。
今回、インソール作成体験ができる機会を得たが、筆者は両足の踵骨骨折の後遺症による変形で歩行に障害があり、医療用インソールと杖を使用している特殊な事情があったため、事前に情報の提供を行い作成が可能か確認した。
シダスの本国フランスではメディカルソリューションブランド「ボディアテック」が医療分野でも活用されていることと、病院でレントゲンやCTスキャンで骨折部分の完全治癒、骨棘がないなどを確認済だったので、インソール作成を行ってもらうことにした。
担当していただいたのは、チーフフィッティングマイスターの斉藤昌彦氏。シダスアスリート専門の担当として5000ペア以上の作成実績があり、2019年フランス本社にてシダスの医療分野ブランド「ポディアテック」より技術者認定取得。バスケットボールBリーグ選手、サッカーJリーグ選手、プロ野球選手、プロゴルファーなどの数多くのトップアスリートをサポートしている。
「シダスでは、基本的に面で立体的に支えて歩行を促す方法を取っています。今回は衝撃吸収性の高い『クッションプラス』にて作成していきます。外側のくるぶしを立体で支えることで痛みを緩和させることが目的です。医療用インソールは歩行姿勢を改善させますが、シダスは立体的に姿勢を支えて、動きの中で今まで負担がかかっていた腱とくるぶしの靭帯をサポートします」(斉藤氏)
最初にカルテに情報を記入、フィッティングマイスターと足の状態や悩みを確認してから、「フィートボックス・エヴォ」を使い、足裏の前後左右のバランス、浮指の状態、アーチの形状を計測。
大久保氏もトークイベントの中で、同じ機器を使って足裏の計測を行っており、足指までくっきりと写っている、とても良い状態の足裏だったが、筆者は両踵骨の変形で後ろに重心がかかってしまうため、足の中央から先はまったく写っていない状態に。
次に足裏分析器「プレスカム」で歩行時の足の運び方を分析。足にかかる圧で左右バランスを確認し、歩くときにかかる重心の移動を可視化。踏み込みから蹴り出しの時間と軌跡がわかる。
デジタル機器での計測結果から足の状態をマイスターが説明。踵に体重がかかっており、無理に前に力を入れようとするとバランスが崩れてしまう状態で、踵骨変形により靭帯やくるぶしに影響があり歩くたびに常に痛みがあり、それはインソールだけでは解決できない問題であることもわかった。
歩行を分析することで素材や補正の方法を探っていく。歩行を見るとほとんど踵が地面についたまま重心移動をしており、通常の歩行のように踵が上がらず、中足骨使わずに外側のアーチだけを使って歩いている状態だった。外側に行ってしまう歩き方を少しでも内側に来るようなインソールを作ることになった。
「ボドスコープ」という機器を使い、バランスのとりやすい体のポジションを確認。片足立ちをしてバランスをチェックし、片足立ちをしてぶれないときの足型がインソールの設計図になる。
その後、ビーズクッションのような青いパッドに足をのせる、シダス独自の「バキュームシステム」で足型を正確に取りながら、これまでのヒアリングと計測をもとにマイスターが微調整してフィットする状態を作る。
創設者の一人であるロイグ・ダヴィッドが砂浜の足跡をヒントに、キッチンのオーブン皿を使って熱成形したのがシダスの始まりで、弾力のあるパッドはまさに砂浜に足を沈めたような感覚。
インソールに熱をかけて、取った足型に合わせて作成。足にぴったりと合うインソールを成形していく。
できあがったインソールを加工し全体を整えて完成。オリジナルインソール作成はヒアリングや計測を含めて全体で1時間半ほど。インソールは当日にできるのでインソールを入れた状態で店を出られる。
斉藤氏のようにアスリート専門に対応してきたフィッティングマイスターが、一般向けに対応するのは安心できる。ラボオープン以降、遠方からも客が訪れるというのも納得。
「アスリートも一般の人も足の悩みという点では変わりがありません。インソールで少しでも改善されるようにお手伝いができればと思っています」(斉藤氏)
筆者の場合は特殊なケースであり、インソールで改善しきれない無理な依頼で「効果は使ってみないとわからないところがある」と事前に聞いていたが、シダスのインソールを入れると歩きやすくなったのは確か。そのせいで歩き過ぎたのか、今まで使っていなかった筋肉を急に使ったからか、長時間歩いていたらふくらはぎが筋肉痛になった。状態を見ながら使用し、不具合が出てくるようだったら、再度ラボで調整してもらうことにした。
足に不調を感じた際、インソールで改善することも多い。スポーツシーンのみならず、普段履きでインソールを使いたい場合も、ぜひ「SIDAS FITTING LAB」を活用してはいかがだろう。歩き方やバランス、アーチ形状など足の特徴を的確に分析してもらうことで、自分でも気づかなかった体のクセを知ることができるかもしれない。
文/阿部純子