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毎日しんどいのは資本主義のせい!?経済学の賢人が教えてくれた「現代人の働き方」

2022.09.25

大学は政経学部だったが、社会に出て経済学が役に立ったことは一つもなかったと思う。

授業で需要・供給曲線や、マルケー(マルクス経済学)やキンケー(近代経済学)を学んだけれど、それを仕事で使ったことも無い。

何となく経済学は今の社会とは遠いものの様な気がしていたが、丸山俊一教授はマルクスや、ケインズといった「経済学」の先人たちの教えは、今のビジネスパーソンの悩みに答えてくれるものだと言う。先生に、経済学の知の巨人たちが教えてくれる、現代人の働き方について聞いてみた。

歴史上の巨人たちが現代を分析する面白さ

――先生の新刊書、働く悩みは「経済学」で答えが見つかる 自分をすり減らさないための資本主義の授業(SBクリエイティブ発刊、定価1045円)では、マルクスやケインズ、アダム・スミスといった経済学者を現代によみがえらせて、現代のビジネスパーソンの悩みを解決してくれます。経済学の概念を覆すような自由な発想ですが、どうしてこんな奇想天外?な発想が生まれたのでしょうか?

丸山先生 せっかく経済系の学部で学んだ経験を持ってらっしゃるのに、「経済」って使えない、役に立たないと思い込んでいる…、そう、あなたのような方の為に生まれた本です(笑)。

いやそればかりでなく、「経済学」=数学と思い込んで食わず嫌いしている方にもぜひ読んでいただきたい…、そんな思いがベースにあったところに、もう一つ、University of Creativity(略称UoC)=「創造性の大学」(注1)という場からお声がけをいただいて、社会人の皆さんの実際の悩み、本音を聞き、議論したことがきっかけです。

この時代に働くことの意義とは?経済とは?資本主義とは?…と、具体的に参加者の皆さんの悩みを聞いてその解決策を考える過程で、そもそものところを原点から考えてみよう、としたわけです。

歴史上の「巨人」たちが、現代の経済社会、そして働く皆さんの心情を知ったなら、一体どんなことを言い出すのだろうか?マルクス=階級闘争、ケインズ=有効需要創出など、教科書の太字になっていた言葉を丸暗記するだけでわかったような気になってしまうのではなく、時代の問題と格闘した等身大の人として理解し、「肉声」を聞こうとすることで、その思想にも様々な可能性が出てきます。

酔っぱらってついグチり始めるアダム・スミス先生など、人間的な姿に親しみを感じながら巨人たちのホンネを想像すると、実はもしかしたら、多くの人々がイメージしている思想とは真逆のことを言い出し始めかねないと思うのです。

アダム・スミス(Adam Smith:1723~1790年)

ハイエク先生なんて、「新自由主義の教祖」なんて時に言われますが、そんなことを聞いたら湯気を立てて怒り、悲しそうな表情を浮かべることでしょう…。では、彼が今元気だったら何と言うか?どうぞ本書をお読みください。

実はマルクスを読むと元気になれる?

――確かにこの本を読むと、気難しそうなマルクスやケインズにタバコ店の物知りおじさん的な親しみやすさを感じます。哲学者のカントまで登場して、私たちの悩みに答えてくれていますが、丸山先生がこの本で最も読んで欲しい部分はどこですか?

丸山先生 もちろん全部です(笑)。現代の斎藤幸平さんまで加えると総勢17人全員…、実は、エピローグでちょこっと登場する異才2人まで加えると正確には19人ですが、それぞれ味わい深く甲乙つけ難いですね。強いて言えば、マルクス先生の持っていた多彩な顔、ブラックユーモア連発の茶目っ気たっぷりの破天荒ぶりなど、ぜひ読んで欲しい、一つのポイントでしょうか?

あの豊かに髭を蓄えた風貌が印象的なマルクス先生は、読むほどに知るほどに、相当な変人、愛すべきヘンな人なんですよね(笑)。熱い人間愛の情熱と、冷静な歴史、社会認識と、ポップな感覚とシリアスな思考が共存しています。そのエネルギーに満ちた全体像、「人間マルクス」を感じ取ることで、思想の本質も感受でき、可能性を広げることができると思うのです。「マルクスを読むと元気になる」と語っていたクロード・レヴィ=ストロース先生も登場しますが、その秘密の一端が伝わればうれしく思います。

その他、ケインズ先生の「美人投票」の話や、彼の「みな、月を見ているのだ」という名言の意味する現代的な可能性、さらにヴェブレン先生の大衆社会でエスカレートしていく人々の隠された欲望の深層などの話は、現代のネット社会、デジタル主導の経済にいつの間にか巻き込まれて悩む皆さんには響くことでしょう。その意味では、リースマン先生の「他人指向型」の話が響いた、なんて言う渋い感想も何人かの読者の方々からいただきましたが、さもありなんという気がします。

あ、すみません、「最も」がたくさんになってしまいましたね(笑)。でも、それだけ、読まれる方によって、様々な意味、可能性を引き出せる要素が詰まっていると思います。

カール・マルクス(Karl Marx:1818~ 1883年)

実は経済学とは人間を考察&研究していた!?

――良いですね!ちょっと話は戻りますが、丸山先生は「目の前の事象から今どんなふうに社会が回っていて、どうしていけばいいのかを考える、ということ」と書いていますが、そもそも経済学者は何を目指してきたのだと考えますか?

丸山先生 そうですね、ひと言でシンプルに言うなら、皆目指していたのは、社会の「より良い形」ということになるでしょうね。

アダム・スミス先生なら、まだ重商主義が力を持っていた時代に、海外から金銀財宝を持ってこなくてもあなた自身が日々の仕事に勤しむことこそが「社会の富」になると、当時の人々を説得したわけですし、ケインズ先生も“この時代状況であれば…”、というわけで、政府がお金を出して仕事を生む、「有効需要」創出の政策など考えだしたわけで、社会を、人間を、さらに言えば、人々の心の奥底にある心理まで読み込み、社会の安定を保とうとしたわけです。

単に「お金が回る」「経済が回る」というのではなく、その時代、社会、文化の中に生きる人々の心の底にある不安、希望、様々な想いを読み取り、その上でどう説くか、どうすることが良いのか?そのメカニズムによって社会の秩序、反映、安定をどう築くか?考えていたということができると思います。

逆に言えば、「経済」という現象だけを切り離して考えてしまうと、「経済」だけ回っても社会が壊れてしまうような、本末転倒の事態も起きかねないわけで、そのあたりに敏感だったシュンペーター先生の話も出てきます。

総じて、人間という実に矛盾だらけの厄介な、だからこそ愛おしさもある不思議な存在を様々な角度から考察し、人が織りなす社会のねじれ、パラドックスを探究し続けた人々、それが経済学者ということになるのかもしれませんね。その意味では、歴史に名を刻む経済学者たちは、皆「社会の精神科医」だった、とも言えるでしょう。

経済学は社会の様々な分野の考察から成り立っていた

――それを知って学んでいたら、もっと経済学が楽しくなっていたと思います!だからこそ、経済学者が「仕事が楽しくない」や「真面目にやっている人が損する社会になってない?」とか、「デジタル化で、経済はどんなふうになるの?」、「同じ仕事をしているのに、転職したら年収があがって、なんとなく不思議な感じ」、「会社に行くと疲れる」といった現代人の悩みを解決してくれるわけですね。

丸山先生 様々な働く悩みの多くは、結局最後は、社会とそこに生きる人の問題です。社会は変わる、しかし、人間の本質は変わらない…。その狭間にあって洞察を深めてきた人の知恵は、必ず現代にも生きます。

そもそも「経済学」という学問自体が、本来は、実に人間臭い、様々な分野の考察から成り立っている、総合の学であり、そして道徳の学なのだと思います。

人と社会への考察を深めるのですから、当然と言えば当然なのですが、理論だけが抜き出され定式化されてしまうと、その原初の精神がついつい、忘れられがちなのですよね。

「経済学の父」たるアダム・スミス先生も道徳哲学者でしたし、ケインズ先生も「経済学は自然科学ではなく、本質的に道徳科学の一つであり、内省と価値判断を用いるのです」という言葉を残しています。

様々な知性たちが人と社会に注いでいた眼差し、想いを想像しながら本書を読むことで、「経済学」のイメージ自体が変わり、新たな発見が生まれること、願っています。

社会変革の激しい今こそ先人の声を聞く

――最後に@DIME読者に、丸山先生からアドバイスもしくはエールをいただけますか?

丸山先生 僕はちょうどこの10月で60歳になるのですが、人生前半の30年と後半30年で、社会のあり様、底に流れる価値観が、大袈裟に言えば、江戸から明治になったぐらいに転換したと感じています。

経済社会の変化の位相で言えば、産業社会からポスト産業資本主義へ、工業化の時代からサービス業、ソフト、アイデアの時代へ、と説明されるところですが、それは当然、そこに暮らす人々の考え方にも影響を与え、人の生き方も変えてしまうような大きな変化です。

その変化の中にあって、何を変え、同時に何を変えてはいけないのか?いつも考え続けてきました。おかげで思考を鍛えることもでき、そしてまた、考察の過程の楽しさも知ることができたように思います。

さて、またこれから30年、どう変わるのか?変化を楽しめる為にも、歴史の中にある変わらない本質をつかみ出す力が大事になります。この本も一つのきっかけですが、想像力を持って先人たちの「肉声」を聞きとる対話をぜひ、始めてください。そして機会あれば、様々なものに見方考え方をぶつけ合い、語り合いましょう!

――ありがとうございました!

経済学だけでなく、社会学者、哲学者の著名な学説を学ぶことのできる、丸山先生の新刊書。私たちの生きる指針になる名言も、たくさん紹介されている。

注1)
University of Creativity(略称UoC)=「創造性の大学」についてはこちら

著者 丸山俊一さん 
NHKエンタープライズ エグゼクティブ・プロデューサー/東京藝術大学客員教授。
1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。現在も「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史 欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズの他、「ネコメンタリー 猫も、杓子も。」「地球タクシー」などプロデュースし続ける。
2020年~22年 University of Creativity 「経済ファーメント」にてカタリストを務めた。
著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『すべての仕事は「肯定」から始まる』(大和書房)『結論は出さなくていい』(光文社新書)、制作班との共著に『欲望の資本主義1~6』(東洋経済新報社)『欲望の民主主義』(光文社新書)『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する/自由と闘争のパラドックスを越えて/危機の時代を語る/新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後~変貌するテクノロジーの危機と希望』(NHK出版新書)『世界サブカルチャー史 欲望の系譜 アメリカ70-90s「超大国」の憂鬱』(祥伝社)ほか。

文/柿川鮎子

編集/inox.

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