犬の健康と飼い主の健康は連動している?
飼い犬と一緒にトレーニングをすると、飼い主と犬がともに健康的になるとする研究結果が「PLOS ONE」に2022年8月24日掲載された。ゲルフ大学(カナダ)のSydney Banton氏らの研究によるもの。
肥満者の増加がしばしば世界的な問題として指摘されるが、そのような傾向は人ばかりでなく、犬の肥満も増加している。
犬の肥満も人と同じように、糖尿病や心臓病などの多くの健康問題につながる。人間の肥満の改善には運動が良い手段となるが、Banton氏によると両者の運動習慣は連動していて、「飼い主の運動次第で飼い犬の運動負荷も変わってくる。高強度運動をしている人の飼い犬は、やはり高強度運動の量が多い」という。
同氏らは、フランス、ドイツ、英国、カナダ、米国の約3,300人の犬の飼い主を対象として、飼い主本人と飼い犬の運動習慣および体重を調査した。
その分析の結果は、より多くの時間を運動に充てている人ほど、その飼い犬もより多くの運動をしていて、かつ、そのような飼い主は自分の犬が理想的な体重であると認識している割合が高いというものだった。
この研究では、犬の運動のうち、ランニングやスイミング、ボール遊びなどを高強度運動と定義し、散歩やドッグパークへ行くことなどは中強度の運動と定義。
飼い主自身が高強度運動を毎週15分以上していない場合、自分の飼い犬が高強度運動をしていると回答した割合が低いことが示された。
また、中強度運動を週に5日以上行っている飼い主は、犬を1日に60~90分以上運動させている割合が高いという関連も見つかった。
Banton氏は、「犬を飼っている人の多くは、犬の体重コントロールのために餌の量を減らすことはあるが、運動をさせようとはあまりしない。飼い犬が太りすぎていると思うのなら、近所の散歩などの強度の低い運動から始めて、徐々に運動強度を強めていくと良い」と話している。
また、この研究報告に関連して、米サンディエゴ人道協会の獣医であるDanielle Clem氏は、「ペットと一緒に運動することは、飼い主の運動継続のモチベーションになると考えられる。運動は人の心臓血管の健康に良いだけでなく、ペットのメンタルヘルスにも良い」とコメントしている。
太りすぎの犬の体重管理には、獣医師の助言の下で、食事と運動を中心とする包括的なアプローチが必要とされる。
「体重増加の根底にある原因を取り除くとともに、体重の変動をモニタリングしてほしい。また、獣医とともに適切な栄養計画を立て、犬の運動能力に適した運動メニューを習慣的に行うことが大切だ」とClem氏は語っている。
米国運動評議会のスポークスパーソンであるChris Gagliardi氏は、パーソナルトレーナーとしても活動し、かつ、ゴールデンレトリバーとミニチュアシュナウザーを飼い、日々トレーニングをさせている。
同氏は、「犬をトレーニングさせる際には、器具にも配慮してほしい。例えば、犬と一緒に走る場合、首輪に付けるリードよりも、装着範囲が広いハーネスを利用した方が良い。また、ランニングの前には犬にもウォーミングアップが必要だ」とアドバイス。
加えて、「自分自身と飼い犬の身体活動量があまり多くないのなら、無理せずに、ゆっくりと犬とともに歩くと良い」と解説する。
Gagliardi氏によると、全てのペットが高強度運動を好むわけではなく、例えば同氏のゴールデンレトリバーはランニングが大好きだが、ミニチュアシュナウザーはそうではないという。
また同氏は、「飼い犬が他の犬や人に出会った時に、どのように反応する傾向があるかを理解しておく必要がある。その反応次第では、公共スペースで運動をさせない方が良いケースもある」とも付け加えている。(HealthDay News 2022年8月25日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0272299
構成/DIME編集部